大森義和流レッスン術
本誌116号から連載していた「大森義和レッスン術」が123号で終了。
ムラマツレッスンセンターで開かれる指導者講習会の講師を務めるなど
フルートの指導に定評のある、大森義和先生が教える指導法や心得を教えてくれました。
大変ご好評いただいた連載だったので、フルートオンラインでも各回の格言とまとめを紹介します。
まとめ
「レッスンとは何?」と聞かれたら、「人生をともに歩むこと」。明日には何が起こるかわからないのに、時間を分かち合えるのは素晴らしいことです。
●先生の懐の深さと愛情の深さ、そして師弟愛
どんな生徒が来ても対応できるようにするためには、これらが必要です。私もまだすべての生徒に対応できているとは思いませんが、対応するための努力はしています。
●知識の重要性
この知識は何の知識かというと、人間の身体と脳のメカニズム(仕組み)、それからフルート、音楽全般に関する事柄。そして演奏するためのテクニック(技量・芸風)。「芸風」と書くと日本っぽいですが、ゴールウェイもパユもみんな自分の芸風を持っています。芸風とは個性とも言い換えられます。
まとめ よい先生になるには
生徒一人ひとりに対して愛情をもって考えることさえ忘れなければ、みんなよい先生になる可能性をもっています。それが人との付き合いでの信頼につながります。さらに技術の上でもよい先生になるためには、先生自身がテクニックを磨かなければなりません。技術を教えることと、音楽をする楽しみを教えることは別のことであり、共存もできます。アマチュアの人は、いつまでに上手くならなければならないということはありません。極論を言えば上手くならなくてもいい場合があるのです。だから音大に入り、プロになるための訓練を受けてきた私たちと同じようなレッスンはできないということが分かってもらえたと思います。
アマチュアの生徒に対しては、レッスンが楽しい時間であることが大切。でも「上手になりたい!」という生徒の気持ちを感じたときには、技術や練習方法をどんどん教えるというふうにしていくといいでしょう。
まとめ
「楽しいレッスン」と一言で言っても、お弟子さんによって苦しいのが楽しい人、楽しいのが楽しい人、努力している自分を感じるのが楽しい人……などさまざまあります。人によって個人差もありますし、同じ人でも日が違えば変わるものです。
だからこそ先生自身がいつもフルートを楽しんでください。「生徒を楽しくさせよう」ではなく、先生が「フルートを吹くことが楽しい」と感じていれば、それは自ずとお弟子さんに伝わり、いい結果に繋がると思いますよ!
まとめ
発表会、合宿は、もちろんお弟子さんが上手くなるために必要ですが、自分の教え方を見つめ直すチャンスなのです。
また生徒にとっては、他の人の演奏を聴いて刺激を受ける場でもあります。
フルートの勉強会も、お弟子さんにとってためになることです。それができるようになるには、先生は音大を卒業しても勉強し続けていかないといけないのです。
まとめ
お弟子さんを持つなら、教則本、エチュードなどあらゆるものを研究して、適切な指導ができるようにしましょう。お弟子さんの上達は先生にかかっているのです。
※補足:フルート奏者はフルートの発音原理、音響学の勉強も大事ですので、面倒だとは思いますが、きちんと研究してください。そして笛吹きはその楽器をつくった人が、どんなポリシーを持ってその楽器にどんな性能を与えたかに気づくといいと思います。
まとめ
第1回からレッスンについてたくさんのことを書いてきました。思わず目をふせてしまいそうな厳しいこともたくさん書きました。しかしすべてのことに共通して言えることは、お弟子さんに愛情を持ってきちんと向き合うこと。そして、自分が教えるだけの一方通行の指導ではなく、お弟子さんにどう身に付いているか、どう結果が出たかのレスポンスを感じ取ること。演奏は知識を入れただけでは上達しません。知識を実感して演奏に表せなければ上達したことにはならないのです。
お弟子さんは先生のコピー人間ではないので、先生が良い教え方をしたと思っても、お弟子さんがそう感じ取れないと、まったく意味がないのです。お弟子さんがフルートを吹く楽しさを感じて上達し、そして幸せになる。これが私のモットーです。
あなたの教え方で、たくさんのお弟子さんを幸せにしてくださいね。