世界&日本のコンクール、その歴史
国内外でたくさん行なわれている、音楽コンクール。管楽器の中でフルートコンクールの数はとても多く、フルート単独のものからフルート部門や木管楽器部門があるものまで、今や多彩なラインナップをなしているといえるだろう。
国内外でたくさん行なわれている、音楽コンクール。管楽器の中でフルートコンクールの数はとても多く、フルート単独のものからフルート部門や木管楽器部門があるものまで、今や多彩なラインナップをなしているといえるだろう。
国内コンクールで最も歴史ある「日本音楽コンクール」では1956年に管楽器部門が、1984年からはフルート部門が創設され、現在まで優れた演奏家を生み出す登龍門となっている。 その後も昭和や平成の時代に続々と生まれたフルートコンクールは、数々のコンテスタントを生み出す舞台となった。また、“コンクールへの挑戦”という一つの目標を、若きフルーティストたちに与える場ともなってきた。
時代は令和。いま、そのフルートコンクールの場では、どんなチャレンジが行なわれているのだろうか。コンテスタントたちは何を思い、どんな準備を経て本番に臨むのか―。 国際的な舞台でも通用するフルーティストたちが次々と誕生している現代、そんな「フルートコンクール」の世界を取り上げてみたい。
フルートコンクール、その歴史
日本人フルーティストがいつ頃から国際コンクールで活躍していたのか、また日本で始まった最初のコンクールとその受賞者たち……資料をひもときながら、そんな歴史を見てみよう。
コンクールの歴史
国内コンクールで最古の「日本音楽コンクール」は1932(昭和7)年に時事新報社の主催ではじめられ、1937年から主催が東京日日新聞社(現・毎日新聞社)に移り、1949年から同社とNHKとの共催となった。当初は声楽、ヴァイオリン、ピアノ、作曲の4部門で、1956年から管楽器部門が、1984年からフルート部門が設けられた。
なお、管楽器部門が始まった初年度の1956年の入賞者は、小出信也(第2位)、峰岸壮一(第3位)。小出氏、峰岸氏とも“日本のフルートの母”と言われた林リリ子氏の最初の弟子であった。因みに、まだフルート部門が独立しておらず“管楽器部門”だったこのとき、第1位を獲得したのはクラリネット奏者の藤家虹二。翌年1957年には1位に宮本明恭、2位に加藤恕彦とフルート勢が活躍するも、翌々年1958年は木管楽器奏者は選を逃すなど、金管楽器もすべて一緒のカテゴリーとされていたこともあり、“狭き門”だった様子が伺われる。
日本人が国際コンクールに出場し、入賞するようになったのもこの頃からである。
1960年、ミュンヘン音楽コンクールで第1位のパウル・マイゼンに次いで(加藤恕彦が)ミシェル・デボストとともに第2位になります。マイゼン(1936~)とデボスト(1934~)が後に世界のトップ・フルーティストになったことは広く知られていますが、同世代ながらも最年少の加藤恕彦が彼らと肩を並べたのですから、文字通りの快挙といってよいでしょう。
ミュンヘン音楽コンクールでのその後の入賞者は、1979年の酒井秀明と工藤重典(ともに第3位、1位なし)1983年の中山早苗(第3位、1位なし)がいますし、ミュンヘンと並ぶ二大コンクールとされていたジュネーヴ国際音楽コンクールでは、1969年の金昌国(第2位、1位なし)、1973年の河野俊子(第1位)、1983年の酒井秀明(第2位、1位なし)がいます。
(以上、「日本フルート物語」(近藤滋郎 著/音楽之友社刊)より、一部改変)
コンテスタントとフルート
本誌で連載中の「新・国産フルート物語」に登場したエピソードの中に、コンクールに関する興味深い話がある。現在、村松フルート製作所の相談役を務める曽根勝氏が、インタビューで語ったその内容を紹介する。
1967年に金昌国さんがムラマツの楽器で日本音楽コンクールに出場して優勝したんですよ。そこからですね、だんだんとムラマツの名前が知られるようになったのは。とはいえ、うちの楽器で彼がコンクールに出ることに決まったときは、プレッシャーを感じましたよ。楽器のせいで成績が振るわなかったら大変なことですから。それは責任重大でした。
