クラリネット記事 モパネ リミテッドエディション2021
  クラリネット記事 モパネ リミテッドエディション2021
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BUFFET CRAMPON

モパネ リミテッドエディション2021

2021年夏、〈ビュッフェ・クランポン〉は、クラリネットの“ディヴィンヌ”、“レジェンド”、“トスカ”、“R13”の4機種をもとに、世界で85本限定の特別な「モパネ」製クラリネットを販売しました。限定85本のうち日本に入荷したのは4機種、合計17本で、この貴重な楽器を手に入れることができた日本人プロ奏者からも絶賛の声が寄せられています。
世界的なクラリネット奏者のミシェル・アリニョン氏、二コラ・バルディルー氏、ポール・メイエ氏、マルティン・フレスト氏の4名連名の選定書が付属された、このスペシャルな楽器「モパネ リミテッドエディション」を、新日本フィルハーモニー交響楽団副首席クラリネット奏者の中舘壮志氏が試奏。その感想を聞きました。

 

新たな選択肢になる「モパネ」

今回のセッティングを教えてください。
中舘壮志
(以下中舘)
B♭クラリネットは最近購入したビュッフェ・クランポンのレジェンド。マウスピースはリコスティーニのF5。リードはバンドーレンV21の3半。リガチャーがブルズアイのルージュEXで、ネジをガンメタリックにしています。この仕様は亀井良信さんと同じで、一度亀井さんの物を吹かせてもらったとき、すごく自然に吹けたんです。それで同じ仕様にしてもらいました。
これまでグレナディラ以外のクラリネットを吹いたことがありますか?
中舘
レジェンドのボックスウッド(柘植)を吹いたことがありますが、少ない息でキレイに鳴らせるという印象でした。ただ、他の楽器との相性によっては音色が混ざらない部分が出てくると感じました。今回吹いたモパネは、そのボックスウッドとグレナディラとの間に位置する楽器です。
モパネを吹いたときの第一印象は?
中舘
まず、ボックスウッドと比べても息がほぼほぼ同じように入るので、息の自由も効くし、 吹き込んだときに音が壊れることもなく、常に上品さを保ってくれます。音の輪郭がボケるわけではないけど丸みのある感じで、これはディヴィンヌ、レジェンド、トスカ、R13のモパネ全体を通して言えることです。
今回試奏した4機種の中ではディヴィンヌが一番いいと思いました。グレナディラのディヴィンヌは音の輪郭が少し丸いのが特徴的ですが、モパネに関しては、そのグレナディラの特徴に加え、一つひとつの音が並んでちゃんと飛んでくれているような印象でした。個体との相性もあるかもしれませんが、このままオーケストラでも使えますね。
レジェンドについては後述します。
トスカはグレナディラだとディヴィンヌやレジェンドに比べて吹き込んだときに音の雑味を感じますが、このモパネに関してはいい意味でその雑味が消え、全体的にバランスが取れています。
R13はモパネの中で一番入りやすい楽器です。フレンチらしさもありつつ柔らかさが増している感じで、みなさんが思っているビュッフェ・クランポンのイメージが一番表れています。
それぞれ特徴があってどの楽器も魅力的なんですけど、限定生産なのが残念ですね。今回の試奏のように吹いて選ぶことができるのなら買っていたかもしれません(笑)。でも、現在使用しているグレナディラのレジェンドと使い分けるようになるので、それはそれで大変なんでしょうけど、今後モパネが選択肢として出てくるようなら欲しいなと思っています。
普段お使いのレジェンドはどんな違いがありましたか?
中舘
モパネのレジェンドを吹いたときに感じたのは、材質が変わることによって音色も変化するということ。モパネのほうが全体的に音が柔らかくなりました。元々レジェンドは柔らかめの表情をつけるのに適した楽器ですが、モパネはそれがより洗練されていました。
モパネの吹奏感は?
中舘
モパネはキーポストにピンクゴールドめっきを採用しているため、吹き心地としてはグレナディラと比べると抵抗感が少し増しているけれど、程よい感じです。力強くがっつり鳴らしたいという人は好みが分かれるかもしれませんが、ピアニッシモでも詰まることなく、均等に楽器が振動してくれています。息を入れたぶんだけしっかりと鳴ってくれる楽器です。
息の自由度が高く鳴らせちゃう楽器だと音楽を壊してしまうこともあると思いますが、モパネは楽器側でしっかりとコントロールしてくれるので、正しい吹き方を楽器が教えてくれるのではないでしょうか。モパネの音を求めている指揮者はたくさんいると思います。
重量感、手ざわりなど他にグレナディラとモパネの違いはありますか?
中舘
重量感や手触りなどはグレナディラと変わりませんが、この4機種を見ると1本1本の色が違います。聴いている人はこのモパネを見て「何の楽器を吹いているんだろう」と気にしますから、インパクトはありますね。
このモパネはオーケストラやソロなど、どんなシーンでの演奏にオススメですか?
中舘
グレナディラと同じ感覚で使えると思います。ソロでもオーケストラでも作品によって使い分ける、それこそリードとかリガチャーを替える感覚で使えますね。
グレナディラで古典派の作品を吹いたとき、どうしてもロマン派っぽいアタックの仕方になってしまったりするんですけど、それがモパネだとイメージどおりに音が並んでくれて「あぁ、こういうふうに吹きたかったんだよね」と思わせてくれます。
また、ソロでは自分の好きなように吹けますが、オーケストラでは他の楽器と音が溶け合うことをプレイヤーは考えてリードを調整したり、いろんなことをしていると思うんですけど、モパネならそんなことは考えずに普段通り吹けるんじゃないかなと思います。それに、しっかりと息が入っていくので音が埋もれてしまう心配もないでしょう。モパネは、ジャンル、作曲家を問わずより広い範囲で対応できる楽器ですね。
ありがとうございました。
 
