クラリネット記事 SELMER Paris社よりクラリネット“Muse”新生
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サトーミチヨさん、有馬理絵さんがレコメンド【動画あり】

SELMER Paris社よりクラリネット“Muse”新生

クラリネットの鬼門を克服

Muse A管の特徴を教えていただけますか?
サトー
クラリネット奏者にとってA管はどうしても苦手意識があると思います。ほとんどの奏者はB♭管から練習を始めますし、音大生であっても1年生で持っている学生は少ないのが現状です。上級生でやっと「A管1年生」となるわけです。一般の方も同じく、早くからA管を吹き始めるということは稀だと思います。そのように吹き始める時期が遅いということ。そしてB♭とAという半音の調性の違いがストレスにつながり、苦手意識となっていきます。そして追い討ちをかけるのが、一般的な楽器はB♭管とあまりにも吹奏感が違うこと。これが苦手意識をより強く感じてしまう大きな原因となります。しかしセルマーのA管は、このMuseを始めどの機種もB♭管との吹奏感の違いが本当に少ないです。「B♭管ではできるけれど、A管ではできない」ということがないといっても過言ではありません。もちろんA管特有の音の深さというのは保っています。A管のMuseは特におすすめだと思いますよ。
有馬
そうですね、MuseらしさはA管のほうがより感じやすいかもしれませんね。
サトー
オーケストラプレイヤーはA管の使用率がどうしても高くなりますから、A管を制するためにぜひMuseを試してほしいです。オーケストラのプロはこれで生計を立てているので、大袈裟な言い方をすればA管には命がかかっているわけですが、実はここだけの話、B♭管は別のメーカーを使用しているプレイヤーも、「A管はセルマー」という方が私の周りには結構いらっしゃいますよ。
有馬
そうですね。この話はあまり知られていないかもしれません。
そしてB♭管には通常の18キィの楽器に加えて、この度19キィの楽器もニューラインナップされました。
有馬
そうですね。やはりこの「19番目のキィ」があることによって、クラリネット奏者たちの永遠の悩みともいえる低音のファやミの音程が改善されます。私は既にそのような現場からは久しく離れていますが、コンクールに出場する際に、例えばウェーバーのコンチェルト第2番などを演奏する際に、冒頭のファのオクターブ跳躍がありますが、下のファをフォルテシモで吹き込むと、音程がどの奏者もどうしても下がってしまいます。普段の演奏会ならあまり問題にならないとしても、コンクールだとそのあたりはどうしてもシビアになってきます。そのような課題をどのようにこなすかと考えた時に、コンクールに出ていた当時の私は音量を捨てて音程を取りに行ったのですが、このキィがあれば、下のファをフォルテシモでぶら下がらずに正確なピッチで出すことができますね。
 

ユニバーサルデザインのクラリネット

最後に、Museの操作性について教えてください。今までのクラリネットと比べて、演奏しやすい部分はどのあたりでしょうか。
有馬
私は先ほどお話しした通り、これまで違うメーカーの楽器を使用してきましたが、そこからまるで違和感なく移行しつつあります。特に運指の感覚はまったく違和感がありません。それは、誰もが操作しやすいトーンホールのレイアウトやフィンガリングポジションに依るものでしょう。そのおかげもあると思いますが、スラーが本当にかけやすいです。先ほどお話しした発音の部分と合わせて、とても印象的な部分です。
サトー
以前のセルマーの楽器は、もちろん慣れという点も大きいと思いますが、ある程度それぞれの操作を意識しないといけない特徴を持っている楽器でした。それがシグネチャー、プリヴィレッジと世代を重ねるごとにそのような特徴が取れてきて、どのような奏者でもいい意味で使いやすい高い操作性を持つ楽器に成長していると感じます。みんなが使用可能なお手洗いや、どのような障がいがあっても歩きやすい道のように、できるだけ多くの人が使用できるように目指したデザインを「ユニバーサルデザイン」と呼びますが、このMuseはまさにクラリネットの「ユニバーサルデザイン」を実現した楽器と言えるのではないでしょうか。どのような奏者にも吹きやすく、もちろん音色や吹奏感も素晴らしい楽器に仕上がっているのではないかと思います。
有馬
まさにそうですね。
サトー
楽器にストレスがないことで、何か問題が生じたときに、マウスピースやリード、リガチャーのセッティングのどこに問題があるのか整理されていき、とても楽になる感覚があります。もちろん結論として自分が練習しなければということになることもよくありますが(笑)。でも、これだけストレスがない楽器を使えば、音楽により集中することができるようになると思いますよ。
ありがとうございました。
 

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