第12回 タンギングマスターを目指せ!
ロングトーン、スケールは毎日やっていますか? 楽器の上達は一歩一歩前進あるのみです。日々の積み重ねが何よりの経験値となりますので、地道にやっていきましょう。
今回から終盤戦となります。いよいよ最大の難関にして謎の多い「タンギング」について切り込んでいきたいと思います。じっくり練習してみましょう!
タンギングマスターへの道
タンギングを取り巻く状況
クラリネットは発音の際に必ずタンギングが必要となります。ケースバイケースでタンギングしないで発音する場合もありますが、基本的にクリアな音を出すためにはタンギングが必要不可欠です。
ただこれは口の中で行なわれている行為なので、自分の舌がどうなっているのか分かりづらいですし、先生や先輩の舌がどうなっているかもよく分からないため、教えることを放棄する人がとても多いのが現実です。
今回はそのあたりのことを解りやすくお伝えできればいいなと思います。
タンギングの仕組み
まず大前提として、タンギングの仕組みについて説明します。ものすごく大事なので覚えておいてください。それは「音は舌がリードについた瞬間に出るのではなく、舌が離れた瞬間に出る」ということです。
タンギングのことを「舌つき」と表現する場合もあり、なんとなく舌がついた瞬間に音が出ていそうな気になりますが、クラリネットは息を通すことによりリードが振動して音が出るわけですから、舌をついている状態の時に音が出るわけがありませんね。ということで、意識としては「舌をつく」というよりは「舌を離す」ということがタンギングの真髄となります。
発音してみよう
では、実際に音を出してみましょう。真ん中のソの音を4分音符でタンギングしてみます(譜例)。8拍間のロングトーンのつもりで、一定の息を出し続けてください。もちろん、息が揺れてしまわないように、吐くイメージを大切にしてくださいね。
譜例
この時の注意点は以下の点です。
①音と音の間に隙間ができていないか
②タンギングの瞬間に雑音が混じっていないか(ツァとかジュとかいいやすいです)
③音が後ふくらみになっていないか
④タンギングした時に下あごが動いていないか
出てくる音のイメージとしては帯グラフのようにタンギングの瞬間だけ区切りが入っているような感じです(上記図参照)。舌はリードの先端だけを一瞬触れるだけで、つくよりも離すイメージを大事にしてください。ボクシングのジャブと一緒ですね(笑)。
どうでしたか?
①で引っかかった人は、舌がリードについている時間が長いです。熱いかもしれないものを触って確かめる時のように、一瞬だけ触ってください。
②で引っかかった人は、舌がリードについている面積が広いです。リードの先端だけを触るようにして、発音のイメージを大事にしてください。発音のイメージについては次回お話しします。
③で引っかかった人は、タンギングすることで息の流れが変わってしまっています。口の中で舌が大きく動かないよう、これも発音のイメージを試行錯誤する必要があります。
④で引っかかった人は、口の中で舌が大きく動きすぎています。動きを最小限にするためにも、発音のイメージをしっかり持ちましょう。
全部クリアできている人はいい感じにタンギングができているようですが、発音のイメージについては一度考えてみるといいと思います。
渡邊一毅
Kazuki Watanabe
兵庫県立神戸高等学校を経て東京藝術大学音楽学部器楽科卒業。
室内楽、吹奏楽、オーケストラ、ミュージカルなど多岐に渡り活動する一方で、指揮活動も含め後進への指導にも積極的に取り組み、指導した団体は吹奏楽コンクール、アンサンブルコンテストなどで全国大会出場多数。また各地にて各コンクール審査員も務める。
スタジオワークも多く、アニメ、ゲーム、映画、TVドラマ、CM等録音多数。
また、下記団体において数多くの編曲を手がけ、楽譜が出版されている。
オブロークラリネットアンサンブルE♭クラリネット奏者。ブリッツ・フィルハーモニックウインズ コンサートマスター。
クラリネット五重奏団Penta-CLam、東京セレーノバスクラリネットアンサンブル【木炭】、山本拓夫木管6重奏Halocline各メンバー。
2018年1stアルバム「Triptyque」発売。
現在、洗足学園音楽大学、相愛大学講師。音楽教室「黒笛音楽塾。」主宰。
公式サイト「黒笛危機一髪。」