―中略―
さらに2年後にその楽器でジュネーブ国際コンクールで、彼が2位に入賞した(註:1位なしの2位)。ジュネーブで日本人が入賞するなんて前代未聞のことだったから、これは驚きましたよ。信じられなかった。
(THE FLUTE170号「新・国産フルート物語」より)
このとき金昌国氏が使ったのは、ムラマツで初めて作られたゴールドの楽器だった。曽根氏は、「あれがうちの世界への出発点だった」と語っている。
コンテスタントの海外進出は、日本のフルートの海外進出のきっかけにもなった―世界に品質を誇るメイドインジャパンの楽器と、日本人フルーティストの活躍がリンクしていることは、大変興味深いトピックスの1つではないだろうか。
1985年に始まった、神戸国際コンクールの第1回目
2019年より木管楽器部門が創設されたチャイコフスキー国際コンクール世界のフルーティストたちが腕を磨く場は、着々と増えてきた。
海外で、日本で… 多様なフルートコンクール
フルート単独のコンクールのほか、フルート部門・木管楽器部門が含まれる
主なコンクール(2019年現在続行されているもの)をピックアップした。
毎年開催されるものから数年に1回開催のものまで、開催周期はまちまちである。
[宮城県]
仙台フルートコンクール
https://www.s-musicplaza.com/concouru.html
[茨城県]
つくばフルートコンクール
http://tsukuba-flute.com/
[東京都]
◯東京音楽コンクール
https://www.t-bunka.jp/tmc/
◯日本音楽コンクール
http://oncon.mainichi-classic.jp/index.shtml
◯日本管打楽器コンクール
https://www.jmecps.or.jp/soical4b36
◯全日本学生音楽コンクール(地区予選、地区本選、全国大会=横浜)
http://gaccon.mainichi-classic.jp/index.shtml
[滋賀県]
びわ湖国際フルートコンクール
http://www.city.takashima.shiga.jp/www/contents/1134353057118/index.html
[大阪府]
◯大阪国際音楽コンクール(地区本選、ファイナル=大阪)
https://www.osakaimc.com/
◯リトルカメリアコンクール(摂津音楽祭)
https://www.city.settsu.osaka.jp/bunka/bunkaevent/ongakusai/index.html
[兵庫県]
◯神戸国際フルートコンクール(神戸)
https://kobe-flute.jp/
◯KOBE国際音楽コンクール(神戸)
https://musicsatoh.com/
◯三田ユネスコ・フルートコンクール
http://jfos.jp/concours.html
◯日本木管コンクール
https://japan-woodwind-competition.org/
[海外コンクール]
◯プラハの春国際音楽コンクール(チェコ/プラハ)
◯カール・ニールセン国際コンクール(デンマーク/オーデンセ)
◯ミュンヘン国際音楽コンクール(ドイツ/ミュンヘン)
◯ジュネーブ国際音楽コンクール(スイス/ジュネーブ)
◯クーラウ国際フルートコンクール(ドイツ/ユルツェン)
◯マクサンス・ラリュー国際フルート・コンクール(ニース/フランス)
◯チャイコフスキー国際コンクール(ロシア/モスクワ)
ほか
[国内コンクール]複数開催地
◯日本フルートコンヴェンションコンクール(コンヴェンション開催地)
https://japan-flutists.org/festival/flute-convention2019/
◯“長江杯”国際音楽コンクール(東京、大阪)
http://homepag3xaang.movie.coocan.jp/yotei/yotei.htm
◯“万里の長城杯”国際音楽コンクール(東京、大阪)
◯日本奏楽コンクール(宮城、兵庫、東京)
https://www.nihon-sogaku.com/
ほか