第4回 ロングトーンはなんのため?
基礎練習の連載と言いつつ、チェックだけで第3回まで終わってしまいました(笑)
皆さん楽器の調子はいかがですか? 今回はいよいよ実際の練習にうつりましょう!
嗚呼、はてしなきロングトーン
調子のバロメーター、ロングトーン
基礎練習において、まず一番大事なのはロングトーンです。熟練のプロ奏者であっても、毎日ロングトーンが欠かしません。それはなぜかと言うと、ロングトーンは自分の調子が一番ハッキリわかるバロメーターだからです。
よくロングトーンは息を吹き込むための練習と思われがちですが、それは違います。一番大事なのは自分の音をよく聴くことです。だからなるべく静かな環境で臨むべし、なのです。
とは言え、初心者にとっては楽器に慣れる、というのも大きな目的となりますので、まずはそのあたりからいってみましょう!
息をまっすぐに保つ練習
ご存じの通り、クラリネットは息でリードを振動させることによって音が出ます。最終的には息を自在にコントロールすることによって、音量、音程、音色など様々な変化を音に与えることができるようになりますが、まずは音をまっすぐ伸ばしてみましょう(譜例①)。音は安定しやすい実音B♭です。
4秒間伸ばすことになりますが、その間に音が揺れていないかよく自分の音を聴いてみましょう。
どうでしょう。安定した音は出せていますか? 実生活において、呼吸は常に加速と減速を伴って行なわれていますので、ずっと同じだけ息を吐き続けるということには、案外慣れが必要です。
初心者の皆さんは安定した息が吐けるようになるまで根気よく練習を続けましょう。スポーツにおける初心者に基礎体力が必要な原理と同じです。どれだけセンスがあっても音(=スタミナ)がすぐに途切れてしまうようでは、良い演奏はできません。
慣れてきたら、4拍→8拍→12拍→16拍と吹く時間を伸ばしていきましょう。まだまだ体の小さい中学生でも、息さえうまくコントロールできれば20秒は吹けます。中学生当時の渡邊少年は負けず嫌いだったので30秒吹けるようになりました(笑)。ただし、酸欠にならないように注意!
いろんな音量で吹く練習
とは言っても、同じ音ばかり吹いていては楽しくありませんね。違う音でも吹いてみましょう。今度は開放の実音Fです。
この音は見ての通り、楽器のほとんどの穴が開いたまま吹くことになるので、息の変化がダイレクトに音に出ます。なので、前述のB♭を吹いているときよりも音が揺れやすくなりますから、これまた注意深く自分の音を聴いてみましょう。この時、何も押さえていないと左手がどっかにいってしまうので、左手薬指だけ押さえるクセをつけましょう(左図)。
これはソ→シ♭まで同様にします。音程や音色の関係で、右手も押さえてしまうこともよくあります。
そして、今回の課題は「様々な音量で吹く」です。譜例②のように、4拍間いろんなダイナミクスで吹いてみてください。
ただし最初から最後まで一定の音量になるように。このとき、チューナーを併用して、音量によってどれくらい音程が変わってしまうのか把握しておきましょう。基本的にクラリネットは弱奏時に音程が上がりやすく、強奏時に下がりやすくなってしまいます。
詳しくは今後お話しますが、弱奏時に音程が上がるのは息の入り方が浅くなってしまうため、強奏時に下がってしまうのは息をたくさん入れようとしすぎてアンブシュアがゆるんでしまうためという要因がありますので、そのあたりを頭に入れながら一定の音程で吹くということを目標にやってみましょう。
渡邊一毅
Kazuki Watanabe
兵庫県立神戸高等学校を経て東京藝術大学音楽学部器楽科卒業。
室内楽、吹奏楽、オーケストラ、ミュージカルなど多岐に渡り活動する一方で、指揮活動も含め後進への指導にも積極的に取り組み、指導した団体は吹奏楽コンクール、アンサンブルコンテストなどで全国大会出場多数。また各地にて各コンクール審査員も務める。
スタジオワークも多く、アニメ、ゲーム、映画、TVドラマ、CM等録音多数。
また、下記団体において数多くの編曲を手がけ、楽譜が出版されている。
オブロークラリネットアンサンブルE♭クラリネット奏者。ブリッツ・フィルハーモニックウインズ コンサートマスター。
クラリネット五重奏団Penta-CLam、東京セレーノバスクラリネットアンサンブル【木炭】、山本拓夫木管6重奏Halocline各メンバー。
2018年1stアルバム「Triptyque」発売。
現在、洗足学園音楽大学、相愛大学講師。音楽教室「黒笛音楽塾。」主宰。
公式サイト「黒笛危機一髪。」