 

“ディヴィンヌ”

調子:B♭
管体:モパネ材使用/上管の一部のトーンホール接合部に“グリーンライン”を採用/接合部補強リング/カーボンファイバー製接合部リング/特殊合成コルク/バレル2本(65mm および 66mm)
キー:ベームシステム、19キー、6リング/“ディヴィンヌ”専用キーデザイン/“ディヴィンヌ”専用調整可能指かけ/LowFコレクションキー/洋銀製、冷間鍛造、手工仕上げ、銀めっきキー/キーポストはピンクゴールドめっき/金属ピトン/ 精密特殊加工スチール針ばねおよび板ばね
付属品:“モパネ リミテッドエディション 2021”専用ケース/“モパネ リミテッドエディション 2021”専用ケースカバー/スワブ/鉛筆/リガチャー/マウスピースキャップ/コルククリーム/ポーチ

 

“レジェンド”

調子:B♭
管体:モパネ材使用/上管の一部のトーンホール接合部に“グリーンライン”を採用/接合部補強リング/バレル2本(65mm および 66mm)
キー:ベームシステム、19キー、6リング/“レジェンド”専用キーデザイン/調整可能指かけ/Low
Fコレクションキー/洋銀製、冷間鍛造、手工仕上げ、銀めっきキー/キーポスト、接合部リングはピンクゴールドめっき/金属ピトン/精密特殊加工スチール針ばねおよび板ばね
付属品:“モパネ リミテッドエディション 2021”専用ケース/“モパネ リミテッドエディション 2021”専用ケースカバー/スワブ/鉛筆/リガチャー/マウスピースキャップ/コルクグリス/ポーチ

 

“トスカ”

調子:B♭
管体:モパネ材使用/接合部補強リング/バレル2本(65mmおよび 66mm)
キー:ベームシステム、19キー、6リング/“トスカ”専用キーデザイン/調整可能指かけ/LowFコレクションキー/洋銀製、冷間鍛造、手工仕上げ、銀めっきキー/キーポスト、接合部リングはピンクゴールドめっき/精密特殊加工スチール針ばねおよび板ばね
付属品:“モパネ リミテッドエディション 2021”専用ケース/“モパネ リミテッドエディション 2021”専用ケースカバー/スワブ/クリーニングクロス/鉛筆/リガチャー/マウスピースキャップ/コルクグリス

 

“R13”

調子:Bb
管体:モパネ材使用
キー:ベームシステム、17キー、6リング/調整可能指かけ/洋銀製、冷間鍛造、手工仕上げ、銀めっきキー/キーポスト、接合部リングはピンクゴールドめっき/精密特殊加工スチール針ばねおよび板ばね
付属品:“モパネ リミテッドエディション 2021”専用ケース/“モパネ リミテッドエディション 2021”専用ケースカバー/スワブ/鉛筆/リガチャー/マウスピースキャップ/コルクグリス

 

“モパネ リミテッドエディション 2021” 専用ケース

 
ビュッフェ・クランポン・ジャパンのWebサイトにて、「モパネ リミテッドエディション2021」によるポール・メイエ氏、ニコラ・バルディルー氏の演奏が聴けます。
要チェック! https://www.buffet-crampon.com/ja/mopane-clarinets/

中舘壮志 Soushi Nakadate
東京藝術大学音楽学部卒業。第87回日本音楽コンクール第1位、岩谷賞(聴衆賞)、瀬木賞、E.ナカミチ賞受賞。第33回日本管打楽器コンクール第1位、並びに文部科学大臣賞、東京都知事賞、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団特別賞受賞。第22回日本木管コンクール第2位。第26回宝塚ベガ音楽コンクール第2位。東京藝術大学在学中に「安宅賞」受賞。これまでに広上淳一、高関健、渡邊一正、円光寺雅彦各氏の指揮のもと、藝大フィルハーモニア、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、セントラル愛知交響楽団と共演。公益財団法人青山財団2013年度奨学生。NHK FM「リサイタル・ノヴァ」に出演。これまでにクラリネットを有馬理絵、月村淳、栄村香、山本正治、伊藤圭の各氏に師事。ビュッフェ・クランポン契約講師。元新日本フィルハーモニー交響楽団副首席クラリネット奏者。


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