vol.15「気分が音楽に出ちゃいます」
気分が音楽に出ちゃいます
結構活発な吹奏楽部でクラリネットを吹いている高校2年生です。友だちとケンカしたりすると、楽しい曲でも楽しく吹けなかったり、逆に楽しいことがあると、悲しい場面の曲でも楽しく吹いてしまいます。先日もちょっと嬉しいことがあって、楽しく合奏をしていたら先生に「そこは悲しい場面なのに、なんで楽しく吹いているんだ」と怒られてしまいました。クラッツの皆さんも気持ちに引っ張られることはありますか?
(東京都・みっきーさん)
近藤ですっヽ(^^)
みっきーさん、わかります、ありますよ!
とはいえプロですから甘くはありません……。仲間と共に全身で音楽に取り組んで、コンサートを聴きに来てくださるお客様には純粋に音楽を楽しんでほしいと思っています。
気持ちが出ちゃうのは、みっきーさんの感情が豊かだからですよね。私なんて、気分が華やかでも沈んでいてもドキドキしていても、ステージではいつも冷静なヒトに映っているらしく……、みっきーさんの素直な表現は羨ましいです。ほんの少し、感情のコントロールができると良いですね。
私は「ステージでは女優!」と思っています(……図々しいっ!)。
本物の女優さんのようにいろんな役になりきるというのは少し違いますが、演奏するときには演奏モードスイッチが入りますし、それが本番だったりするとさらに本番モードスイッチも入ります。
演奏中は自分の感情はひとまず置いて、楽譜に書かれた音や表情記号を、正確に表現するように気をつけています。
楽譜は作曲家からの手紙ですから、個人の都合で書かれている内容を変えてはいけませんよね。
みっきーさん、楽器ケースを開けるときに「女優の仮面」をつけてみては? つい気分が音楽に出ちゃうくらい素直な心の持ち主なら、暗示にもかかりやすいと思いますよ。
もちろんプロだってコンサート中にいろんな思いから涙が出てしまうことはあります。こらえても溢れる涙……人間だもの。そういう涙はコンピューターではない、生きている人間が作り上げる音楽の素晴らしいところではないかしら?
音楽にマイナスになる感情があるときは、こう考えてみましょう。演奏を通して、その作品に込められた作曲家の思いを世の中に伝えることができたら、それはすごいこと!って。そして、音楽は自分だけのものではなくて、一つの音楽を作り上げている仲間と共有しているのだということ、またその音楽を聴いてくれるたくさんの人がいるんだってことを思い出してくださいね。
〜「シエナ20周年記念コンサート」サントリーホール舞台裏にてシエナクラッツとエキストラの方たち〜