すべての疑問が解決したフラウト トラヴェルソとの出会い

大学3年生のときに、一人でフランスやドイツ、オランダを旅行して、ドイツで脈々と流れてきた音楽文化を肌で感じて、いつか暮らしたいと思ったんですね。帰国後、武蔵野音楽大学で開催された第12回インターナショナルサマースクールの講師でいらしていたミヒャエル・ファウスト先生に、留学したいと相談したことで、ドイツの大学を受験することができました。

そうです。大学で習ったファウスト先生がレッスンのときに「木の楽器の音色をイメージして」とよく仰っていたんです。当時はシルバーの楽器を吹いていましたから、頭の中でイメージする理想の音と、実際に出す音のキャップが生まれていき悩みました。そのほかにもバロック音楽を演奏するときに疑問を感じることが多かったのです。バロックの音楽はフルートのオリジナル作品でもブレスが取れるところが少ないのはなぜだろうとか。
あるときたまたま私がいた大学の近くの古城で古楽器の講習会が行なわれることになり、先生が推薦してくださって参加することができました。トラヴェルソや古楽器の知識がない中での参加でしたが、楽器を貸していただき吹いたときに、今までの疑問がすべて解決できました。 ブレスが少ないのは、トラヴェルソはモダンのように息をたくさん入れなくていいから。このようなことを楽器を手にした瞬間に気づき、「自然なスタイル」だと感じて、感激したのです。それにモダンのレパートリーはほとんど知っていますが、トラヴェルソの曲はあまり知りません。それも新鮮に感じましたね。

どちらも好きなので並行して吹いていました。ただ息遣い、息の量、運指、タンギング、音程などすべてにおいて、その二つはまったく違う楽器ですから、持ち替えて吹くことは難しい。それでだんだんトラヴェルソだけになりました。

街によって違いますが……イースターになると『マタイ受難曲』など宗教音楽を演奏しますが、そのときは古楽器がよく使われています。日本と違って大人もリコーダーを演奏しますし、各地でプロの古楽器オーケストラがたくさん存在していて、それぞれが演奏活動をしているのでけっして特別な楽器、音楽ではありませんね。