クラリネット記事 知っているようで意外と知らない ベルの基礎知識
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知っているようで意外と知らない ベルの基礎知識

ベルの役割 −吹奏感が変わる−

クラリネット,ベル
純正以外のベルに替えると吹奏感が変わる

純正のベルは、下管とのマッチングや吹奏感など総合的に一番合っているということで選ばれていますが、各メーカーではオプションで様々なタイプのベルを設定しています。クラリネットの場合、音色や吹奏感に変化を求めたいとき、何かを替えたいと思うとマウスピース以外にもベルやバレルを替えることができます。他の管楽器と比べるといろいろな選択肢があり、奏者の好みによって選べるのはうれしいことですね。

では、ベルを替えることで何が変わるのか……。ズバリ“吹奏感”に大きく影響します。ベルを純正以外のものに変えることで音に大きく影響します。金管楽器の音はすべてベルから出ていますが、木管楽器の場合はベルのほかにトーンホールからも音が出ていますので、金管楽器のように音そのものを大きくする役割はベルにありません。クラリネットにおいてはベルの重量によって楽器のキャパシティが変わります。持ったときのバランスなども大切ですね。純正のベルはその点でも最適なものが選ばれていると思います。上側が重いと持ちにくいですしね。

また、ベルが長くなることによって「音程に影響があるのでは?」と思うかもしれませんが、実際はベルの上部の数センチのみが音程に影響を与えているので、あまり気にしなくても良いと思います。むしろ、長さの影響は響きにあると思います。

 

ベルを替えたら何が変わる?

まず、全体の吹き心地が変わります。軽いものに替えるとラクに吹けますし、逆に重いものにすると吹き込めることが、おおまかな傾向になります。また、材質によっても吹き心地が変わりますが、同じグラナディラ材で同じ機種のベルに替えても1本1本吹き心地は違います。楽器が古くなり吹奏感が変化したら、ベルを新しいものに替えることも一つの方法です。

音色も変わりますが、マウスピースを替えるほどの変化は期待できません。音色の変化を得るというのは難しいことで、マウスピースを替えれば一時的には変化しますが、最終的にはその人の求めている音色になります。だから、楽器の一部分だけを替えて音色が変わるかというと、そうではないように思うのです。音色が変わってしまったら、その人の音ではなくなってしまうので、変わるか、変わらないかを判断するのは難しいですね。 しかし、ベルを替えるとトーンホールをすべて押さえる低音部はもちろん、高音域の鳴り方も変わってきます。

下管とベルの接合部を抜いても、トーンホールをすべて押さえたときのミと、その上のシにしか影響が出ません。ただ、ミやシが高くなる楽器はほとんどないので、基本的には抜く必要はないと思います。

ベル
ベルはマウスピースを替えるほどの変化はない

 

材質によって吹奏感は変わるの?

素材によって吹奏感に変化はあります。一概には言えませんが、吹奏感については材質だけでなく比重の違いも大きいと思います。例えば、プラスチック製など軽い素材ですと、吹き心地はラクになりますが、息をしっかり吹き込めないので、吹奏感も軽くなってしまいます。

クラリネット,ベル
同じ木でもグラナディラ製のほか、ココボロ製やローズウッド製のベルもある
クラリネット,ベル
軽量のプラスチック製
 

 

ベルはどう選べばいいの?

おおまかに傾向で言うと、ベルが重いと吹くときに息の圧力が必要になりますが、その代わりに吹き込んだらその分しっかりと応えてくれます。逆にベルが軽くなると、ラクに吹けてキレイな音が出せますが、吹き込んだときに限界があり、密度の濃い音色は出すのが難しくなります。ただ、オプション設定のベルは極端に重い、軽いというわけではないのであまり気にしなくても良いでしょう。最終的には、そのベルの吹き心地や重さのバランスなどが好きか、嫌いかのどちらかの好みで選べばいいと思います。

マウスピースを選ぶ時も同じですが、「軽く吹いても息がスムーズに入っていくからいい!」と思っても、しっかり吹き込んだときに鳴りにくいことも多々あります。ラクだからいいと一概には言えないところもあります。狭く小さな場所で吹くことが多いのか、大きなホールで吹くことが多いのか、などによっても選ぶベルは変わってきます。大きな場所で響くものを選ぶと、小さな場所ではキレイな音が響かなかったり、逆に軽く吹けるベルは大きなホールでは客席の隅々まで響く音を届けられない場合もあります。自分がどういう状況で演奏するのか、またどんな音色や吹奏感が好みなのか、総合的に考えて選ぶようにしましょう。

クラリネット,ベル
通常のベルよりも軽いビュッフェ・クランポン ICON。写真は旧モデル
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