第2回 | 大公開! 10枚全部使えるようにする方法!!
【まずは下管の音から始めます(第1工程)】
※この工程はすべてフィニッシングペーパーの80番を使用します。
リード全体の鳴りを左右し、全体的なリードの吹奏感を決定する重要なポイントを削る説明をします。今回調整する箇所は、レジスターキィを押さない下管の音を適度な抵抗感は残し、ストレスなく鳴るようにするための削る部分です。まずはここのバランスを整えるとダメリードが使えるようになりますよ。
■リードの削り方
リードを削るときは写真のようにリードを持って、フィニッシングペーパーは人差し指を中心に中指と親指で挟み込むように持ちます。矢印の向きに沿って、まずは根元を調整し、次に先端部分を調整します。
左図の縦線を80番で、粉の量を確認しながら大胆に、結構力を入れて(10〜40回、↓方向に)しっかりと削ります。下図のようにならないように(×印)、あくまで下図の形を保つ範囲で(吹いて確認)。80番のフィニッシングペーパーは削りやすいので、気をつけないと、すぐに×印の形になってしまいます。横から見てよく確認してください。
このときには、リードの削り粉がかなりでます(上の写真)。このときは少しくらい皮を削ってもかまいません。削り終わったら下管の音の抵抗感がどう変わったかを吹いて確認しましょう。
Aの部分を削って、まだ多少硬く感じたり、ストレスが残るなら縦線部分を山の尾根の形を崩さないように気をつけて、↓方向に1〜2回削ります。また上管の音は鳴らないし、タンギングもしづらいと思います。
ここでの注意事項は、“ちょっと硬いけれど、とりあえず使えるところ”で止めておくのが肝心です。吹きやすくすることは簡単ですが、音色をこわしてしまっては何もなりません。微調整は次の工程でやりますので、ここではあと少しのところで止めておきます。
※基本的にはBの作業で調整が済むはずです。どうしてもダメな場合はCに進んでください。
縦線部分つまり皮の部分を、左図のようになるまで10〜20回、Aと同じくらいの力で、削ってみましょう。それでもダメなリードはなかなか調整することが難しいのが実状です。
削り方まとめ
これで、基本的な厚さの調整は終わりです。また、この場所はリード全体の抵抗感を左右する重要な部分でもあるのです。この工程では、フィニッシングペーパーの80番を使うので、表面がザラザラになります。そのままでもかまいませんが、音にまとまりがないことが気になるなら、耐水ペーパーの320番を軽くかけて、表面をなめらかにしてください。
● 今回のまとめ
今回で2度目となる“1箱10枚を全部使えるようにするプロジェクト”、いかがでしたか? 今回は基本となる抵抗感の調整のみに着目して削ってみました。次回はこの状態のリードを音質を整え、さらに本番で使用できるリードにする調整法をお教えします。
ここで、力加減や削り取る粉の量を正確に伝えるのは限界があるので、どこをどれくらい削るとどうなる……という体験を積んでください。適正な厚さというのは、噛む圧力、上下の歯の位置、タンギングの方法(リードのどの部分に舌のどこで突くか?)、音色の好み等で個人差があります。削ってみて前より良くなったか悪くなったかの感覚は他人には分からない微々たる差なので、自分で実感して見つけていくしかありません。その変化に気付くことがあなたにとって大発見の財産になるはずです。失敗を何度も経験しない限り上手く作れるようにはなれません。また、ハートの部分に手を加えるのはなかなか勇気がいるかもしれませんが、ぜひお試しください。次回は、チューニングのオクターブ下のドからファ、つまり上管の音、スロートのソ・ラ・シbと高音域の音をリードを調整します。リード削りの極意は「寸止め!!」です。それでは。
取材協力:ドルチェ楽器 管楽器アヴェニュー東京
次回更新もお楽しみに!
木村健雄さん
東京都出身。東京藝術大学、フランス国立ルエイユ・マルメゾン音楽院卒業。帰国後、ソリスト、フリーのオーケストラ、室内楽奏者として活動。とりわけE♭クラリネットからコントラバスクラリネットまでこなすスペシャリストとして国内外のオーケストラ、吹奏楽団の数多くの演奏会、CD録音、DVD録画に参加。また海外からの現代音楽祭出演招待も多く、2005年に韓国大邸国際現代音楽祭、2006年にポーランド・ワルシャワ・ラボラトリウム現代音楽祭、2007年、2008年、2014年にソウル市ディメンション国際現代音楽祭などにメインゲストとして出演。現在、アンサンブル・インタラクティブ・トキオ、東京クラリネットアンサンブル、アマデウスクインテットのメンバーとしても活躍。尚美学園大学、聖徳大学の各講師。