時を経てから自分で聴き返しても新鮮に楽しむことができる
ヴロツワフ音楽アカデミーでクラリネットを学び、その後パリ国立高等音楽院でギイ・ダンガン氏に師事。現在は演奏活動の傍らヴロツワフ音楽アカデミーでクラリネットと室内楽を教え、さらにヴロツワフのクラリネットフェスティバル「クラリマニア」の芸術監督も務めるなど多方面で活躍しているのがポーランドを代表するクラリネット奏者のヤン・ヤクブ・ボクン氏。ニューアルバムではギター奏者ヤクブ・コシチュシコ氏とのデュオでクラリネットの新たな可能性を広げている。そのデュオによるリサイタルのために来日したボクン氏に、3年ぶりのインタビューを敢行した。
通訳・文:クラリネット奏者・横田揺子 写真:土居政則 協力:ヤマハ株式会社、株式会社ヤマハミュージックジャパン
何かが心に引っかかりクラリネットを手に
私自身は8歳の時にピアノ専攻として音楽学校に通い始めました。3年後、第2専攻楽器を選ぶことができるのですが、当時はギターを希望していました。でも音楽主任教師からオーボエをやるように勧められました。彼女の旦那さんがオーボエ奏者だったのです。オーボエの先生に会い、先生の吹く『白鳥の湖』のソロを聴いて、その美しい音色に心を打たれオーボエを第2専攻楽器として選択しました。そして休暇になり、オランダ人で建築家の叔父がポーランドにやってきました。この叔父は、音楽的才能に恵まれた人物でピアノも弾くしサックスも吹く……そしてクラリネットを習い始めようとしていて買った楽器を見せてくれたのです。私たちの前で音を出そうと頑張るのですが、ピーピーキャーキャー……絶望的にひどい音色です。そんな想像を絶する演奏ながらも、何かが心に引っかかりました。もちろん、その“音色”ではなく“楽器”に対してです。休暇が終わり学校が始まった時、「やっぱりオーボエではなくクラリネットにする」と先生に伝え現在に至っています。いま考えても、どうしてあの時クラリネットにあれだけの魅力を感じたのか……自分でもよくわかりません。
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・管楽器の新しい伝統を発信する「クラリマニア」
・最新CDはクラリネットとギターのデュオ
・情熱と精神をも示してくれる愛器Ideal G
・技術があってからレパートリーが演奏可能になる
Jan Jakub Bokun ヤン・ヤクブ・ボクン
ヨーロッパを中心に活躍しているポーランドを代表するクラリネット奏者であり、指揮者。ヴロツワフ音楽アカデミーでクラリネットを学び、その後パリ国立高等音楽院でギイ・ダンガンに師事する。ポーランドの数々のクラリネットコンクールではソロ部門と室内楽部門でそれぞれ受賞している。Koch Classics、JB record、DUXなどから10枚のソロアルバムをリリース。現在、演奏活動の傍らヴロツワフ音楽アカデミーでクラリネットと室内楽を教え、また、ヴロツワフのクラリネットフェスティバル「クラリマニア」の芸術監督であり、国際クラリネット協会のチェアーマンを務めている。2001年に南カリフォルニア大学で指揮の修士号を取得。アスペン音楽祭で奨学金を得て、スイスのヴェルビエ・アカデミーでクルト・マズアー、ジャームス・レヴァインに師事。ポーランドの第3回ヴィトールド・ルトスワフスキー指揮者コンクールで優勝し、またオーケストラ賞を獲得している。
CD Information
ヤン・ヤクブ・ボクン&ヤクブ・コシチュシコ
【JBR017】マーキュリー
[価格]¥2,900
[演奏]ヤン・ヤクブ・ボクン(Cl)、ヤクブ・コシチュシコ(Guit)
[収録曲]J.S.バッハ:アリオーゾ、F.シューベルト:アルペッジョーネ・ソナタ D.821〜アレグロ・モデラート〜アダージョ〜アレグレット、C.ドビュッシー:アラベスク 第1番〜、P.スムットニー:ドロール・アモーリス、P.シェプチック:JJB、ヨム:モーゼ、ヨム:子供の夢、D.パイジェーク:イット・ゲッツ・ワース