フルート記事 “音の裏側”を表現すること│中川昌三
  フルート記事 “音の裏側”を表現すること│中川昌三
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THE FLUTE vol.178 close up1

“音の裏側”を表現すること│中川昌三

ARTIST

ギターの小畑和彦、パーカッションの安井源之新両氏とのトリオとして結成されたFONTEの、4作目となるアルバム「MIKAZUKI」がリリースされた。中川自身が出演して話題になったCMで流れていたこの曲をあらためて聴き、青春時代のノスタルジーが溢れ出すファンもきっと多いに違いない。

ギターの小畑和彦、パーカッションの安井源之新両氏とのトリオとして結成されたFONTEの、4作目となるアルバム「MIKAZUKI」がリリースされた。実に8年ぶりの新作には、中川の代表作でもある88年のアルバム「タッチ・オブ・スプリング」に収録された『ヴァイオリン協奏曲ニ長調第1楽章』(チャイコフスキー)なども新たに収められる。中川自身が出演して話題になったCMで流れていたこの曲をあらためて聴き、青春時代のノスタルジーが溢れ出すファンもきっと多いに違いない。

人生最後の教師生活を大いに楽しむ

本誌は8年ぶりのご登場になります。いかがお過ごしでしたか?
中川
8年前というのは、東邦音楽大学の特任教授を務めていた時ですね。ちょうど還暦を迎えた頃から70歳まで、10年ほど勤めていました。人生最後の、そしてこんなに楽しい教師生活は初めて、というくらいに充実した日々でした。東邦音大には先生と生徒で結成したビッグバンドのサークルがあって「僕も参加させてください!」とお願いして、昔取った杵柄でテナーサックスを担当させてもらったんです。生徒たちと一緒に学園祭やらビッグバンドコンサートやら……いろいろなところで演奏して、定年まで本当に楽しませてもらいました。  
それと、この学校では学生たちに即興演奏の大切さを知ってもらおうと「即興講座」を開き、ピアノトリオを呼んでライブをやったり、木管クインテットと即興演奏したり……と、こちらもすごくいい思い出です。
先生がそこまで楽しんでいたのなら、生徒も楽しかったでしょうね。教える人も教わる人も楽しい音楽ライフなんて、本当に最高ですね! その後、教職を終えられた後にいろいろ手術をされたそうですが。
中川
70歳で学校を退職してすぐに、それまで手が付けられなかった白内障、心臓、鼻骨矯正と、たて続けに手術を敢行しました。おかげで調子が良くなって、今までやりたかったライブ活動も15年ぶりに再開したのですが……
そのタイミングで、コロナ騒動が持ち上がったのですね。
中川
ちょうど「MIKAZUKI」の録音に入ったところでした。持病があるので、レコーディング後は仕事を全部ストップして、隠遁生活を送っています。僕の仲間も皆仕事がストップしてしまって、この業界は本当に大変なことになってますね……。  
手術前は本当に体がしんどくて、1年くらい笛が吹けませんでした。フルートの吹き方を忘れてしまったような状態で、「あれっ、どうやって吹いていたっけ……?」というような。そんなふうでしたから、正直、FONTEはやめるつもりでいました。
しかしそこからニューアルバムのレコーディングが実現して、またこうやってFONTEが復活したと。どんな経緯があったのですか?
中川
パーカッション兼プロデューサー的存在の安井源之新君があちこち奔走してくれたことや、エグゼクティブプロデューサーの石塚久美子さんからいろいろな面で支援をしていただいたことも、大きかったですね。それから、ギタリストで作曲家でもある小畑君が、いつも素敵な曲をいっぱい書いてくれるんです。本当に3人には感謝しかないです。

 

次のページの項目
・往年の名曲を新たなサウンドで
・土や汗の匂い、風の感触…

 

CD information

MIKAZUKI
MIKAZUKI/FONTE
【曲目】Catavento e Girassol、Polaris、Inutil Paisagem、Vilolin Concerto in D Major, 1st mov.、Lady K、三日月に輝く/Mikazuki、Interlude (Intermezzo for Flute & Guitar)、Central River、Cheio de Dedos、Goiabada
【演奏】FONTE
(株)ランブリング・レコーズ
RBCP-3370
¥2,500(税別)

 

Profile
中川昌三
東京芸術大学卒業。学生時代よりジャズ界に身を投じ、ライブ活動を開始、ギル・エヴァンス・オーケストラを皮切りに様々なスタイルのバンドで経験を積む。キース・ジャレット、ヨーヨー・マ、リッチー・バイラーク、デヴィッド・ベノア、ドン・フリードマン、ジョージ・ムラーツ、エディー・ダニエルス、リー・コニッツ、フィロー・マシャード、佐藤允彦、渡辺貞夫、大野雄二、渡辺香津美の各氏の他、数多くのプレイヤーと共演。日本国内外のコンサートやリサイタルも数多い。
一方、クラシックや現代音楽の演奏家(昌巳の字を使う)として、1977年パン・ムジーク国際現代音楽コンクール第2位、同年に吉原すみれらと“アンサンブル・ヴァン・ドリアン”を結成、グループとして中島健蔵賞を受賞。イサン・ユンのフルートコンチェルトを日本初演。今までに、リチャード・ストルツマン、アンリッド・ピェグ・ロジェの各氏をはじめ、数多くのオーケストラともソリストとして共演。日本音楽コンクールや毎日学生コンクール等の審査員も度々務める。NHK「芸術劇場」「現代の音楽」「ときめき夢サウンド」「トゥトゥ・アンサンブル」民放では「ミッドナイト・ジャズ」「ライブ・イン・ジャズ」「名曲物語」等、様々なジャンルのコンサートやTV番組に出演。
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