第9回 アーティキュレーションのいろはその2 〜作曲者の意志を感じよう!〜
スタッカート、テヌート
第6回の続きになりますが、まずスタッカートの音を分離するときの「長さ」をおさらいしましょう。
レガートは音をつなげるのに対して、スタッカートは音を分離するということでしたね。それぞれ短い、普通、長い、といろいろな長さがあり、またスタッカートは「音を切り離す」奏法で、決して「音を短く切る」という一面的な意味ではないこともお話ししました。
一般的に短いスタッカートという場合、音符の上か下に点が付くのが普通です。また、一つの音を長く保持するテヌートはスタッカートの点の代わりに短い横棒線をつ付けます。
第6回でスタッカートという意味を理解するために、テヌートのことを「長いスタッカート」というふうに書いたけれど、間違いではありませんが、あまり一般的な言い方ではないことを付け加えておきます。
レガートの中のスタッカート、テヌート、アクセントはタンギングをする
いろいろな長さのタンギングを考えるとき、スタッカートやテヌート、アクセントなどにレガートの
弧線が加えられたアーティキュレーション(譜例a、b、c)、またスタッカートにテヌートがついたものなどその長さはさまざまです。(譜例d)
これは、曲のテンポやニュアンス、またそのフレーズの曲想に従って、それにふさわしいアーティキュレーションが書かれます。レガートの中に書かれたスタッカートやテヌート、アクセントなどは原則的にタンギングをすることになっています。スタッカート、テヌートやアクセントをタンギングする中で、レガートの弧線(スラー)によって音符をより長めに柔らかく演奏する表現が加えられるのです。
また、スタッカートの上にテヌートが書かれたものもあります。矛盾するようですが、短いスタッカートをテヌートでタンギングすることになります。このスタッカートでは短いので、ちょっとその音符を長めにしたいという作曲家の気持ちが込められていると考えてください。この音符の時間的な長さを数量的に測ることは難しいので、フレーズの持つ音楽的雰囲気を感じながら吹くことが必要です。
野崎剛史
Takeshi Nozaki
東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。