演奏で一番大事なのは音色、次にフレーズ感 「技術の素晴らしさ」その先に……
ベルギーのオーケストラで2017年までの約20年間にわたり首席奏者を務め、マーストリヒト音楽院(オランダ)とルーヴァンLUCA芸術高等学校(ベルギー)にて後進の指導を行なっているルーランド・ヘンドリックス氏が本誌初登場。2018年10月には、マルティン・ブラビンスの指揮するロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とともに、モーツァルト、フィンジ、ブルッフのクラリネット協奏曲を録音したCDをリリースするなど、国内外を問わず幅広く活躍されている同氏のクラリネット人生に迫った。
取材協力:野中貿易株式会社 撮影:いしかわみちこ 通訳:高橋康子(デュオ・アギネコ)
父がアマチュア吹奏楽団のサクソフォン奏者
私は8歳のときに街の音楽教室に入り、最初の2年ほどは理論的なことや、楽譜の読み方などを勉強して、10歳か11歳のときにクラリネットを吹き始めました。私としてはフルートでもサクソフォンでもどんな楽器でもよかったのですが、父の楽団ではクラリネット奏者が圧倒的に不足していたのでクラリネットを吹くことにしました。
私の先生が音階練習に厳しかったこともあり、とても効果があり、重要だったのは、クローゼの「クラリネットのための日課練習」や、ドゥレクリューズ「20の易しい練習曲」といったエチュードです。
演奏する場所もオペラはブリュッセルにある歌劇場の王立モネ劇場と決まっていますが、ベルギー国立管弦楽団はブリュッセルにあるBOZAR(ボザール)という有名なホールを拠点としています。しかし、BOZARがベルギー国立管弦楽団に属しているわけではありませんので、3回に1回の割合で演奏していました。このBOZARは、エリザベート王妃国際音楽コンクールの本選の会場としても有名で、ベルギー国立管弦楽団が同コンクールの本選で伴奏を担当することもありました。
それぞれのレパートリーに関しては、もちろんモネ王立歌劇場管弦楽団はオペラ全般ですが、1つに絞らずいろいろな曲に挑戦しました。新曲も数多く演奏しています。
一方、ベルギー国立管弦楽団は歴史的な背景もあり、ドイツ系よりもフランス系のものを多く演奏していました。
>>次のページに続く
・生徒が気持ちよくレッスンを受けられることが大事
・セルマーの深く温かい音に感銘を受ける
Roeland Hendrikx ルーランド・ヘンドリックス
ベルギー国立管弦楽団とモネ王立歌劇場管弦楽団において2017年までの約20年間にわたり首席奏者を務め、マーストリヒト音楽院(オランダ)とルーヴァンLUCA芸術高等学校(ベルギー)で後進の指導を行なっている。室内楽活動も活発に行なっており、彼を中心としたグループ「ルーランド・ヘンドリックス・アンサンブル」を2015年に立ち上げた。
2018年4月にはロンドンの有名なヘンリー・ウッド・ホールにおいて、マルティン・ブラビンスの指揮するロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とモーツァルト、フィンジ、ブルッフ(クラリネットとヴィオラのための「二重協奏曲」。ベルギー人ヴィオラ奏者サンダー・ヘールツと共演)のクラリネット協奏曲を録音し、このCDは2018年10月にEvil Penguin Records Classic社よりリリース。