クラリネット記事 バードストラップの実力
  クラリネット記事 バードストラップの実力
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The Clarinet 56号 Gear Report

バードストラップの実力

タツミ楽器 バードストラップ

オシャレなルックスと考え抜かれたデザイン設計、さらに豊富なカラーリングや好みに合わせたパーツカスタマイズなど、従来のストラップの常識を変えたバードストラップが、クラリネット用モデルの販売を開始した。The Clarinet 56号では、普段からバードストラップを愛用しているというクラリネット奏者の田中正敏氏と、バードストラップの製造元であるタツミ楽器の代表取締役 巽 朗氏のインタビューを敢行。今話題のストラップ、その真価に迫る。

クラリネットとストラップの関係

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田中さんは様々な場所で演奏活動や指導をされていますが、生徒さんや周りのクラリネット奏者の中にストラップを使用されている方はいますか?
田中
数人使っている奏者を知ってるくらいで、まだほとんど使われていないんじゃないですかね。僕は以前から自分が教えている学生にはストラップを勧めていますが、うちのクラスやOB以外ではまだ見たことない(笑)。
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ストラップが話題にあがるようになったのもここ数年の話ですよね?
田中
そうそう。それこそ10年以上前はストラップなんて皆無だったよね。昔、僕がフランスで学生をしていたころに、パリ国立高等音楽院のドゥプリュ(ギイ・ドゥプリュ)が「ストラップはしたほうが良い」と言ってたことがありましたけど、見た目が気になるとかで使ってはいなかったですね(笑)。
クラリネット奏者 田中正敏 バードストラップ
――
これまでクラリネットでストラップが使われてこなかったのはなぜでしょう?
田中
そもそもクラリネットは、特にフレンチの場合、右手の親指と歯の支えで楽器を固定しましょうって教わるんですよ。
でもストラップを使用すると、その固定の仕方は変わって、肩が支点になって楽器を支えるようになります。クラリネットには、ストラップを使っちゃうとストラップなしの状態に戻れなくなるという理論があって、それが怖くて付けられないという人が多いみたいですね。
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田中さんが指導をする際に、姿勢や指使いに問題がある人は多いですか?
田中
多いなんてもんじゃないですよ。特に女子は指が小さいですし、最初はしっかり孔をふさげない子がほとんどです。でもこの固定する感覚って人にはなかなか伝わらない部分で、その感覚を自覚するまでには時間がかかる。僕の生徒で、副科でクラリネットを始めて、自分でストラップを買ってきて使ってた子がいたんです。その子が肝心の試験当日にストラップを忘れて来たんだけど、普通に吹けていました。もしかしたら楽器を固定する感覚をストラップがサポートしてくれて、その感覚がいつの間にか身に付いちゃったのかな?って(笑)。
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ストラップを使うことで良い影響がある?
田中
あると思いますね。もちろん楽器を支えてくれますし。普段楽器をまったく固定できていない人は、ゆるゆるの状態で吹くから、それだけ息のスピードが速く入れられないんですよ。特に女の子は、指のサイズや筋力的に弱い吹き方になっちゃう場合が多い。だから、ビギナーはもちろんですが、手の小さい人や、しっかり楽器を支える筋肉のない人には、特にオススメです。

ストラップで音が変わる!?

