フルート記事 トーマ・プレヴォ テーマは“歌” ーーリリカルな響きに耳を傾けて
  フルート記事 トーマ・プレヴォ テーマは“歌” ーーリリカルな響きに耳を傾けて
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THE FLUTE vol.173 close up

トーマ・プレヴォ テーマは“歌” ーーリリカルな響きに耳を傾けて

ARTIST

1976年以来、フランス国立放送フィルの首席フルート奏者を務める名手、トーマ・プレヴォ氏。パリのエコール・ノルマル音楽院で後進を育てるかたわら、日本でも石見銀山国際音楽アカデミー創設者の一人として、次世代の育成に力を注ぐ。様々な“縁”に導かれた現在の活動のこと、そしてこのたびリリースした初のソロアルバムについて……勉強し始めたばかりという日本語を交えて、語ってくれた。

1976年以来、フランス国立放送フィルの首席フルート奏者を務める名手、トーマ・プレヴォ氏。パリのエコール・ノルマル音楽院で後進を育てるかたわら、日本でも石見銀山国際音楽アカデミー創設者の一人として、次世代の育成に力を注ぐ。様々な“縁”に導かれた現在の活動のこと、そしてこのたびリリースした初のソロアルバムについて……勉強し始めたばかりという日本語を交えて、語ってくれた。
通訳: 破魔澄子 取材協力: 株式会社キングインターナショナル

「素敵な曲があるから フルートで吹いてみよう」

今回リリースしたアルバムは、シューベルト、シューマン、R.シュトラウスという、ドイツロマン派の3人の作曲家を取り上げていますね。彼らの作品を録音しようと思ったきっかけは 何ですか?
プレヴォ
どの曲も、テーマは “歌”です。一つひとつは歌曲ではありませんが、ドイツ歌曲の雰囲気を持った3作品を並べて1つの曲集に仕上げました。リリカルなアルバムにしたかったんです。
シューマンの『3つのロマンス』は、もともとオーボエとピアノのための曲ですね。
プレヴォ
オーボエのために書かれてはいますけれど、オーボエだけに吹かせておくのはもったいない素晴らしい曲なんですよ。フルートのほかクラリネットで吹いても、他のどの楽器で演奏してもどれもいい……という感じです。「このオーボエの曲をやってみたい」ということではなく、「素敵な曲があるからフルートで吹いてみよう」と。  R.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタも、そうです。もう30年くらい、この曲をしょっちゅう吹いてきて……気に入っている曲はいっぱいあるけれど、中でもこの曲は“ベスト・オブ・ベスト”だったんです。かなりのエネルギーが必要な曲なので、今のうちに収録しておくのがそれこそベストかもしれない、という気持ちもありました。20年後くらいにやろうと思っても、おそらく厳しいでしょうから(笑)。
今回の収録は、プラハのボフスラフ・マルティヌー・ホールで行なわれたそうですが、プラハでレコーディングすることになったのは?
プレヴォ
ホールというのは、プラハ大学の音楽科の一角なんです。素晴らしく響きの良い場所で。とても広大なキャンパスの真ん中に位置していて、どこからもまったく雑音が入らないんです。音響効果も抜群でした。今回共演したピアニストのセケラさんがプラハ大学で教えていて、ぜひに、と紹介してくれました。建物自体もお城のような佇まいで、これまた素晴らしいピアノも2台置いてあって……チェコを代表する作曲家であるマルティヌーにちなんで、その名を冠しているようですね。
本誌でいま連載をしている、フィンダ・ピッコロでおなじみのスタニスラフ・フィンダさんもチェコのご出身ですが、親しくされているそうですね。
プレヴォ
そうなんです。ご存じの通り、音楽性のみならず、彼の楽器に関する知識と造詣は本当にずば抜けています。頼もしい存在ですよ。

 

次のページの項目
・世界遺産と町並みと音楽
・二人の師から受け取ったもの

 

CD information

thomas_cd
「シューベルト:『しぼめる花』の主題による序奏と変奏曲」
①シューベルト: 『しぼめる花』の主題による序奏と変奏曲 D 802, Op.160
②シューマン:3 つのロマンスOp.94
③リヒャルト・シュトラウス: フルート・ソナタ 変ホ長調Op.18 [原曲: ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調Op.18]
【演奏】トーマ・プレヴォ(Fl)、 ミロスラフ・セケラ(Pf)
【録音】2017年12月30, 31日、2018年1月1日  ボフスラフ・マルティヌー・ホール(プラハ)
KING INTERNATIONAL
KKC-061
オープン価格

 

Profile
 エマニュエル・パユ
トーマ・プレヴォ
Thomas Prevost
10歳から17歳までジュネーブ音楽院で学ぶ。アンドレ・ぺパンに師事。ジュネーブ音楽院からPrix de virtuosité を授与される。17歳でパリ国立高等音楽院入学、フルート科教授のジャン=ピエール・ランパルとアラン・マリオンに、室内楽をクリスチャン・ラルデに師事。パリ音楽院時代よりレナード・バーンスタインやカール・ベームなど巨匠たちの指揮で演奏。修士課程中に、ピエール・ブーレーズが結成したアンサンブル・アンテルコンタンポランにアラン・マリオンと共に首席フルート奏者に選ばれるが、その三週間後にフランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団から首席奏者としての指名を受け、ブーレーズからの強い説得を固辞して国立放送フィルに入団。ソリストとしても、フランス国立フィルハーモニー、モンテカルロ・オーケストラ、モントルーオーケストラ他数々のオーケストラとコンチェルトを共演している。ペーター・シュライアー、リリー・ラスキン、エマニエル・アックス、ヨーヨー・マ、パメラ・フランク等、多くの世界的音楽家たちとの共演で世界中で演奏活動を行なう。 日本でもこれまでに各地でのコンサートを行なっている。演奏においても指導や教育においても優れた人格者として各方面から尊敬を集めている。石見銀山国際音楽アカデミーの創設者の一人であり、共同代表およびフルートクラスの講師を務めている。
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