平和に向けた映画音楽のアプローチをしよう!
コロナも終わらないうちに、さらなる危機的な時期に突入した。
ウクライナに侵攻した恐るべきニュースが日々、伝えられる。
映画「ひまわり」(1970,伊、仏、ソ、米)の一面に咲きほこった美しいひまわり畑が目に浮かんだが、今なんともいえない喪失感に襲われる。
初公開から、もう50年以上になる作品だが、誰もが忘れないまま昨年はレストア版(復元)としても公開されたばかり。
映画音楽の魅力もあり、永遠の名作としてさらに、語り継がれていく。
そもそも、私より上の世代の公開作品だから、今の時代の若者は、作品そのものを見たことがないという人も多いだろう。
しかしヘンリー・マンシーニが担当したテーマ曲を演奏家として、知らない人は少ないのではないか。
男女の心の切なさを底深く表現した映像と音楽の見事なシーン。
この曲を聴いただけで、涙が止まらない気持ちがわかる。
さらにいま、その悲しみが増幅される。
ウクライナ、キエフから南へ500キロのへルソン州。
現代も7月ごろに、映画のシーンとおなじ広大なひまわり畑が見られるという。
それが、再度戦地と化してしまうとは、もう、切ないどころではない。
映画は第二次大戦終結後のイタリア。出征した夫の行方を捜すイタリア娘(ソフィア・ローレン)が主人公だ。
ソ連戦線に送られたまま、待ち続けても帰らない夫(マルチェロ・マストロヤンニ)は、どこにいるのか?
消息を求めて、ソ連に旅立つが、そこに待ち受けていた真実とは?
イタリア軍が戦った南部ウクライナのひまわり畑の下には、多くの兵士たちの魂が眠っている。
そうした歴史的背景のある国だから、こんな時期にも自国に戻り、自らの手で武器を持って戦おうとする人々が、存在するのだろう。
もうひとつ、ウクライナを舞台にした映画は「屋根の上のバイオリン弾き」(1971年、米)がある。
多くのジャンルでノミネートされたアカデミー賞では、音楽と音響で受賞した。
ジョン・ウィリアムスの編曲とアイザック・スターンのバイオリン独奏が秀逸だ。
ブロードウェミュージカルにした段階で、原作「牛乳屋テヴィエ」は、シャガールの一枚の絵からヒントを得たタイトル「屋根の上のバイオリン弾き」に変更された。
このタイトルは、家庭内のドタバタから厳しい社会背景の中、ひたすらその光景を見つめながら、バイオリンを弾き続ける演奏者のスタンスを表している。
これが、演奏者の戦い方なのだろうか。
ヒントとなった前衛画家のマルク・シャガールは、ロシア系ユダヤ人だ。
本作は、帝政ローマ時代、暴君ネロによるユダヤ迫害の物語だが、現代もなお、ユダヤ人問題をはさむ映画は終わらない。
ユダヤ人に対して行う集団的迫害行為をロシア語で“ポグロム”というが標的とされた人々に対する暴力や殺戮を行なうことをいう。
ちなみに、現ウクライナ政権の大統領ゼレンスキーは、ユダヤ人である。
プーチン大統領が標的とするのは、「自分とその家族」だと明確に言った。
なぜ、いま侵攻が始まったのか?
政治的な理由は数々説明されているが、明確なものがつかめない。
そうしたなかで、音楽家は何ができるのか?
映画「ひまわり」のテーマ曲を演奏する動画をSNSで投稿したらどうだろうか?
映画「屋根の上のバイオリン弾き」を各自の楽器で、独奏したらどうだろうか?
私は、多くの音楽的アプローチに期待したい。
MOVIE Information
「ひまわり」
(1970,伊、仏、ソ、米)
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ、ソフィア・ローレン、リュドミラ・サベーリエワ
「屋根の上のバイオリン弾き」
(1971年、米)
監督:ノーマン・ジュイソン
出演:トポル、ノーマ・クレーン 、レナード・フレイ
ウクライナのひまわり畑が一面に広がるシーンでおなじみの
映画「ひまわり」(1970,米ソ仏伊)よりエンディング曲をお聞きください。
↓緊急演奏を動画でいただきました。
さかはし矢波(フルート)
戸野塚久美子(ピアノ)
#PrayingForUkraine
木村奈保子
作家、映画評論家、映像制作者、映画音楽コンサートプロデューサー
NAHOKバッグデザイナー、ヒーローインターナショナル株式会社代表取締役
www.kimuranahoko.com
N A H O K Information
木村奈保子さんがプロデュースする“NAHOK”は、欧州製特殊ファブリックによる「防水」「温度調整」「衝撃吸収」機能の楽器ケースで、世界第一線の演奏家から愛好家まで広く愛用されています。
Made in Japan / Fabric from Germany
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