EVENT REPORT - ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクール -
第6回ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクール
日程:第一次予選:3月7日(火)〜15日(水)(動画審査)
第二次予選:5月1日(月)〜13日(土)(動画審査)
第三次予選:8月30日(水)〜8月31日(木)
準本選:9月1日(金)
本選:9月3日(日)
審査員コンサート:9月2日(日)
入賞者披露コンサート:9月5日(火)
※第三次予選以降の審査の様子は、無料で公開された。
またインターネット経由で無料配信も行なわれた。
会場:横須賀芸術劇場/東京オペラシティ リサイタルホール
審査員:ニコラ・バルディルー(審査委員長)
ヨハネス・グマインダー
アントニオ・サイオテ
アレクサンドル・シャボ
松本健司
野田祐介
主催:ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクール実行委員会
名誉実行委員長:フィリップ・セトン(駐日フランス大使)
共催:公益財団法人横須賀芸術文化財団
ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクールは、2014年から2年ごとにフランスと日本で交互に開催されている。その名にもなったジャック・ランスロ氏はフランス・日本両国で若いアーティストの教育に尽力したクラリネット界の偉人であり、このコンクールも若き演奏家たちの登竜門として世界的に注目されている。
第6回となる今回は、コロナ禍を挟んで実に5年ぶりに日本での開催となった。第一次予選と第二次予選は動画審査となり17カ国から183名が第一次予選審査に参加した。そこから次のステージに駒を進めたのは96名で、さらに第二次予選審査で35名まで絞りこまれた。
第三次予選以降の審査は神奈川・横須賀芸術劇場が会場となる。審査委員長にニコラ・バルディルー氏を迎え、審査委員にはヨハネス・グマインダー氏、アントニオ・サイオテ氏、アレクサンドル・シャボ氏、松本健司氏、野田祐介氏ら、各国を代表する一流の奏者が名を連ねている。
第三次予選と準本選は小ホールで競われた。その熱戦たるや、バルディルー氏をして「深く高いレベルの参加者たちに、本当に驚いた」と語るほどに極めてハイレベルなものとなった。35名がしのぎを削る第三次予選を通過したのは、三界達義氏、西村明穂氏の日本人2名を含む10名の若き実力者たち。彼らが準本選でさらなる戦いの火花を散らし、とうとう本選に進出する5人が選ばれた。
本選の舞台は大ホール。課題曲はW.A.モーツァルト『クラリネット協奏曲 イ長調 K.622』と、野平一郎氏による委嘱新作の無伴奏曲『3つの変容〜クラリネット独奏のための』の2曲。モーツァルトは暗譜での演奏で、コンクールのために特別に結成されたオーケストラ(指揮・梅田俊明氏)との共演となった。
今年3月の第一次予選から半年にわたって開催された本コンクール。栄冠を勝ち取ったのは、圧巻のテクニックと多彩な表現力で会場を魅了したスペイン出身のアンヘル・マルティン・モラだ。彼はすでに国立リヨン歌劇場オーケストラの首席奏者として活躍しているが、ソロや室内楽での経験を積むために今回参加したという。第2位は韓国のサンジン・パーク、第3位はポルトガルのマルティン・バルボッサとなった。サンジン・パークは、準本選の課題曲であるC.ドビュッシー『第一狂詩曲』のもっとも優れた演奏者に贈られる濵中浩一賞も受賞した。
審査員の野田祐介氏は
「第三次予選参加者全員がどこに出しても恥ずかしくない音楽家。上位入賞者以外にもすばらしい人がたくさんいる。結果に拘泥せず自分の道を歩んでほしい」
とアドバイスした。
松本健司氏は
「音色の変化は演奏家にとって重要なもの。しかし、優秀な奏者にもかかわらず、音色の色彩に乏しい人がいたことがとても気になりました」
と語った。
コンクール実行委員長を務めた二宮和子氏は
「国際コンクールへの参加を通じて、演奏家としてワンステップ成長してもらうことが私たちの願い。上位に入賞できず悔しく思う人は、海外の入賞者や演奏家の演奏を聴き、いちばん良い音楽とは何かを自分で判断できるようになってほしい」
と語った。
コンクール1週間前にオーケストラの首席奏者に就任した第1位のアンヘル・マルティン・モラ。「優勝できるとは思っていなかった。とても光栄で、ハッピーです!」。
モーツァルトの協奏曲をオーケストラと共演したのは初めてだという第2位のサンジン・パーク。「夢のような時間でした。そして自分の今の一番の目標が、プロのオケへ入団することです」。
「自分が3位になるなんて夢にも思わなかった。最高の気分です。もっともっと勉強します」と、第3位のマルティン・バルボッサは語った。
毎回大人気の審査員コンサートは9月2日に開催。横須賀芸術劇場がほぼ満員になった。
上位入賞者3名と審査員によるグループショット。入賞者全員が20代という若さだ。
(文:丹野由夏)