第3回 レガートのいろは その3 〜実践してみよう!〜
レガートの実践
1.レガートを習得することは、呼吸法、アンブシュア、運指などたくさんのことが同時に操作されなければならないことが理解できたと思います。レガートの練習はまず、音階をゆっくり一つひとつの音を聴きながら滑らかになるまで根気強く何度も練習してください。
初心者の人は低音域(シャリュモー音域)から始めましょう(譜例①)。E(実音D)の音から順番に一つずつ下に指を下ろして最低音のE(実音D)まで降りていきましょう。管の気柱の長さが少しずつ長くなっていきます。息の量と圧力が変わらないように十分に息を入れましょう。
2.シャリュモー音域がしっかり出るようになったら、次は高音域(クラリオン音域)です。
この音域は十分に練習したシャリュモー音域の低音のE(実音D)の音から一つひとつの音に対して順々にレジスターキィを押していくと、倍音によって12度上の高音域が鳴るような仕組みになっています(譜例②)。この譜例をシャリュモー音域と同じように何度も練習してください。
3.クラリネットの中音域、特に英語でスロートトーン(喉の音)と呼ばれている音域《G、G♯、A、B♭(各実音F、Fis、G、As)》(譜例③)は音質がやせて響きがうすくレガートが難しいところです。私たちは右手の指を押さえて、より丸い響きのする自分なりの指使いを考え出しています。
レガートの練習
実際にエチュードを使ってレガートの練習をしてみましょう。譜例④はC.Roseの「40のエチュード」の1番です。ここにはレガートのための有益なフレーズがあります。
1小節目にあるC(実音B)からG(実音F)へ進む音は、ほとんどの指を押さえた運指から全部離す運指になり、音質ががらっと変わってしまいます。こういう場合は、音程がよほど低くならない限り、右手の指は全部押さえたままで演奏すると、楽器も安定して音質もそれほど変わらないで済みます。
どうしても低い場合は右手の人差し指と中指だけにしてみてください。この運指に関してはフィンガリングの稿で改めて紹介しようと思います。
Allegretto cantabileでdolceのレガートで吹くこのフレーズの跳躍進行は、レガートとアンブシュア練習に大変有益です。指が楽器から全部離れても右手の親指でしっかり支えていましょう。
中級以上の人はオクターヴの半音階をレガートで、またオクターヴを2回吹くダブルの練習をすると効果があがります(譜例⑤)。できるようになったらpでも練習してください。
いま自分ができる能力の範囲で、このエチュードと音階をたくさん練習して仕上げてください。
タンギングについては次回以降でやります。楽しみにしていてください。
野崎剛史
Takeshi Nozaki
東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。