フルート記事 フルートを辞めようと逡巡し、音楽が私をすくい上げてくれた
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THE FLUTE vol.189 Close Up

フルートを辞めようと逡巡し、音楽が私をすくい上げてくれた

ARTIST

久々に本誌登場となったパトリック・ガロワ氏。新型コロナウイルスのパンデミックの間、パニックになり、そしてフルートを辞めようと何度も悩んだという。2年前から巡礼を始め、その距離はすでに2000kmを超えたと語ってくれたガロワ氏。精神性を大切にする氏のインタビューは意義深いものとなった。
インタビュアー・通訳・翻訳:今井貴子/取材協力:ヤマハ株式会社・瀬尾和紀

練習するだけでは意義がない

前回のインタビューは、2016年でしたが、この6年、特にパンデミックに入ってからの様子をお聞かせください。
ガロワ
パンデミックは、誰にとっても難しい時期でしたよね。このままフルートを続けていけるのだろうかとも自問しました。完全に辞めるのかどうかも。いまの生活の中には、フルートと同じくらい大切なものがあります。街を歩いたりね。そして、瀬尾さんとの新譜の録音も延期が続きました。
パンデミックが始まった当初は、アンデルセンの「ヴィルトゥオーゾエチュードop.60」を最初から暗譜し直しました。以前から暗譜はしていたけれど、24曲を一つずつ見直したのです。いや、23曲かな。1曲だけ昔から吹かないのがある(笑)。でも、あれは音楽ではないのですよね。言うなれば自宅で運動をするようなものです。
その後、プロコフィエフなど今回日本で録音したCD のレパートリーを練習し直し、新たな発見がたくさんありました。それはとても素晴らしいことでした。このCDは去年2021年に録音の予定だったのですが、延期になったのです。2021年、2022年と同じCDを録音していたら面白かったかもしれないですね。1年のインターバルを置いての、違った視点のCD。
パンデミックの間はみなさんと同じだったと思います。最初は暗譜などベースの部分を強化し、その後フルートを辞めようかと悩み、そして音楽が私をすくい上げてくれました。
音楽を辞めようと思ったのは、演奏のお仕事が一旦できなくなってしまったからですか?
ガロワ
私は、仕事をする怠け者だから(笑)。練習だけするのが嫌いなのです。その代わり、何時間も練習するための何かをいつも探しています。皆そうだと思いますが。練習するだけというのは、意義がないでしょう? 練習に方向性を与えることが重要なのです。もし、練習に方向性や意義を持たせたら、フルートをずっと吹いていられる。でも、何故、何のために練習するのか分かっていないと、練習はできない。一人でずっと練習していると、特別な何かを発見できることもあるから、それまでは想像もしなかったこと、今まで知らなかった世界を知ることはできたかなと思います。

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・下から登ってくるエレベーターを切ってはいけない
・自身を愛して音楽の中に自分自身で居続けること
・アクションペインティングと音楽のコラボレーション

 
Profile
パトリック・ガロワ Patrick Gallois
フルーティスト、指揮者として輝かしい国際的なキャリアを誇る、今日のフランスを代表する音楽家の一人。
フランス北部ランセル出身。17歳でパリ国立高等音楽院に入学し、ジャン=ピエール・ランパルに師事。リール国立管弦楽団の首席を経て、21歳でロリン・マゼール率いるフランス国立管弦楽団の首席となり、一躍スター・フルーティストとしての座を確立した。
1984年からは、ソリストとしての活動に専念し、多くの録音を重ね、毎年に渡る日本ツアーを行なう。さらに指揮者として2003年より年間、シンフォニア・フィンランディアの芸術監督・指揮者を務めた後、現在は世界中のオーケストラへ客演を行なっている。

 

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