Wood Stoneリガチャー×赤坂達三
人気、実力を兼ね備えたクラリネット界随一のスタープレイヤーである赤坂達三氏が長年愛用するリガチャー、それが石森管楽器のWood Stoneリガチャーだ。Wood Stoneリガチャーが赤坂氏のみならず、魅力的な音色と確かな品質を認められて多くのクラリネットプレイヤーに使用されていることは周知の事実だろう。今回は石森管楽器の協力により、なんと赤坂氏とともにWood Stoneリガチャーが製作される工房への潜入取材が実現! このページではリガチャーの製作工程をご紹介しよう。
赤坂達三が石森管楽器工房に潜入
Wood Stoneリガチャーはこうやってでき上がる!
赤坂:25年以上使用しているWood Stoneリガチャーの製造過程が見られるとのことで、今日はとても楽しみにしていました。
案内をしてくれたのは……
石森管楽器 店長 石森信二氏
石森管楽器 Wood Stoneリガチャー Standardモデル
素材に銅または銀無垢を使用したオリジナルリガチャー。ボリュームの大きさとレスポンスの速さを併せ持ち、重厚ながらも柔らかく伸びのある音色が得られる。2本のレールでリードを固定し、リードからリガチャーを離すことによってリード本来の振動を活かすことができる。長く使用できるようにネジ1本1本にもこだわりを持ち、鋳物ではなく削り出しで製作、中央にリングを設けることで強度を上げている。
製造工程その①
型抜き
まずは金属の板からリガチャーの形になるように型抜きをします。その型抜きをした板を火であぶり、焼きなましをします。
型抜きしたばかりの状態。焼きなましをすると下のような色に変色する
熱を加えると金属は柔らかくなるので、ここで丸く加工します。
製造工程その②
リングのテーパー加工
あらかじめ熱処理した洋白のリングを叩き、マウスピースにフィットするような形に加工します。
製造工程その③
ろう付け
「たわら」と呼んでいるネジが入る部分、そしてリングをろう付けします。ろう付けは、フラックスという溶液を使いながら加熱することで、銀の合金を流し込む作業です。はんだ付けと似ているように思われがちですが、かなりの熟練が求められる工程です。特にリングは熱で引っ張られてずれやすいので難しいですね。
製作工程その④
バフがけ
液体で汚れを落とした後に、高速回転するバフ(羽布)を使い磨きます。汚れを残したままだと綺麗に溶接できないので、工程ごとにトータルで5回ほどバフがけを行ないます。
製作工程その⑤
刻印を入れる
刻印を手作業で入れていきます。
製作工程その⑥
カットして開き、レールをつける
少し意外に感じられるかもしれませんが、 ここまでやってからカットして手で開きます。
開いた状態のリガチャー
そしてレールをつけます。ここは大掛かりな工具を使用する一番重要な工程なのですが、詳細は企業秘密です。
製作工程その⑦
最終チェック
最後に形を整え、ネジをつけて最終チェックを行ないます。もちろん工程ごとに傷なども含めてチェックも行ないますが、最終的なチェックはこのように1個1個手作業でテスト用のマウスピースにはめながら行ないます。
決まった形状になっているか、最後は職人の経験が絶対必要になりますね。 最後にメッキをかけて完成となります。
総銀製も基本的な工程は同じですが、熱の入り方が通常のものとは異なるので、 製作時により神経を使いますね。
見学を終えて......
感動しました。工程に無駄がなく、非常に洗練されていますね。そして熟練した職人たちの手作業が必ずどの工程にも生かされています。だからこそWood Stoneリガチャーもバラつきが少なく、無駄のない美しいものに仕上がるのだな、と納得がいきました。
The Clarinet vol.63の誌面ではさらにインタビューも掲載中。赤坂氏がWood Stoneリガチャーの魅力を大いに語り尽くします!