フルート記事 黒田姉妹によるCD「Super RAGs」をリリース!
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THE FLUTE vol.201 Close Up

黒田姉妹によるCD「Super RAGs」をリリース!

ARTIST

作曲家の安田芙充央氏が主宰するプルクワレーベルから、黒田由樹(Fl)&黒田亜樹(Pf)姉妹による新アルバムがリリースされた。そのタイトルは「Super RAGs」。黒田姉妹の卓越したテクニックと音楽性、さらに安田氏の作曲・アレンジが光る一枚である。今回は黒田由樹氏と安田氏との対談が実現した。

テーマは“ピーン”ときたラグタイム

早速ですが、前作の「Super Gershwin」に引き続き、今回も「Super RAGs」というタイトルで、期待感が高まるアルバムですね。収録曲はラグが中心ですか?
安田
そうですね。既存の作品に私の新作のラグタイムを加えました。“ラグ”というのは、傾く(かぶく)、奇抜なという意味を持っています。ジャズでいえば、BE-BOPやスウィングなどがあり、ラグはそれらの前身に当たるものです。異色な音楽でもあり、テクニックがないとできないジャンルです。
ラグをテーマにしたアルバムは、前作のときから考えていました。
黒田
1枚のアルバムで終わらないよう、三部作にしたいと話して進めていました。安田先生から、「2枚目はラグがいいんじゃない?」と言われたときに、ピーンと来たんです。先生のアレンジであればすごいアルバムになると(笑)。
安田
由樹さんが、ラグをテーマにしたミュージカルの仕事もしていましたから、アメリカの時代背景、歴史、ブラックミュージックの歴史などを体感していて、ちょうど時期的にも良かったですね。
ラグの他にはマザーグースも入れています。世界中の国々にマザーグースはありますが、今回はアメリカで伝承されているマザーグースを使っています。とはいっても全部ではなく、2小節、4小節ぐらいをモチーフとして使用しています。
黒田
ラグタイムは同じリズムが続くので、CDでラグタイムばかりだと単調になりますから、マザーグースを入れてバランスが取れた感じがします。
安田
今回アルトフルートの新作も書きました。アルトフルートはこれまで縁のある楽器ではなかったのですが、由樹さんの演奏を聴いて、こんな表現ができる楽器なんだとびっくりしましたね。アルトフルートを広めたいという由樹さんの希望もありましたし。
黒田
アルトフルートのコンクールもできて、フルートは特殊管ブームですからね。私もフルートアンサンブルを主宰しているのですが、1年経ったころからアルトやバスフルートを吹きたいとパートを変わった人もいるんですよ。リズムや音色にハマっていくんでしょうね。
そういう中でアルトフルートの新曲を入れたのは興味深いですね。
黒田
結果的にすごくチャレンジングな2曲となりました。
今回のアルバムの聴きどころの一つですね。
黒田
アルトフルートの2曲は、先生がピアノでアドリブを作ってくれたものを楽譜に起こして、さらに自分なりに変えたり、デイヴ・ヴァレンティンみたいに声を使ったりしています。
安田
クラシックでは楽譜通りに吹くのがセオリーですが、楽譜に書けないことがたくさんあるんですよね。それを由樹さんは汲んでやってくれるんです。
 

インタビューは続きます!
・今だからこそできたアルバム
・“ここまでやればいい”という線引がない

 

Profile

●黒田由樹 /Yuki KURODA
3歳からピアノ、14歳からフルートを始める。京都市立芸術大学卒業。テレマン室内管弦楽団首席奏者を務めた後、東京藝術大学大学院修士課程を修了。伊藤公一、白石孝子、パウル・マイゼン氏に師事。日本フルートコンベンションコンクールソロ部門、宝塚ベガ音楽コンクール、全日本学生音楽コンクール等の国内主要コンクールにて入賞。ザルツブルグ夏期国際音楽アカデミーやニース夏季国際アカデミーなどに参加し研鑽を積む。これまでにフィリップ・ベルノルド、エマニュエル・パユ、マクサンス・ラリュー、マルティン・コフラー、レイモンド・ギヨー等の各氏に師事し、ヨーロッパ各地で演奏活動を行なう。クラシックで鍛えた抜群の技量に加え、ジャンルを超えた新鮮な感受性によるアプローチでスタジオ・ワークなどで活躍の分野を広げている。国内の主要オーケストラを始め、ミュージカル、バレエ、映画、ドラマなどの分野で活躍する他、「Halocline」のメンバーとしてCD2枚をリリース。

●安田芙充央 /Fumio YASUDA(作曲家・ピアニスト)
コンポーザー・ピアニストとしてドイツを拠点に活動。オペラの作編曲・翻案「Der Kastanienball」など新しい試みにも挑戦し続けており、クラシック、ジャズを超越した「現代で最も個性的なピアニスト」と評される。作品は2005年スイスで自身のピアノとバーゼル室内管弦楽団に初演された『ピアノ協奏曲』、名手テオドロ・アンゼロッティをソリストに迎えた『アコーディオン協奏曲』など多数。リーダーアルバムは、独フランクフルターアルゲマイネ紙特選盤に選ばれた『花曲(Kakyoku)』『Charmed with Verdi』など18枚。映画音楽は、リー・カンション監督『Help Me Eros』など。NHK-BSプレミアム「井浦新 アジアハイウェイを行く」などのサウンドトラックも多数。ピアニストとしてはシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭、Stanser Musiktage 2005(スイス)、シュツットゥガルト室内管弦楽団定期公演などに出演。2014年にはウィーン楽友協会大ホール(Musikverein Vienna, Austria)にてウィーンキュンストラー管弦楽団と自作スコアで共演。1994年よりムラマツ・オリジナル・シリーズにフルート楽曲の連載を行なっている。

Information

◆CD「Super RAGs」
【POUR-1010】プルクワレーベル
¥2,860(税込)
[演奏]黒田由樹(Fl)、黒田亜樹(Pf)
[収録曲]
1-Super Flute Rag on Maple Leaf(Fumio Yasuda)
2-Fantasy on Mother Goose's Lullaby(Fumio Yasuda)
3-Super Flute Rag on The Entertainer(Fumio Yasuda)
4-Song of Mother Goose No.2(Fumio Yasuda)
5-Blue Black on Alto Flute(Fumio Yasuda)
6-Elite Syncopations(Scott Joplin、Arranged by Fumio Yasuda)
7-Raggy Rag for Alto Flute(Fumio Yasuda)
8-Ballad of Mother Goose’s Melody(Fumio Yasuda)
9-Carolina Shout(James P Johnson、Arranged by Fumio Yasuda)
10-Bethena Variation(Fumio Yasuda)
11-Stop Time(Scott Joplin、Arranged by Fumio Yasuda)

 
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