第2回 レガートのいろは その2 〜レガートを吹くための身体〜
レガートに吹くためのポイントを確認しよう
1.息の柱
息の柱という用語はあまり聞いたことがないと思いますが、これは皆さんがよく知っている呼吸法によって生まれる一定の圧力をもった息の排出量のことで、太い柱のように真っ直ぐしたイメージでなければなりません。フランス語でコロンデール(Colonne d'air)、英語でエアーコラム(Air Column)と言い、日本語では“空気の柱”とも訳します。この“息の柱”は、横隔膜を土台にして一定の息を吹き込んで作ります。良い音でレガートを吹くためには、とても重要な奏法ですから覚えておいてください。呼吸に関しては改めて別の稿でお話ししようと思います。
2.アンブシュア
アンブシュアは、楽器の音を鳴らすためのマウスピースをくわえた口の形をいいます。この口の部分は、“息の柱”によってクラリネットの豊かな音を出すためのパイプ役、つまりリードを良い状態で振動させるためのクッションの役割をしているところです。
息を十分に吹き込むことによって、管の中に8分の1から20分の1の割合で息が入っていきます。リードは、息の柱を楽器に送り出すときの弁(バルブ)のような働きをするもので、息がうまく入るのをコントロールしています。リードはそういう意味で大変重要な役割を果たします。
ここで興味深いのはアンブシュアと、息の入る割合を変えることによって、音楽の曲想や音色に対する好みを作っていくことができるということです。
アンブシュアは下の歯に軽く下唇を巻いて、口は横にわずかに引きます。口を少し開いた状態で、マウスピースをその中に挿入します。下唇の上へマウスピースに固定されたリードの部分をのせてから、上の歯をマウスピースに当てて楽器を固定します。その時楽器を支えている右手の親指は上の歯に押しつける感じにします。
口に固定されたマウスピースの深さはどれくらいがいいのでしょうか? 人によって口の形や歯並びなどがそれぞれ違うので大変難しい問題がありますが、下唇はマウスピースとリードが開き始めた部分に置き、上の歯は約1cmくらいのところを目安にします(図)。これはマウスピースのカットの長さにも関係してくるので、個人によって誤差は出てくると思います。
3.運指
手の5本の指は、それぞれ長さと強さが違うので、トーンホールやキィを押さえるとき、指はなかなか均一に動いてくれません。また、最初のうちは楽器の重さもあり、不安定な状態です。
右手の親指でしっかりクラリネットを支えて、息の通り道である口、あるいは唇の形を作ってアンブシュアを安定させ、指が自由に動くようにしなければなりません。指は常にトーンホールやキィの近くにかまえてください。柔軟な指の感触によって、レガートのフレーズに対してより滑らかに表情を作ることができるようになります。
野崎剛史
Takeshi Nozaki
東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。