同じ曲でもいろいろな表現の可能性があり、音楽を固定してはいけない
現在、パリ・オペラ座管弦楽団(パリ国立歌劇場管弦楽団)のソロ奏者、そしてパリ12区立音楽院やヴェルサイユ地方音楽院で教授を務めているアレクサンドル・シャボ氏が本誌初登場です。
8月2日〜9日に開催されたBCJクラリネット・アカデミー2018の講師として来日したときにインタビューを敢行しました。古典クラリネットでの演奏活動、さらに現代音楽の演奏にも熱心な同氏のクラリネット人生に迫ります。
取材協力:株式会社 ビュッフェ・クランポン・ジャパン 撮影:橋本タカキ 通訳:檀野直子
アリニョン氏に習えたことは幸運だった
その後、父の仕事の関係でノルマンディー地方に引っ越しました。ここでパリ室内管弦楽団クラリネット奏者のジャン=クロード・ブリオン氏に師事し、パリ国立高等音楽院に入学できるようになるまで私を成長させてくれたのです。多くの学生は地域圏立音楽院やパリ市内の区立音楽院などの出身でしたが、私は田舎の音楽院から直接パリ国立高等音楽院に入学しました。ミシェル・アリニョン氏のクラスに入ったときは17歳でした。
アリニョン氏はご存じの通り、とても素晴らしいクラリネット奏者ですが、特に音楽で物語を語ることのできる演奏家です。その語りのセンスは群を抜いています。多くのクラリネット奏者や演奏家がいますが、楽器と音楽によって何かを演じることができる人は稀です。ですから、カリスマ性があり、教育者としても優れ、その上音楽で語ることができるアリニョン氏に習えたことは大変幸運だったと思います。
また、私はいつもゆっくり練習します。体を硬くしたり緊張させることなく、落ち着いてやります。そして、練習のときから音楽的な表現を考えています。指の動きを覚えるために機械的な練習をすることは一切ありません。いつも音楽的なアイデアを持っています。音楽的なアイデアと技術的なアイデアを同時に使い、練習をしています。
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・理想に近づくように毎日練習しています
・初めて買ってもらったのがビュッフェ・クランポン
Alexandre Chabod アレクサンドル・シャボ
7歳からクラリネットを始める。パリ国立高等音楽院に入学後はミシェル・アリニョンに師事し、1996年、同校クラリネット科をプルミエ・プリ(一等賞)で卒業。翌年、室内楽修士課程修了(モーリス・ブルグに師事)。審査委員会では全会一致でプルミエ・プリを得る。その後はポール・メイエ、エリック・ル・サージュの下で学ぶ。トゥーロン国際音楽コンクールでの入賞を始め、パリUFAM国際音楽コンクール(第3位)、ジャン・フランセ国際音楽コンクール(第2位)など多くの国際コンクールで入賞。パリ国立高等音楽院卒業後、同校の上級過程〈Cycle de perfectionnement〉でさらに研鑽を積む。
1999年、ソリストとしてグルノーブル・ルーヴル宮音楽隊へ参加。2010年からはエマニュエル・クリヴィヌが指揮する古楽器オーケストラ「ラ・シャンブル・フィラルモニーク」のソリストを務める。その他、最近の活動としては、古典クラリネットと現代クラリネットによる室内楽コンサートを開催し、一流奏者と共演。また現代音楽の演奏にも熱心で、多くの作曲家の現代音楽作品を初演し、またレコーディングも行なっている。
フランス国内外で定期的にマスタークラスおよびリサイタルを行ない、これまでにニューヨーク、台北、フランス各地の地方音楽院などを訪れている。現在、パリ地方音楽院及びヴェルサイユ地方音楽院で教授を務める。「クワチュオール・ヴァンドーム」メンバー。ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団で8年間ソリストとして活躍した後、2004年からはパリ・オペラ座管弦楽団(パリ国立歌劇場管弦楽団)でクラリネットソロ奏者を務める。