第6回 スタッカートのいろは その3 〜舌を動かす訓練〜
舌の筋肉を柔軟にする訓練
(1)まず、楽器を吹かないで、舌だけの訓練をしましょう。タ(Ta)の発音でいろいろな音価(4分音符、8分音符、3連符、16分音符)をゆっくり何度も繰り返し規則的に練習してください(譜例①、譜例②)。このタ(Ta)の発音は口の内側の上の歯と歯茎の間くらいに舌をつけて発音します<閉鎖音>(図①)。
(2)つぎに、舌の筋肉を柔軟にする先端の練習だけでなく、舌の奥のほうも柔らかくしなければなりません。もう一つの方法として舌の先端を上の歯と下の歯でかんで固定して、4分音符で「ター、ター、ター、ター」と発音してみましょう。初めてやるときなかなか思うようにいかないけれど、ゆっくり少しずつ習得していってください(図②)。これは舌の筋肉を柔軟に動かすためには、有益な練習です。舌の先端を固定してもタ(Ta)の発音が明瞭になってきたら、8分音符や3連符でもやってください。あまり速くはできないと思いますが、これらの練習は楽器の音を出さなくてもいいので、都合のいいときに練習ができます。例えば、夜寝る前や朝起きたときなど、メトロノームを使って正確にたくさん舌の練習をしましょう。
スタッカートの練習
音階の練習
今までは同じ音でのタンギングの練習でしたが、順次進行の音階を参考にしながら実際にスタッカートの練習をしましょう(譜例③)。
それぞれのスタッカートで練習しましょう
タンギングにはさまざまな奏法があり、大ざっぱに分けて短い、ふつう、長いの3種類です。
(1)初めに、これを2小節ごとにフレーズをつくって、レガートできれいに吹いてみましょう。第1回、第2回、第3回のレガート奏法を思い出して吹いてください。
(2)スラーをつけないで音符通りに吹きます。
ここで重要なのは舌と指が同時に機械的に動くことです。またレガートと同じ音質で吹きましょう。長めのタンギングなので最初はゆっくり指と舌が一緒になるように確実になるまで練習してください。
(3)次は音符の上にスタッカート。短くなった音符の長さはテンポによって変わってきます。点がつくとつい短いという先入観にとらわれがちです。テンポがゆっくりになると、当然音は長くなります。また、音符が短くなるほど、舌の敏速な運動が要求されます。何度も言うように舌を離して戻す瞬間に雑音を出さないように細心の注意を払いましょう。
(4)最後はテヌートで練習してください。
音が長いので舌の運動は瞬時に行ないます。
スタッカートの種類には他に、レガート・スタッカート、レガート・テヌート、テヌート・スタッカート、スタッカッティシモなどいろいろありますが、混同してしまうので今後のアーティキュレーションの稿でまとめてやる予定です。
タンギングは音域によって、きれいに鳴らないところがあります。スロートトーンといわれる中間の音域、高い音域など雑音が入ったり、倍音が鳴ったりでなかなかきれいに音が切れません。原因は舌の触れ方に問題があったり、レガートや、低い音域できれいに聞こえても、高い音域になるとつまったりするのは腰のない薄いリードをつけている場合が多いです。呼吸やアンブシュアにも原因が考えられます。
野崎剛史
Takeshi Nozaki
東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。