vol.21「速いタンギング」「いい姿勢とは?」
タンギングが速くできません
私が悩んでいるのは「タンギング」です。舌を速く動かすことができずに、タンギングの多い曲では苦労しています。メトロノームに合わせて16分音符で刻む練習をしていますが、テンポ100ぐらいの速さになると、ギクシャクしてしまいます。どんな練習をすればタンギングが速くできるようになりますか?
(石川県・まりもさん)
飯島泉です。
まりもさん、こんにちは。
タンギングは、クラリネットを演奏する上でとても重要な奏法です。まりもさんだけではなく、きっと読者の皆さんの多くも悩んでいらっしゃることでしょう。
まず「タンギング=舌を動かす」ではなく、「発音」という解釈に変えてしまいましょう。皆さん「タチツテト」と発音できますよね?
実はこの時点ですでにタンギングはできているのです! その時に、舌が口の中でどのように動いているのか、舌のどの部分がどこに触れているのか、リアルに感じてみてください。どこにも舌が触れずに「タチツテト」と発音できないはずです。
では、マウスピースを口に入れて同じように「タチツテト」を言ってみましょう。ほら、舌がリードに触れているでしょ?
では息を吹き込みながら、ゆっくり「ターチーツーテートー」と言ってみましょう。
いいですよ、これがタンギングです!
では次に、母音のことを考えてみましょう。[ta ti tu te to] ……母音の[a i u e o]のときに息を入れます。[t]でタンギングし、[a]で息を入れるとリードが振動するのです。
音域にもよりますが、[ta]はハッキリした音がほしい時、[ti]は細かな発音がほしい時、[tu]はソフトなアタックがほしい時、[te]はさらにソフトなアタックがほしい時、[to]は特に低音時のアタックに、などと発音を使い分けています。
さらに、[ka ki ku ko ko]とリードに触れずに、舌の奥で発音する奏法を組み合わせ、[takata][tiketike][tukutuku][tokotoko]なども使用しますが、これは上級編。
4分音符で[tatatatata tatatata]と言うより、[tatitati tatitati]のほうが速くタンギングができますし、3連符で[tatata tatata tatata]と言うより、[tatito tatito tatito]のほうが速くタンギングできますよ。
このように発音を組み合わせて使うことで、より速く柔軟にタンギングができるはずです。普段からマウスピースを持たずに、[tatitati]など言葉だけで練習するのも効果ありです。
また母音の時には、同じ息圧で同じ方向に安定した息を入れることと、アンブシュアは決して動かさないように気をつけてくださいね!
タンギングはお話ができる人なら、ある程度の速度までは絶対できますよ。まりもさん、頑張ってくださいね!
どんな姿勢がいいの?
高校で吹奏楽の顧問をしている音楽の教師です。ステージに上がったときの生徒たちの姿勢の悪さが気になります。クラリネットパートは客席に対して横を向いて座っている(指揮者に向かっている)ので、特に気になって仕方ありません。猫背だったり、背筋を伸ばしすぎたり……。
私は管楽器を専攻していないので、クラリネットの正しい姿勢を教えていただけると嬉しいです。
(新潟県・M.U.さん)
M.U.さん、こんにちは、山手寿子です。
様々なスポーツでも、そのフォームが整っていると、身体に余計な力が入らずに最良の状態でプレイできると思います。「物事は何事もまず形から……」というように、楽器を吹く姿勢は見た目の問題だけでなく、良い音を作る第一歩でもありますので、とても大切です。
前のめりや前かがみ、背筋の伸びすぎといった姿勢では、息のコントロールが難しく、正しい息の流れを保つことができません。またアンブシュアも強張り、安定した音色も出せません。
では正しい姿勢とは……これはもちろん、正しい構え方と大きく関連してきます。
まず、椅子の半分〜2/3くらいのところに腰かけます。足は前後に少し開き、腰をどっぷりと据えてしまわないように、身体の軸(柱)を意識し、重心を低く、力を抜いてリラックス。腰かけた部分と両足で身体を支えていることが大切です。
楽器は脇に拳が一つ入るくらい開けて構え、マウスピースを咥えたときに顎が出すぎないよう引き、視線は真直ぐ。マウスピースは上の歯の裏にあてるように意識すると、テコの原理のように下唇にほどよい抵抗がかかるのが分かります。
この時に下管のベルが膝の内側にあることが平均的な角度です。膝をそろえてベルが膝上にくると、コントロールもしづらく、本来のフレーズの流れも損なわれてしまいます。
いかがでしょうか。顎が前へ出たりすると猫背気味になり、背筋が伸びすぎても身体が硬直し正しい呼吸がしづらいのです。「身体をリラックスさせ、息の流れを作る」という意識を高めていくことができれば、自然と正しい姿勢で吹けるようになっていくでしょう。