フルート記事 ウィーン・フィルの響きは唯一無二─どこにもない独自のアイデンティティを持つ
  フルート記事 ウィーン・フィルの響きは唯一無二─どこにもない独自のアイデンティティを持つ
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《ONLINE限定インタビュー完全版》THE FLUTE vol.198 Close Up

ウィーン・フィルの響きは唯一無二─どこにもない独自のアイデンティティを持つ

ARTIST

1995年生まれのリュック・マンホルツ氏がウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(以下 ウィーン・フィル)に入団したのは2022年のこと。期待がかかる若きフルーティストに今回初めてインタビューが実現した。
なお、THE FLUTE ONLINEでは本誌に掲載できなかったインタビューを含め、完全版でお届けする。

インタビュアー:岩下智子/カメラマン:河野英喜/取材協力:ヤマハ株式会社、株式会社ヤマハミュージックジャパン

 

音楽好きの家族のもとで育つ

THE FLUTEに初登場となりますね。まず最初に、フルートを始めたきっかけから教えてください。
マンホルツ(以下M)
私は7歳でフルートを始めたのですが、その経緯をお話すると少し長くなります。私の両親は音楽家ではありませんが、家庭ではいつもクラシック音楽が身近にあり、コンサートにもよく連れて行ってくれました。私は三人姉弟の末っ子で、2歳年上の姉といつも一緒に遊んでいました。その姉がヴァイオリンを習いはじめたことがきっかけで、私も音楽をやりたいと思うようになりました。最初はチェロに興味を持っていたのですが、ある日地元の北フランスの街で、パリ・オペラ座のフルーティストが演奏するコンサートがあり、それを聴いて大変感銘を受けました。そのとき父が私に一枚のCDを買ってくれまして、私はフルートをやりたいと心に決めました。
そして理由がもうひとつ! 当時クラスで好きだった女の子がフルートを選んだので、「彼女と一緒に、僕も絶対フルートをやりたい!」と(笑)。
しかし7歳でフルートを始められましたがかなり早いですね。普通のフルートを使って始められたのですか?
M
フランスでは、フルートを始めるのはもう少し年齢を重ねてからのほうが一般的ですが、私は6歳のときにフルートを習いたいと思い、1年間待って実際は7歳から習い始めました。幼児用のU字管フルートなどありませんでしたので、最初から普通のフルートを使用しました。当時、自分は身体が小さかったため、しばらくは頭部管だけを使って練習し、次に左手を追加し、楽器を支えられるようになって右手を加えるなど、段階を追って練習を進めました。当時習っていたシュテファニー・コンディァックは、まだ学生でしたが、非常に上手に子どもたちに教えることができる素晴らしい先生で、彼女のおかげでレッスンはとても楽しく、私は毎日フルートの練習に打ち込むことができました。今でもその先生に深い感謝の念を抱いています。
それは素敵なことですね! フルーティストを目指したターニングポイントを教えてください。
M
一番は、音楽愛好家の家庭で育ったことが私の人生において重要だったと思います。両親はけっして私にプレッシャーをかけず、音楽を心から愛していました。オーケストラをはじめ、室内楽のコンサートなど、さまざまなコンサートに連れて行ってくれました。このようなことが音楽の道に進む上での基盤になりました。先ほどお話したように、私にとって小さいころにフルートのコンサートを聴いた経験は、非常に衝撃的な出来事でしたし、12~13歳の頃には、すでにプロのフルーティストになりたいという夢を抱いていました。その頃、ジョン・ウィリアムズや宮崎駿監督映画の久石譲の美しい音楽に触れ、何度も聴きました。特に寝る前に夢心地で聴くことが習慣になっていました。これらの好きな音楽はやがてブルックナーやシュトラウス、そしてマーラーなどのクラシック音楽へ移行することになりました。今回一緒に来日しているピアニストのラン・ランは熱い演奏を連日繰り広げていますが、彼は私が小さいころから何度も繰り返し聴いていた演奏家の一人です。
 

インタビューは続きます!
・フランスとドイツで学んだこと
・オーケストラ奏者として大切なのは他人とうまく適応すること
・メンター制度のあるウィーン・フィル

Profile
リュック・マンホルツ Luc Mangholz
1995年フランス北部ドゥシー生まれ。7歳でフルートを始める。パリ高等音楽院でフィリップ・ベルノルド、フローレンス・スシャール=ドゥルピーヌ、ピエール・デュマイユ、ヴァンサン・リュカに師事。2016年ベーム国際コンクールで第1位。ミュンヘン音楽演劇大学にてアンドレア・リーバークネヒトに師事。バイエルン州立管弦楽団のオーケストラ・アカデミーに所属。NDRエルプ・フィル首席奏者を経て、2019年ウィーン国立歌劇場オーケストラに首席として入団。2022年ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団首席奏者に就任。
 
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