クラリネット記事 バスクラリネット奏者・八巻志帆のヨーロッパからの音便り 第1回
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バスクラリネット奏者・八巻志帆のヨーロッパからの音便り 第1回

はじめましての方もそうでない方も、こんにちは! バスクラリネット吹きの八巻志帆です。2018年11月にドイツ・ミュンヘンへ引越し、約8ヶ月。私のドイツでの生活を皆さんにシェアさせていただけることになりました! ドイツを中心としたヨーロッパのことを書いていきたいと思います。ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。

八巻志帆,ドイツ留学
ミュンヘンの中心・Marienplatzの新市庁舎

じゃんけんの負けから始まったバスクラとの生活

まずは、八巻志帆って誰? 何をしている人なの? という方がたくさんいらっしゃると思いますので、簡単に自己紹介をさせてください。
杜の都・楽都(音楽の都)として知られる宮城県仙台市に生まれ、すくすく育つ。当時のペットは亀。中学校で吹奏楽部に入部し、じゃんけんとくじ引きで2度負け、バスクラリネットを手にします。
自宅でオーケストラを聴いたりしていたものの、バスクラリネットを知らなかった私。フルートかオーボエを希望して入部した私に差し出されたのは、かなりシンプルな造りの、緑青(錆び)だらけの渋い楽器……。その楽器が好きかどうか、しばらく分かりませんでした。聴いていて心地良いかどうかも。吹奏楽部で渡されるバスクラリネットの楽譜の中には、たまにとても魅力的なフレーズが出てきますが、多くは他の低音楽器にかき消されそうなベースパート。
何も分からないながらに初めてのアンサンブルコンテストでクラリネットアンサンブルの魅力に気付いたり「クラリネット名曲31選」の楽譜を買って『椿姫』や『G線上のアリア』を吹いたりしていました。それでもまだバスクラリネットが心から好きだとは思えないまま、いつの間にか高校生になります。

八巻志帆,ドイツ留学
6月6日、ミュンヘンでの初めてのリーダーライブにて。オーディエンスは初めて聴く日本人のミュージシャンに対してもポジティブに心を開いて聴いてくれた。どこの会場でもこのような嬉しい空気がある

バスクラリネットの魅力

高校は地元の進学校へ。勉強もしないといけないし、部活も頑張らないといけないし、人は大勢いるわで、今思うと大変暗い気持ちで過ごしていたように思います。23人もいるクラリネットパートでの練習は耳がおかしくなりそうで、できるだけ1人の時間を増やすために朝練を始めます。朝早くに1人で呼吸法をしたり、ゆっくりロングトーンをするのはとても良い時間でした。1人で吹きながら「音が響くってこういうことかな。共鳴するって何かな」と、漠然と考える時間が増えました。そんな頃、後に師事する先生のお一人である福井聡先生が仙台にバスクラリネットの講習会をしに来られていたことを知ります。ちょうどテスト期間で講習を受けることは叶わなかったのですが、仙台のサンリツ楽器さんには珍しくバスクラリネットのCDが揃い、Josef Horák氏やJan Guns氏、そして福井先生のCDに出会います。バスクラリネットという楽器のために書かれた曲があるだなんて! 初めて手にしたバスクラリネットのためのソロピースは、Otmar Schoeckの『ソナタ』。なんて甘くて魅力的な音のする楽器なんだろうと、初めて心から思えた瞬間かもしれません。

その後、教育大学をバスクラリネットで受験しようと考えるも、当時の私の志望校はバスクラリネットでの受験は認められておらず、途方に暮れます。そんな中、たまたま吹奏楽部のコンクール指導で教えに来てくださった藤井一男先生から、「大阪の大学に日本で最初のバスクラリネット専攻を創るから、君、来ないか?」とのご連絡をいただくのです。
のんびり仙台での暮らしから、歩くのも話すのも早い大阪へ。
大学在学時はオーケストラや室内楽、新曲初演、初めてのCDリリースなど、たくさん勉強をさせていただき、私の興味も、クラシックから舞台芸術、世界のトラディショナルミュージック、ヨーロピアンジャズ、コンテンポラリー、そして自分の作品作りへと広がっていきました。

八巻志帆,ドイツ留学
Michael Riessler氏と、彼の生徒であり良き友人のCameron Vohr氏。Cameronの卒業コンサートのリハーサルにて。彼のプログラムは1時間のテナーサクソフォンソロ。もちろん即興演奏
八巻志帆,ドイツ留学
卒業コンサートの会場のひとつ。なんと元はビール工場の貯蔵庫だったそう。同じ建物内には、3つのホール、ミュンヘンで一番大きいジャズクラブ・Unterfahrtが入っている

ドイツへ渡る2ヶ月前に全曲オリジナルの3rdアルバムをリリースし、そのインタビュー記事もThe Clarinetさんに載せていただいています。(バックナンバーはこちら https://www.alsoj.net/store/view/C68.html

CONTENTS
・31歳での海外移住
・なんでドイツに?
・ドイツへ渡るビザ
・ミュンヘンに来てから

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八巻 志帆 Shiho Yamaki 
宮城県仙台市出身。相愛大学音楽学部音楽学科にバスクラリネット専攻の一期生として入学。在学中より、初演演奏やリサイタル開催など積極的に演奏活動を行なう。2009年初夏に1stソロアルバム『Bassclarinet Recital』をコジマ録音よりリリースし、発売記念リサイタルを行なう。バスクラリネットを副島謙二、藤井一男、福井聡の各氏に、クラリネットを藤井一男、福井聡、金井信之の各氏に、2013年よりジャズを鈴木孝紀氏に師事。また、故浜中浩一、ヤン・ギュンス、サウロ・ベルティの各氏のマスタークラスを受講。2014年3月、代表を務めるMilfy Clarinet Ensembleで参加したクラリネット協会アンサンブルコンクール(於:パルテノン多摩)で2位を受賞。2014年12月、2ndソロアルバム『My Sweet Hometown』を発売し、3都市での発売記念イベントを成功させる。ジャンルに捉われないソロバスクラリネットの世界の確立を目標に、作編曲・オリジナル作品の研究のほか、様々なジャンルのアーティストと共演を重ねている。

次回更新: 隔月・奇数月の1日頃に更新します。お楽しみに!

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