クラリネットで繋がった日本との縁
東京交響楽団の首席クラリネット奏者を務めるフランス出身のクラリネット奏者、エマニュエル・ヌヴー氏のインタビューが実現。長く日本に住むからこそわかるフランスとの文化の違い、そして同じくクラリネット奏者であり、パートナーでもある郡尚恵さんと二人三脚で歩む日本でのクラリネットライフを大いに語ってもらった。
写真:橋本タカキ 取材協力:東京交響楽団、株式会社 ビュッフェ・クランポン・ジャパン
リトミックはストラヴィンスキーで!?
コンチェルトも何度か同楽団と共演しています。2年前にポーランド人の指揮者、クシシュトフ・ウルバンスキと演奏したモーツァルトの『クラリネット協奏曲』も思い出深いですし、2011年に本拠地、ミューザ川崎が被災した時にテアトロ・ジーリオ・ショウワで演奏したウェーバーの『クラリネット協奏曲第1番』も忘れられません。
震災の直後にホール内の様子を見せてもらいましたが、いつも自分が休憩時間に座っているホールの席に壁や天井が落ちて来ていて、悲惨な現状を目の当たりにして言葉を失いました。それから約2年間ホールの復活を待ちながら、色々な場所でリハーサルや公演を行ないました。
ロビーコンサートやピアノのないところで演奏するための二重奏の楽譜も見つけたり、アレンジしたりしています。定番のプーランクやメンデルスゾーン、クロンマーに加え、ヴィヴァルディやバッハ、フルートやトランペット2本の楽譜を使ったり、三浦真理さんの合唱曲を使ったり、開拓のしがいがあります。クラリネットが2本あればなんでもできますね。可能性が豊かです。
夫婦で同じ楽器と言えば、この度、田中香織さんとマルコス・ ペレス・ミランダさん夫妻と「22」という四重奏のコンサートをやることになりました。「22」は夫婦から名付けました。近いうちに日程も決まると思います。
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・楽器をそろえるのではなく、音楽をそろえる
・フランスと日本の音楽教育
・表現するためには、まずテクニックから
Emmanuel Neveu エマニュエル・ヌヴー
フランス、ルーアン市生まれ。10歳よりクラリネットを始める。パリ国立高等音楽院、フランス国立ルーアン音楽院、リュエイユ・マルメゾン音楽院卒業。2000年日本クラリネットコンクール第1位などの受賞歴がある。2002年より、東京交響楽団首席クラリネット奏者。2011年、名曲シリーズにてウェーバ作曲クラリネット協奏曲第1番、2014年オペラシティーシリーズにて藤倉大作曲「Mina」、2015年モーツァルトマチネシリーズにてモーツァルト作曲クラリネット協奏曲を東京交響楽団と共演。国立音楽大学、洗足学園音楽大学、尚美ミュージックカレッジ専門学校講師。ビュッフェ・グループ・ジャパン専属講師。クラリネット四重奏団「22」メンバー。クラリネットをM・エルマカスター、P・ルビドワ、A・ダミアン、F・エオ、M・アリニョンの各氏に師事。バスクラリネットをJ・N・クロック氏に師事。室内楽をM・ブルグに師事。
郡 尚恵 Hisae Kori
北星学園女子高等学校音楽科、国立音楽大学、桐朋学園大学研究科を経て、渡仏。パリ・エコール・ノルマル音楽院、フランス国立リュエイユ・マルメゾン音楽院を卒業。1994年、日本演奏家連盟主催、新人演奏会に出演。1998年、第15回、日本管打楽器コンクールクラリネット部門第二位。1999年、第10回、日本木管コンクールクラリネット部門入選。1998 ~ 2000年、パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)のオーディションに合格し、アカデミー生として参加。2005年、東京文化会館にて、2006年、札幌コンサートホールにて「クラリネット・デュオ・リサイタル」を行ない、好評を博す。ビュッフェ・グループ・ジャパン専属講師。クラリネット四重奏団「22」メンバー。指導力にも定評があり、全国各地で講習会を行なっている。