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田中さんはバードストラップを愛用されていますが、使用されてみていかがですか?
田中
慣れるのに時間がかかったけど、僕はこのストラップを使うようになって本当に良くなったと思う。深く息を入れられるようになったというか。今まで上の音を無理やり深くしようと力んでいた部分がなくなり、ストラップがからだの使い方を教えてくれるんです。リードの鳴らし方も変わってきて、よりフリーに、かつ呼吸が深くなってきた。アタックのスピードも上がるようになったけど、上がっても崩れないようになりましたね。ギュッて絞りだすんじゃなくて、ドンって息が使えるようになった。
――
バードストラップならではの特徴は?
田中
通常のストラップは、左手の親指がストラップに当たっちゃうことが多いですが、バードストラップはその心配がまったくないよね。
左手親指がストラップに当たらないようにスライダーとアジャスターの2箇所での調節が可能です。国際特許を取得したサムレスト(※別売り)を管体側に取り付けてもらえれば、管体とストラップの距離がさらに離れるので、まったく気にならなくなると思います。また、肩にかけるパッド部分も伸縮するタイプにし、クラリネットならでは演奏ができるよう設計しました。
タツミ楽器 バードストラップ部位説明
田中
僕の場合は、肩のパッド部分を伸縮しないタイプに変えています。そのほうが前に押し出すような感覚で息もガッと入れられるので、音の輪郭がパキっとして好きなんですよ。
――
バードストラップを使用すると音色も変わるのですね?
田中
間違いなく変わりますね。特にサムレストを変えると、音の響きが変わるのがよくわかる。でも極論を言うと、ストラップにするとベストなセッティングもまた変わってくると思います。僕なんてストラップをつけ始めてからずっと悩んでいて、マウスピース2本目だもん(笑)。
――
フィンガリングについてはどうでしょう?
田中
それはもちろん変わります。難しい跳躍などが断然楽になるし、レジスターキィを使ったボヘボへボヘっていうトレモロも難なくできる。それでいて息がすごいリッチに安定しているから、息をたくさん入れて吹けるんですよ。フラジオも以前より自然に出せるようになりましたね。
欧米の人はからだや肺の大きさも筋肉量も違うから、彼らが当たり前にできちゃうことも、日本人にはからだの構造上難しかったりします。でも、このストラップを使うことで、今までできなかったプレイが可能になって、日本人が海外と勝負できるようになるというのが目標なんです。例えば、世界的コンクールで日本人がこのストラップをつけて1位になるとか。日本人のデメリットを補うパーツや構造、それを僕らの知恵で開発して、プレイヤーが“新しい音楽”を作る。今までできなかったことができるようになって、“新しい音楽が生まれる”っていうのが最終ゴールだと思ってます。

バードストラップのこれから

タツミ楽器 バードストラップカラー展開

左は田中さんのモデル。カラーバリエーションの販売は10月ごろを予定している

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今後のバードストラップの展開は?
まずパーツごとの販売が始まります。パーツは紐からスライダー、肩のパッドまですべて変えられるので、アクセサリー感覚でストラップをカスタマイズできるようになります。パーツは一つを変えるだけでも音が変わるんですよ。例えば紐を3ミリから2ミリに変えるだけでも全然違う。紐が細いほうが遠鳴りして、太い紐はパワーがあって側でしっかり鳴ってくれます。でも一番のポイントは“消耗品じゃない”ことですね。基本的なモデルを買えば、例えばフックや紐が傷んでもそれだけ交換できます。パッドが気に入らないとか、もっと伸びるタイプが良かったと思ったら、買い足せばいいだけです。
また、カラーバリエーションもサックス用と同じ13色にしようと思います。紐やスライダーも色を選べるので、ステージの衣装に合わせて付け替えることも可能です。今日の衣装は何にしようとか頑張って考えるのに、ストラップが黒しかないってイヤじゃないですか。ステージに上がるからにはやっぱり見た目にもこだわりたい。
田中
クラリネットは楽器が黒いし、なにかと地味だとか言われるんだけど、でもそれは違うんじゃない?って思うよね。
あとは、学生用の廉価モデルも試作しています。スライダーやパッドの素材を変更して、価格としても今の半分くらいで買えるように。日本の学生の練習量は相当で、まだ未熟なからだへの負担も大きいから、やっぱり学生さんに使ってもらいたいです。同時に楽器側に取り付けるアダプターも、各メーカーで使える3タイプくらいにして、500円前後で販売したいと考えてます。
田中
そしたら一気に普及するんじゃない? 「すぐに買う!」っていう学生はかなりいると思うよ。
田中正敏 タツミ楽器代表取締役 巽朗のインタビュー
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最後にストラップを検討中の方に向けてアドバイスを一言。
田中
ちょっと苦労していることがあったら「まずは使ってみては?」と思います。もちろんすぐに答えは出ないですけど。でも戻れなくなることを怖がるよりも、とりあえずやってみたら道は開けるんじゃないかと思いますよ。

Bird Strap

クラリネット用ストラップ BS-CL-PRO
クラリネット用リング付きサムレスト BS-RTR001
問い合わせ先
株式会社タツミ楽器 大阪営業所 B.AIR事業部
☎06-6711-0770

 

 

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