第14回 フレージングのために その3 〜一音入魂!!〜
良いフレージングは正しい呼吸法から生まれる
息とリードの関係、リードとマウスピースの関係は理屈で言うほど簡単ではありませんが、ある程度リードとマウスピースの条件が整ったら、次にこの講座の最終目的である呼吸法について考えてみようと思います。
地球上のあらゆる生き物は、生まれてから休むことなくずーっと呼吸をして生きています。この呼吸は無意識に行なわれているわけですが、人間はこの呼吸を使って言葉という音を発見し、その言葉は伝達手段となり、言葉の中から歌が生まれてきました。
そしてより相手に分かりやすく理解してもらうために、はっきりと発音して言葉を区切りながら意味を伝えてきました。ここからアーティキュレーションやフレージングという考え方が生まれてきました。
また、昔のギリシャでは呼吸や息(Pneuma)という語の中に、魂(精神)という意味もあったようです。以上のことから、音楽においてフレージングをすることは呼吸することと同じで、良いフレージングをするためには魂をこめた正しい呼吸が必要になってきます。
ここで一息。簡単な歌を、フレーズを感じながら吹いてみましょう。譜例は南フランスのオック地方の民謡です。3部形式で作られ、8小節単位で三つのフレーズから成っています。
もちろん4小節ごとに小さなフレーズでブレス(息継ぎ)をしてもかまいませんが、音楽の方向を明確にして8小節の長い息でフレーズを作ってください。p、dolceのニュアンスは、弱すぎて音が死なないように息をしっかり支えて、音をよく鳴らし、柔らかいニュアンスで歌ってください。
ダイナミックスは物理的な強さ弱さではなく、相対的なニュアンスの変化が大切です。
野崎剛史
Takeshi Nozaki
東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。