クラリネット記事 第18回 “ニュアンス”を知る その1 〜ダイナミクスを学ぶ〜
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中高生のための「クラリネット演奏法」

第18回 “ニュアンス”を知る その1 〜ダイナミクスを学ぶ〜

皆さんお元気ですか。
早いもので、この講座も第18回目を迎えました。今までは、フレージングや主に音の長短(アーティキュレーション)に関して話をしてきましたが、音楽にはその他に音の強弱(ダイナミクス)、音の運動(テンポとリズム)、音の高低、音色など、大切な要素がたくさんあります。
今回からは音の強弱やニュアンスを中心に演奏法を勉強していきたいと思います。

音楽のニュアンス

音の強弱(ダイナミクス)

私たちはうれしいときや楽しいときに、大きく比較的高い声で早口になります。また悲しいときや苦しいときは、声のトーンも低く小さくなって言葉も沈んできます。これは人間の無意識のうちの自然な表現なのですが、同じように音楽にも静かな感じ、激しい感じ、軽快な感じ、悲しい感じなどいろいろな表情や表現があります。
このような音楽作品のキャラクターやイメージは、テンポやリズム、調整、音の高さ、曲想などの違いによって作られています。例えば高音での速いテンポのスタッカートのフレーズは明るい軽快な雰囲気を表し、比較的音域の低い、ゆったりとしたテンポでのレガートは静かなさびしいイメージという具合です。それに音の強弱やニュアンスが加わると音楽の表現がより豊かになってきます。

“ニュアンス”という用語は絵画での色合いや濃淡を意味していますが、音楽でも同様に、音の濃淡や、表情、感情などの微妙な差異、陰影などを表現する用語となっています。音楽での“ニュアンス”という語は「響きのある豊かな表情」という意味合いがあります。フランスの作曲C.ドビュッシーはフランスの印象主義の絵画に影響されて音楽を作曲しましたが、『牧神の午後への前奏曲』や『交響詩「海」』など管弦楽曲の中でpppfの微妙なニュアンスをふんだんに使っています。

ピアノ(弱奏 p)とフォルテ(強奏 f

吹奏楽コンクールなどを聴いているとしばしば、クラリネットのレガートは比較的良い音なのに、ピアノ(弱奏 p)やスタッカート(staccato)になると突然音のエネルギーがなくなり、音がきたなく生気がなくなってしまうということがあります。響きがなくなって音が死んでしまうのです。裏を返すと本当の意味でフォルテ(強奏 f)の音が鳴っていないと言うこともできます
これにはいろいろな要因が考えられますが、弱い音になったとき、息がしっかり支えられていないことが一つの原因です
また、Allegroで pと指示があって、最初は気をつけていても吹くうちにだんだん音が大きくなり、いつのまにか mfのような中位でどっちつかずの音量になっている場合があります。何も考えず、無意識のうちに安易な中庸を選んでしまうのはよくあることですが、この場合は pで吹くより mfのほうが息を出すのが楽だからです。これは中途半端に呼吸をしていると起こりがちです。指示された pfをはっきり吹き分けなければなりません。
またクラリネットは管楽器の中でいちばん弱い音の出せる楽器です。よく鳴った pあるいは ppが出せるようになるためには、呼吸法が一つのキーポイントになります。

登場するアーティスト
画像

野崎剛史
Takeshi Nozaki

東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。


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