第12回 フレージングのために その1 〜“美しいフレーズ”とは〜
第8回から第11回までで「アーティキュレーション」には、いろいろな長さや形があるのを勉強しました。今回は音楽の中でも主導的な要素であるフレーズ、またそのフレーズを吹くための呼吸法、アンブシュア、リードとマウスピースの関係などの話を交えながら、実際にクラリネットの名曲を演奏していきたいと思います。
美しいフレーズを吹こう
フレーズは文章や言葉からきた用語で「句、言い回し、表現」などと訳されています。読点(、)や句点(。)によって区切られたフレーズは、文章や言葉の意味をわかりやすく伝えます。これと同様に音楽のフレーズ(楽句)は、一般的に2部形式や3部形式などの基礎形式などに見られるように、4小節あるいは8小節単位でフレージングされています。
もちろん、フレーズは小節線に関係なく自由に作られたり、不規則な場合もたくさんあります。そして、このフレーズを一息で表情をつけて歌うことは常に演奏者に与えられた課題です。
アーティキュレーションは、タンギングによって音をつなげたり分離したりして、音の長さを変えていろいろな音形が可能であることを勉強してきましたね。それに対してフレーズは、息によってひとつの意味や内容を伝える音楽の大切な要素で、魅力的な美しいフレーズは聴く人に大きな感動と幸せを与えてくれます。
野崎剛史
Takeshi Nozaki
東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。