第17回 フレージングのために その6 〜名曲を吹いてみよう〜
名曲を演奏しよう
今回は今まで勉強してきたまとめとしてロマン派の作曲家ウェーバー(C.M.von Weber)の『協奏的二重奏曲(Grand Duo Concertant)』の第二楽章の前半部分を一緒に練習したいと思います(ページ下部の譜例)。この曲にはさまざまなアーティキュレーションや美しいフレーズがあり、クラリネットの特性を生かした広い音域を活用して、ppからffまでのダイナミックスと繊細なニュアンスで演奏されなければなりません。
まずテンポですが、Andante con motoは「ゆっくりしているけれど遅すぎないように、動きのある速さで」という意味です。
最初の4小節はテーマへの導入で、5小節目から8小節のフレーズが始まります。悲しみをこめて(con duolo)fで十分に息を吹き込んでみましょう。ゆっくりしているので息が足りないときは4小節目でディミヌエンドした後すばやく息を吸います。
Aの4小節目、低音のファの音から2オクターブをスタッカートで上がる変ロ長調の音階があります。このスタッカートは長めにタンギングして、8分音符のアクセントから付点4分音符の最高音のファに向かって一気に上がりましょう。クレッシェンドするときは息の量を増していき、気持ちも盛り上げていきましょう。頂点に達したffのこの激しい気持ちから一転して、スタッカートにスラーがかかります。そしてディミヌエンドしてすぐに気持ちが穏やかで優しい感じになります。ppになったときに息の支えを保って、弱くなりすぎないように気をつけましょう。これは緊張と弛緩の対照的な例です。
この曲は短調で書かれていますが、CからDまでは長調に転調して明るく幸せなフレーズが続きます。Cから7小節目にノン・レガートで分散された和音があります。息をしっかり支えて、タンギングをする舌は柔らかくリードに触れましょう。
Dの1小節前のppは音が消えないように息を入れて、優しくフレーズを終わりましょう。全体的に4小節ずつのフレーズですが、常に大きなフレーズを考えて息を十分に吹き入れてください。音楽的に表現ができるように何度も繰り返して練習して、美しくフレーズを歌えるように呼吸法を習得してください。
野崎剛史
Takeshi Nozaki
東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。