クラリネット記事 とことん指レン!【前編】
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The Clarinet vol.65 Special Contents

とことん指レン!【前編】

「運指練習」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?
メトロノームと向き合ってとにかく地道にやるしかない。苦手なんだよなぁ。できればやりたくない......。ネガティブなイメージを持っている方も多いと思います。しかし、クラリネットという楽器を吹いている以上、どこかで「指レン」に向き合わなければいけないのもまた事実です。そこで「指レン」にいろんな角度からアプローチしてみました。努力ももちろん必要ですが、その努力が最大限活かされるように、身体 の使い方やグッズなども含めて、普段の練習方法を見直してみましょう。もちろん練習用の譜例も多数掲載しています!毎日の練習に活かしてみてください。

アレクサンダー・テクニーク(AT)のアイディアを使った
指レン!をやりやすくする身体の使い方

運指練習に入る前に、まずはクラリネットを吹く時の体の使い方を細かくチェックしてみましょう! 体の仕組みを理解することで、より良い状態で運指練習に臨むことができるはずです。スイス在住クラリネット奏者・国際認定アレキサンダー・テクニーク教師の大谷淳子さんに解説してもらいました。

 

大谷淳子
国立音楽大学在学中に渡欧し、パリ・ジュネーヴにて学ぶ。その後チューリッヒ歌劇場の研究生を経て、契約団員としてビール/ビエンヌ交響楽団とベルゲン管弦楽団にて首席、ルツェルン交響楽団バスクラリネット奏者、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団エスクラリネット奏者としてそれぞれ貴重な経験を積み、現在スイスを拠点に、多様な室内楽・ソロ・オーケストラで活動中。フォンテックよりパトリック・ジグマノフスキー氏とのCD「わたしのお気に入り~フランス音楽集~」をリリース。
その傍ら、アレクサンダー・テクニークの教師の資格をチューリッヒにて取得し、様々な夏期アカデミーやスイスの音楽大学などでもゲストで教えている。ビール/ビエンヌ国際夏期アカデミーのクラリネット講師を務めるなど、ATを活かした独自のレッスンとワークショップを展開して後進の指導にもあたる。
www.junko-otani.com

 
 

“指の練習”と聞くと、みなさんは何を思い浮かべますか?

スケールやアルペジオで、とにかくたくさん指を動かすスポーティーな練習をすることや、難しいパッセージをゆっくりから辛抱強くさらうことでしょうか? それとも究極のレガートがかかるように、指を柔らかく動かす練習でしょうか?
楽器を演奏するからには、指が思うように動くようになるまで、そして理想の演奏にちょっとでも近づこうと頑張って、工夫して、みなさんも毎日コツコツと修行に励んでいることと思います。わたし自身もそうやって、先ほど書いた練習法を始め、呼吸のことからタンギング、音量の変化と音程の関係……など、いくつも新しく編み出してはハマり、夢中で練習していました。
その『がむしゃら練習法』を音大受験ごろから数えると、パリ・ジュネーブ留学中を経て10年ほど続けていました。結果、練習のしすぎでアンブシュアや顎関節を痛めて一音も吹けなくなったり、チューリッヒ歌劇場のアカデミー時代はオケの中で周りに惑わされて奏法を見失ったり、長時間上手く座れなくて腰を悪くしたり、オーディションなどのストレスがきっかけで、気づかないうちに喘息になっていたりと、実は苦労してきました。
そんなころ、チューリッヒ歌劇場オケの、尊敬するソロクラリネッティストの勧めで、アレクサンダー•テクニーク(以下AT)に出会いました。ATの先生のもとでじっくり時間をかけて、自分の身体全体のバランスを理解しながら整え、身体の各部位の使い方や心身のコントロールを学ぶことで、十数年悩んでいた奏法の問題が色々と解決していきました。息が自然に楽に入るようになってしっかりした音が出るようになり、指も(がむしゃらに練習しなくても)軽く回り、肩凝りも腰痛も改善されていくことで、もっと自由に音楽が表現できるようになる……その一部始終をお話しするには今回のコーナーでは足りませんが、みなさんにとって何か考える、変える、気づくきっかけになれたらと思って書いています。

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