第24回 総括 その2 〜音域別・いい音を出すために〜
シャリュモー音域、クラリオン音域
シャリュモー音域がたっぷりした丸い音で吹けるようになったら、クラリオン音域の練習をしましょう(譜例①)。この音域は当時のクラリオンあるいはクラリーノと呼ばれた高音トランペットの音色に似ていたのでクラリーノ音域とも言われています。それはもともとクラール(明るい)というラテン語に由来する語で、ここからクラリネットという名前がついたように、澄んだ明るい音色の出る音域がクラリオン音域です。
第三回目の講座の「レガートの実践」でもやりましたが、シャリュモー音域でアンブシュアや呼吸が変わらないよう注意して、レジスターキィの操作だけで12度上のクラリオン音域をきれいなレガートで出してみましょう。このとき大切なのは左手親指の4分の3でトーンホールを、残り4分の1でレジスターキィを押すために、指の関節を使って正確に動かす練習をすることです。しかし、人によって指の長さや大きさなどの違いがあり、指でふさぐ割合は多少変わってくるので、一つの目安と考えてください(写真A参照)。
また、12度上の音に移ったときに、音がひっくり返ったり薄っぺらでつぶれた音にならないように注意しましょう。それらは、息の流れやアンブシュアが不安定だったり、リードが薄すぎて抵抗感がないときに起こりがちです。腰のあるリードを選び、肩の力を抜いてまっすぐな息を吹き入れましょう。この練習は大切です。音がきれいにつながるまで何度も練習しましょう。
高音域
この音域はクラリオン音域よりさらに上の高い音です。これも倍音によって自ずと運指がきまり音階が作られていきます(譜例②参照)。オーバーブロウで倍音を出すとき、息やアンブシュアだけでは発音が難しく音程も低いので、最初は正規の運指で、特に高音のF(実音E♭)、F♯(実音E)、G(実音F)などの音は運指表を参考にして、レガートできれいに吹けるようになるまで練習してください。そして高音域を倍音によって出している感触を息とアンブシュアで覚えてください。
野崎剛史
Takeshi Nozaki
東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。