クラリネット記事 第22回 “ニュアンス”を知る その5 〜ブレスとニュアンス〜
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中高生のための「クラリネット演奏法」

第22回 “ニュアンス”を知る その5 〜ブレスとニュアンス〜

アクセント(>)とスフォルツァンド(sfz

pfのフレーズやパッセージの中でその音を強調したいときにアクセント(>)やスフォルツァンド( sf)などの記号をつけますが、そのときの息の状態はどうなっているのでしょうか。
意識的に息を出しているときに、例えば咳払いやクシャミをしたときに起きるたいへん速い空気の流れる状態を想像してみてください。また、大声で「ワッハッハッハ……」と笑うときも速い息の流れが起こっています。時には笑いすぎてお腹が痛くなった経験もあると思いますが、勢いのある空気の流れが>や sfのときの息使いに似ています。
これらはタンギングによってもコントロールされます。またフレーズの中でどのくらいの強さで強調するかを考えなくてはなりません。pの静かな部分で sfがいきなり強い音で鳴ったら、場違いで音楽的に不自然です。その雰囲気にふさわしい sfやアクセントの音を出さなくてはなりません。

ブレスコントロール(息の調整)

ロングトーンやダイナミクスの練習を通して、横隔膜の運動がほとんど呼吸を支配していると言えることが、実感として分かりましたか?
さて、第12回から第17回の講座でも話しましたが、ダイナミクスの基本的な練習から離れ音楽的なフレーズを吹くためには、吐き出す息の量をうまくコントロールして正しくフレージングすることも考えなくてはなりません。
息を全部吐ききってしまう場合もありますが、次に続くフレーズを考えて、息を溜めておくことも大切です。どんな時も音楽的に不自然にならないよう、可能な限りの短い間に息を吸う訓練もしなければなりません。
言うまでもなく正しい呼吸をするためには、その呼吸の妨げになるような姿勢を絶対してはならないのです。息を吸ったときは横隔膜だけでなく肺がおさまっている胸郭も広がります。状態が前かがみになったり座ったときに椅子の背もたれに寄りかかって、胸郭の動きをさまたげないよう注意しましょう。
また、不必要に体を動かす人がいますが、基本的に上体はまっすぐにして常に正しい姿勢を保たなければなりません。

音楽のニュアンスやアクセントについては、前回のフレーズの講座で練習したウェーバー(C.M.von Weber)の『協奏的二重奏曲』を参考にして、もう一度あらためて練習してください。

今回はクローゼのエチュード(ページ下部譜例)の中からの一部を練習することにしましょう。音符が32分音符で細かく見えますが、テンポがゆっくりしているので、指の練習も兼ねてダイナミクスの練習にはとてもよいエチュードです。とくに pでの練習は呼吸のコントロールには大変有益です。
運指が難しいところがありますが、運指表を参考にしてください。初めから3小節目の最後の拍のシ♭(実音As)の運指は運指①を参考にしてください。また4小節目の二拍目レ♯(実音Cis)と5小節目の四拍目のミ♭(実音Ds)の運指は運指②の通りです。譜面に示してあるRは右手、Lは左手で押さえる意味です。

運指①
運指②

指が動くことによって呼吸がおろそかにならないように、常に息がしっかり出ていることを確認しながら何度も練習しましょう。少しずつその成果が出てくることを期待しています。

 
 
登場するアーティスト
画像

野崎剛史
Takeshi Nozaki

東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。


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