クラリネット記事 第4回 スタッカートのいろは その1 〜スタッカートは発音から〜
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中高生のための「クラリネット演奏法」

第4回 スタッカートのいろは その1 〜スタッカートは発音から〜

前回まででレガートについて勉強しましたので、今回からはアーティキュレーションの中で音楽表現には欠かせない、スタッカートについて考えていきましょう。

スタッカートの奏法は演奏する技術としてはたいへん重要で、それだけ難しい問題もたくさんあります。ふつうスタッカート(staccato)という音楽用語は「音を短く切ること」という意味だと考えている人が多いと思いますが、イタリア語のスタッカートは、Staccare(切り離す、分ける、分割する)という動詞からきている語で、切られた音は作曲家や演奏家の音楽的なイメージや時代様式によって、いろいろな長さで演奏されます。また、フランス語でデタシュ(Détaché)、英語ではタンギング(Tanguing)などと言っていますが、これらはみな同じ意味で、音を切り離す奏法なのです。この講座を読むにあたって、スタッカートという用語の意味をしっかり頭に入れて確認してください。

スタッカートは音の発音から始まる

音の発音

レガートでもスタッカートでも、まず、クラリネットの音を発音することが基本的にできていなければなりません。音が出始める瞬間は、リードが振動し始める瞬間でもあります。音の発音には二通りの方法があります。

(1)舌と息を使って音を出す

(2)息の圧力だけで音を出す

 

(1)舌と息を使って音を出す

基本的にクラリネットの音を発音するときは、舌を使います。まず、楽器をまっすぐ構えてアンブシュアをつくり、舌がリードの先端に軽く触れています(図①)。
次に、舌の先端でリードをマウスピースに押しあてて、お腹(横隔膜)を使って息をたくさん吸い、舌をリードから離すと同時に息を吹き込みます(図②)。

図① 舌がリードの先端に軽く触れている
図② 舌をリードから離すと同時に息を吹き込む


この時初めて音が発音されます。タンギングのことを普通「舌を突く」とか「アタックをする」とか言われていますが、正しく言うと、舌はリードの先端に軽く触れるだけでいいのです。これは舌の長さにも関係してきますが、先端といっても厳密には舌の頭の部分だけでするので、自分がしやすい部分を見つけてください。

(2)息の圧力だけで音を出す

これは舌を使わずに息の圧力でフーッっと入れて発音する方法ですが、音楽的に静かな部分やゆっくりとした部分、あるいはppでフレーズをdolceで始めたいとき、タンギングをしないほうがいい場合があります。
ふつう、この方法は連続したスタッカートなどでは横隔膜の支えがないと難しく、速い動きの時は不可能です。特に呼吸法との関連もあって、悪い癖がつくことがあるので初心者には勧められません。アンブシュアや呼吸法が十分でない初心者はまず、しっかりした息を吹き込んで、舌を使って発音する方法を習得してください。

 

登場するアーティスト
画像

野崎剛史
Takeshi Nozaki

東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。


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