クラリネット記事 vol.44「遅いテンポ感はどうすれば良い?」
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シエナ・クラッツQ&A クラリネット☕Cafe 〜上手くなるためのホッと一息〜

vol.44「遅いテンポ感はどうすれば良い?」

遅いテンポ感はどうすれば良い?

50歳を過ぎたメンバー8人程度でアンサンブルを楽しんでいます。しかし、メンバーのテンポ感が遅く、うまくアンサンブルができません。曲がどうしても後ろにいってしまい、前に進みません。どうしたら良いのでしょうか?(T.O.さん 千葉県 50代女性)

T.O.さん、お便りありがとうございます! ご指名いただき光栄です、中村めぐみです。

さて、まず曲のテンポが後ろにいってしまう原因は2つ考えられます。1つは、一人ひとりが個人で譜読みをしたり、さらったりするときに、自分が吹く音符の前後のテンポや、途中の細かい休符の長さを正確に演奏することを考慮していないため、合わせの時に誰かの音に反応して音を出してしまっているのではないかという点です。
一人でパート譜を演奏するときにもテンポを感じられるようにさらうには、メトロノームをたよりに、時間の歪みを修正する必要があると思います。メトロノームで時間の流れをあらかじめつくり、そこに乗ってさらってみると、そうでない時とアンブシュアやブレスの準備のタイミングが違うことに気付くはず。インテンポで吹いているつもりでも、ちょっとした準備のタイミングで知らず知らずのうちにテンポがのびる場合があることを、確認してください。
ただし! 合わせの時にメトロノームを使うのは、私は良くないと考えます。なぜなら一人ひとりがメトロノームの音にそれぞれ合わせてしまうのでアンサンブルにならないからです。さらうときに目安になってくれていたメトロノームの刻みを、他の誰かの音が示してくれているはず。それがどんな音型なのかを探しながら吹くのがリハーサルの時間だと思います。
また、全員で長い音をのばしている時も、さらっていた時の流れを一人ひとりが思い出せれば、それはフェルマータのように止まったのばしでなくなるはずです。そして、例えそれぞれがしっかりインテンポで準備してきたとしても、若干の感じ方の違いがあるはずなので、そこでディスカッションして共通の心臓(鼓動)、足並みを持てることを目指してください

もう1つは皆さんの体の中に拍子の運動性(想像、予測)が、ないのではないかという点。
指揮をするのは難しくても、手拍子やじゃんけんはできますよね。そのテンポで手拍子をしてみた時に、体にテンポを植え付けて次の点を想像しているはずです。またじゃんけんは相手と息を合わせて、やはり予測、想像してそれに合わせて体の動かし方を決めているはずです。もぐらたたきのようにぎこちなくいちいち構えて、体の動きを止めてじゃんけんする人はあまりいないですよね。
もし頭打ちを聴いて裏打ちをするとき、その予測、想像がなかったらもぐらたたきのようにギクシャクしますよね。演奏をしている最中に、その予測があれば、自分の中にテンポを生み出せると思います。
よくおすすめするのが、パートをとりかえっこして演奏してみること。メロディの気持ち、伴奏の気持ちを色々体験すると、自分のパートに戻った時に引き出しが増えますよ。

アンサンブルによって表現される音楽は、決して一人ではつくり出せない心臓をもった、新しい生命力そのものだと思います。テンポ自体が他の演奏より多少遅くても、前に推進していることが大切です。それはお互いの信頼関係からしか生まれません。
みんなも頼りにしてるし、みんなからも頼りにされている、そんな音を出すために、

上の準備をトライしてみてください。私たちクラッツも、頑張ります!


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