中高生のための「クラリネット演奏法」

第15回 フレージングのために その4 〜呼吸のいろは〜

呼吸のしくみ

呼吸は、空気が肺に吸い込まれたり、吐き出されたりする運動ですが、肺が自らふくらんだり縮んだりするわけではありません。胸郭の中にある肺は、横隔膜や肋間筋などの働きによって、膨張したり収縮したりして運動しています
横隔膜……胴体は胸部と腹部に分かれていますが、簡単に言うとその中間あたりに横隔膜という筋肉があります。これは図版などで見るとドームの丸天井か、鍋を逆さまにしたような形で、筋肉が収縮すると丸天井が下におりて平らになります。同時に弾力性のある肺は下に広がり空気が流れ込んできます。
筋肉をゆるめると丸天井が上がり(元に戻り)肺が押されて空気が吐き出されるというしくみになっています。
この横隔膜の働きで行なわれる呼吸を、腹式呼吸といいます。また、息を吸うときに胸郭が同時に広がりますが、これは肋間筋(肋骨を動かしている筋肉)が働いています。主に肋間筋を使って行なわれる呼吸を胸式呼吸といいます。(腹式呼吸といっても、実際は胸式呼吸との複合によって行なわれています)

腹式呼吸

私たちは普段の生活の中で、安静時には腹式呼吸を行なっていますが、管楽器を吹くためには特別にこの腹式呼吸を意識して訓練しなければなりません。複式といってもお腹だけふくらませても十分ではなく、胴の周り全体がふくらむような感じがベストです。
また、よく息を支えるといいますが、これは横隔膜の周囲の筋肉がしっかり支えられている状態のことなのです。この横隔膜全体の筋肉を実感するために、上体を下ろして床に手が届くくらいの前傾姿勢をとって、犬が舌を出してハッハッハッと言う要領で息をすると、前のお腹が圧迫されているので後ろ両脇の横隔膜の筋肉が動きます。この練習をしばらくやると、だんだん横隔膜の呼吸がわかってきます。
呼吸という語は、その通りに読むと“吐いて吸う”ことです。一般的に、呼吸法はまず吸うことから始まりますが、むしろ最初は息がなくなるまでたくさん吐いて、なくなった息を補うために必然的に吸うというほうが理屈にかなっていると思います。ロングトーンで音を長く吹いて、横隔膜の状態をイメージしながら、息を吐いて吸う練習をたくさんして腹式呼吸を習得してください。

登場するアーティスト
画像

野崎剛史
Takeshi Nozaki

東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。


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