クラリネット記事 SILVERSTEIN WORKS 次世代への取り組み
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The clarinet vol.70

SILVERSTEIN WORKS 次世代への取り組み

ザビーネ・マイヤー、エディ・ダニエルズ、ヴェンツェル・フックス、コラド・ジェフレディといった世界的に有名なクラリネット奏者が愛用しているシルバースタイン・リガチャー。日本でも東京都交響楽団首席奏者の三界秀実氏、桐朋学園大学准教授の亀井良信氏、クラリネット奏者・指揮者の三浦幸二氏をはじめ、多くの愛用者がいる。この斬新なリガチャーをはじめとする管楽器アクセサリーの開発・製造を行なうSilverstein社CEOのB.K. Son氏が6月に来日、突撃取材を敢行した。
取材協力:ナイス・インターナショナル(www.nice-international.jp

 

リード側のストレスを緩和させる

手前の3個がAフレーム、奥の2個がTフレーム
手前の3個がAフレーム、奥の2個がTフレーム
 
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Sonさんの音楽との出会いは?
B.K. Son
(以下S)
私は幼いころから音楽が好きで、ゆくゆくはその道に進みたかったのですが、家庭の事情などもあり断念しました。
でも、ずっと音楽の世界には注目していて、最近思うことは以前のようにCDが売れなくなり、今ではスポティファイなどのストリーミングによる音楽配信サービスが主流になり、業界が変化していることです。私の友人であるデイヴ・リーブマン(Sax)からもスポティファイの音楽配信サービスによる収入が4か月に数ドルという話を聞き、音楽家が収入を得るのが難しい世の中になってきたと感じています。
 
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あの斬新なリガチャーの開発にいたった経緯は?
S
アメリカの企業で社長をやっていた6年半くらい前に、息子が習っていたクラリネットの楽器を見て自分も習いたいと思ったのです。先生はスティーブ・シルバースタインで、週に3回くらいレッスンを受けていました。彼は自作のヒモのリガチャーを使っていたのですが、そのリガチャーに興味を持ち、自分も同じように作れるのではないかと考えたのが最初です。私にはビジネスのノウハウがありますし、たくさんの工場を知っているので、これまでの経験や人脈を生かして、オリジナルのリガチャー作りができるのではないかと思い、事業を始めました。
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シルバースタイン・リガチャーの発想は?
S
マウスピースのテーブル部分にリードを接地させるとき、必ずすき間ができてしまい、そこから息がもれてしまいます。そのためにリガチャーがありますが、ヒモタイプ以外のリガチャーは部分的にリードを押さえているので、その部分の息漏れはないのですが止めていない部分から漏れる可能性もあります。また、マウスピースのテーブルやリードの面が平らに見えても、そこには細かな溝が入っています。マウスピースとリードをリガチャーで締めて固定しても、この溝があるためにすき間ができてしまいます。すき間を埋めるためにさらに締めていくとリード側にストレスがかかります。それによってリード自体に影響があったり、音色にも影響を与え、響きも抑えられてしまいます。しかし、ヒモだとリードへのストレスが分散されるのです。
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そのヒモがコードに変わったわけですね。
S
シルバースタインのリガチャーはヒモと同じ発想のコードを使っています。このコードをリガチャーとして使う場合、柔らかいと機能しません。コードは硬く柔軟性がないといけないのです。どんな素材にしようかといろいろ考えていたある日、たまたまテレビをつけたらNASAが火星にディスカバリーという探査機を下ろすという内容の番組をやっていて、そのときコードを使って下ろしていました。このコードだったらNASAが使っているから相当丈夫に作っているだろうと考え、NASAにいる友人にどういう素材なのか問い合わせてみたら「NASAで開発したもので、どんな状況でも耐えられるくらい丈夫な素材だ」と。「これだ!」と思いました。
これでヒモは解決したけれど、次に金属の部分をどうするかという問題がありました。音量などに影響が出る部分で、硬いと音がシャープになる傾向で、柔らかいとソフトになります。そのバランスが重要で、コンパウンドの配合などに長い時間をかけました。そして最適なものが完成しました。
シルバースタイン・リガチャーはネジを回していくと、コードが不均一に締まっていきます。それぞれのコードは締まる圧力が違うのでストレスを分散することができ、リードをより振動させることができます。現在、AフレームとTフレームという2種類のモデルを展開しています。
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NASAが開発したものは一般に流通しているのですか?
S
NASAが製造を依頼した軍事工場があり、そこから入手することができます。もちろんNASAから許可をもらっています。
奥様と
B.K. Son氏と奥様


>>次のページに続く

・交換可能なALTAリード
「リガチャー開発当時、古いものを使うのが当たり前な状況に驚いた」

・医療用素材を使った商品
「医療系の企業のCEOをしていたからこそ、人体に影響のあるものが気になる」
「次世代のベートーヴェンが生まれない時代を変えたい」

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