フルート記事
THE FLUTE vol.194 Special Interview

目の前のことに向き合い、自然と導かれるほうへ進んだ結果、今の自分がある。

コロナ禍で開催された第10回神戸国際フルートコンクール。最善の対策を考慮した結果、全審査がオンラインとなった今大会だが、世界各国から実力派若手フルート奏者が参加し、渾身の演奏動画をもって厳正に審査された。
今回は入賞者による披露演奏会東京公演の直前、その大会を制した一人であるラファエル・アドバス・バヨグさんにインタビューすることが叶った。気配り上手で明るくフレンドリーな彼の、音楽と人生観に迫る。
取材協力:公益財団法人 神戸市民文化振興財団/ヤマハ株式会社/株式会社ヤマハミュージックジャパン/通訳・翻訳:久保順

自分への挑戦

神戸国際コンクール第1位、おめでとうございます。このすばらしい結果をご自身でどのように感じていらっしゃいますか?
ラファエル
(以下R)
まだ私にも信じられないことですが、日々練習する中で少しずつこういった成果を得られるようになり、やっと辿り着けたのだと達成感があります。世界的にも権威のある神戸国際フルートコンクールで第1位を取るということは誇りであり、大変名誉なことです。最後に開催された2017年から出場してみたいとは願っていましたが、こうした大きな国際音楽コンクールは楽器別に数年おきで開催されるために4、5年待たなければいけないこともあります。なので準備は続けて受けられるチャンスがあれば受けるというスタンスで、他のコンクールも受けてきました。初めて受けた大きなコンクールはカール・ニールセン国際フルートコンクールでしたが、やってみて楽しかったのでそのまま続けてきました。
今回はオンライン審査が導入されましたね。録音にはどのような気持ちで挑みましたか? 対面審査と比較したときに、ご自身で気にかけることは変わりますか?
R
本選までのすべてがオンラインだったのは初めてでした。録音のために過ごしたこの時期は私にとって特別だったと言って良いでしょう。そのままスウェーデンのストックホルムで録音することもできたのかもしれませんが、私にとって最適なピアニストやホール、録音エンジニアはすべてドイツのミュンヘンに揃っていたので移動することにしました。オーケストラの休みが4日間あったら、そのうちの3日間はミュンヘンへ行き、ピアニストとリハーサルをし、一緒に先生のレッスンを受け、またリハーサルをして録音に臨む、という生活を3ヶ月続けました。仕事をしながら片道3時間のフライトを毎週往復したのです。第2次予選、暗譜もしなければいけない第3次予選、本選と2週間ずつ計画的に録音していき、撮り直しができるように最後2週間は空けておきました。
オンライン審査の録画で気を付けたことは、対面審査をされているような気持ちを保ち、自分の個性を前に出すこと。それと同時に、通常ホールで行なわれる対面審査だと音量的に遠くまで飛ばすことを気にしなければいけないのですが、今回は近いマイクの録音に適した細かい表現にこだわりました。

次ページにインタビュー続く
・予想外!フルートとの出会い
・使用楽器と表現力

 
Profile
ラファエル・アドバス・バヨグ
ラファエル・アドバス・バヨグ
Rafael ADOBAS BAYOG
イビサ音楽院を最優秀の成績で終了後、カタルーニャ高等音楽院でヴィンセンス・プラットに師事。2017年からは、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団による全額奨学金を得て、ミュンヘン音楽大学でアンドレア・リーバークネヒトに師事し研鑽を積む。PE-Förderkreisフェロー、ヤマハ音楽基金ヨーロッパ奨学生。これまでに、ソリストとしてコペンハーゲン・フィルハーモニー管弦楽団、オーデンセ交響楽団、スペイン国内のアンサンブルと共演。また、韓国の統営国際音楽祭など、複数の音楽祭に室内楽奏者として出演。現在、王立ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団アカデミーの首席フルート奏者として活動。カール・ニールセン国際フルートコンクール2019第3位入賞。
 
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