アントニオ・サイオテ ― ポルトガル・クラリネット界の巨匠
ポルトガル・ポルト工科大学の教授として国内で数多の学生を導き、指揮者としても世界各国で絶大な評価を受け、さらにはポルトガルクラリネット協会会長の立場からポルトガルでのクラリネット普及・推進に尽力をし、もちろんクラリネット奏者としても一流…… 何足ものわらじを履き、そのいずれにおいても高い功績を残している才人、アントニオ・サイオテ氏がThe Clarinet ONLINEに初めて登場してくれた。
ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクールの審査員としての来日で、大変忙しい中でも快くインタビューに応じてくれたサイオテ氏に、ポルトガルにおけるクラリネットのお話やご自身の生い立ち、指導をする際の矜持などを大いに語っていただいた。
吹奏楽におけるクラリネットは——
(以下サイオテ)
クラリネットを始めたのは、父や祖父がそうだったからというのもありますが、他に理由があります。
日本でも同じかと思いますが、吹奏楽のクラリネットには大切な役目が多いですよね。当時はオペラや管弦楽曲などのアレンジものを演奏していましたが、クラリネットはたいていバイオリンのパートを担当することになります。そうなると、クラリネットは才能がありそうな人にやってほしいと思われるのです。耳がよくてちゃんと聴くことができる、リズム感に優れている、などですね。そうした理由で、私はクラリネット奏者になりました。
また、クラリネットはポルトガルでは本当にたくさんの人に演奏されており、人気がありますが、これもやはり吹奏楽の歴史が根付いているからです。私は、ポルトガルにおける最初のクラリネット協会を作り、2009年にはポルトガルで世界規模のクラリネットフェスティバルを開催しました。そうして今では、クラリネットに関わるさまざまな催しやコンクールが開催され、他の楽器が真似をするまでになっています。
今ではポルトガルにはたくさんの音楽家がいて、ヨーロッパで精力的に活躍しています。
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・偉大なる音楽家、ジャック・ランスロ
・聴衆の心に届く音楽を
・人と関わり、音楽を共有すること
・音楽をする意義、とは
アントニオ・サイオテ Antonio Saiote
ポルトガル出身、リスボンの国立音楽院で学んだのち渡仏。パリでG.ドゥプリュとJ.ランスロに師事。ミュンヘン音楽大学ではG.シュタルケに師事し、ディプロマを取得。カロル・クルピンスキコンクール(ポーランド)入賞、 Arts et Ideesコンクール優勝、New Values of Cultureコンクール優勝。 ポルトガル国内にとどまらず、欧米アジアの様々なオーケストラにソリストとして招かれており、またポルトガル・クラリネット・アンサンブルのディレクターをつとめる。室内楽ではピアニストのペドロ・ブルメスターとデュオを組み活動。 ポルトガルの作曲家の作品ほか世界初演曲も多く、またL.ベリオ、L.パヴァロッティ、K.ライスターなどから賞賛を送られている。 1998年以降は指揮者としても活動し、ポルトガル国内のすべてのオーケストラ、スペイン・ベネズエラ・フランス・ドイツのオーケストラを指揮した。バーデン・ヴュルテンブルクのオーケストラのアシスタント・コンダクターとして、指揮者ニコラ・パスケと共に活動。すでにユース・シンフォニー・オーケストラ、インヴィクタ・オーケストラ、ポルト国立オーケストラ、ポルトガル交響楽団、ESMAE交響楽団、ベイラス・フィルハーモニーを指揮。「優れたクラリネット奏者は優れた指揮者にもなり得ることを証明」と評されている。 ドイツ、ブラジル、チリ、ポーランド、フランス、中国、マカオ、ベルギー、ハンガリー、インド、スペインでマスタークラスを開催。セトゥーバル、ガイア、ヴァレンティーノ・ブッキ賞(ローマ)の審査員長、オクタブ・ポッパ、トゥーロン、セビリア・コンクールの審査員を務める。シモン・ボリバル・ユースオーケストラとは指導者、ソロイスト、指揮者としてしばしば協演し、アジア・欧米・北アフリカの30カ国以上で演奏・教育活動を実施している。現在、ESMAEでクラリネットの学位課程を指導し、また、ポルトガル・クラリネット協会の会長、ポルト・ソロイスツの芸術監督を務める。 アルゼンチン、ブラジル、チリ、ベルギー、フランス、ドイツ、イギリス、中国、インド、アメリカなどでのコンサートは熱狂的な評価を得ている。