オーディションから広がる輪
新型コロナウイルス騒動で、「ステイホーム」という未だかつてない体験をすることになった私たち。音楽活動がすべて中止となった今、オンラインを通じて演奏でつながるという新しい形も生まれています。思いがけず転換点を迎えたいま。この状況の中でできることは……?
新型コロナウイルス騒動で、「ステイホーム」という未だかつてない体験をすることになった私たち。集まって音楽をするという、これまで当たり前のようにやってきたことができなくなり、あらためてそれが活力を与えてくれる素晴らしいことだったと気付かされたのではないでしょうか。
コンサート、コンクール、アンサンブル、レッスン……音楽活動がすべて中止となった今、オンラインを通じて演奏でつながるという新しい形も生まれ、一方ではそれを楽しむ動きも出てきています。
音楽に関するいろいろなことが、思いがけず転換点を迎えたいま。
この状況の中でできることは? 新たなチャレンジやツール、その流れにうまく乗っていくためには?
……そんなことを考えながら、様々なアクションを起こした人々や、オンラインをはじめとするツールを取り入れて音楽を楽しむ方法などを、読者の皆さんと一緒に見ていきたいと思います。
オーディションから広がる輪
―上野星矢、〝オンライン審査〟という試み―
上野星矢さんが立ち上げた、オンラインフルートオーディション。「スマートフォンで撮影した動画でOK」という手軽さもあり、400名以上からの応募があったそうです。既に第1次予選の結果発表が終わり、第2次予選のエントリーと結果発表が6月中に予定されています。
「コンサートもレッスンも、コンクールもなくなって、フルートに携わる人たちのモチベーションがどんどん下がってきているのを、SNSなどを通じて3月頃からひしひしと感じるようになりました」という上野さん。「何か突破口や、逆境に打ち勝つアイデアが必要だな、と思いました」。
今回のオーディションは小学生部門から大人のアマチュア部門、音楽活動を職業にしている人を対象にした一般部門まで、広く門戸が開かれています。中でも、特に伸び盛りの小中高生や大学生に、目的を失った状態で長い時間を過ごしてほしくなかったといいます。曲目も伴奏の有無も自由。審査員からのコメントがもらえて、「コロナが収束したら、入賞した人たちは実際に審査員たちとリサイタルができたり、一緒にツアーに行けたり、コンチェルトに出演できたり……皆さんのご協力のおかげで、夢のような賞をたくさん用意することができました」。
応募も審査も、すべてオンライン。スマホ一つで撮影して送れば、国内外の世界的奏者たちに演奏を聴いてもらえてコメントももらえる―!
しかし、スマホで撮影された演奏を審査するのはいろいろと大変なのでは? そんな疑問をぶつけてみると、返ってきたのは「大丈夫です」という答え。「スマホでパッと撮った動画でも、どんな演奏なのかはちゃんとわかりますし伝わります。審査員の方々も、いろんな場所で審査の経験を積んでいますから」。音をきれいに編集してエフェクトをかけたりしたら、有利になるのでは?「そういう加工は聴けばすぐにわかりますが、ただ、工夫を凝らすのは悪くないですし、むしろ手間をかけたんだなと。その心意気も含めて聴かせてもらいます。その人自身の音楽や個性というのは演奏からにじみ出てくるものなので、シンプルな動画からでも、メッセージとしてしっかり受け取っています」
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・PICK UP オンラインフルートオーディション
・フルートオーディション審査員からのメッセージ