山元康生の吹奏楽トレーニング!│第5回
新型コロナの影響で延期になった2020年の吹奏楽コンクール。課題曲はそのままスライドして、今年2021年に開催される予定です。今からフルート演奏の基礎を見直して、「良い音」「正しい音程」「音量のコントロール」「正確で俊敏な指使い」を手に入れられるトレーニングをしてみませんか?
曲を吹いてみよう〈応用編〉
これから先は応用編です。実際の曲の中で音量のコントロールを練習していきます。
まず、『アルルの女』です。フルートのレパートリーの中でも特に有名な曲ですが、美しく吹くのは難しいです。
1のように、音域が高くなっていくにつれてディミヌエンドしなくてはなりません。
1aで、まず唇に頼らない伸びやかな音で練習します。
1bでは、息の量だけを減らしてpで吹きます。
1cで段階的に息の量を減らします。
最後にスラーを付けて練習した後にテンポを上げて完成になります。
2からは、ハーモニクスを利用した練習方法です。
メロディを単純化すると2aになります。
それを2bのようにE♭1の指で、ハーモニクスをタンギングを付けて練習した後に2cのようにスラーを付けます。
同様に2d 2eを練習してから楽譜通りに吹くと、いつの間にか上手に吹けるようになっています。
3は曲の最後の部分で、消えるようにディミヌエンドしなくてはなりません。
これも3a 3bを練習することによって上手にコントロールすることができるようになります。
ケーラーの『エチュード』は速く指を動かしながら、急にピアノにしなくてはならないので難しいです。
4は、楽譜を読みやすいように倍の音価で書いてみました。
まず、4aでピアノのほうを音質に注意してゆっくり練習します。次に4bでsubito pの練習をします。「急に小さくする」ということは、「直前は大きい」ということです。
私のパリでの恩師、レイモン・ギオー先生は、このような方法で難しい部分だけを取り出して練習することを勧めていました。この「超スポット練習」は短い時間で何回も練習できるので、練習時間の節約と飛躍的な技術の向上に結びつきます。
4cでは少し前から吹いて、4dで少しテンポを上げます。4eを何回も繰り返し練習して自信がついたら4に戻します。
シュターミッツの『フルート協奏曲』では5にある通り、元気の良い主題を吹いた後に、全く性格の違うメロディを対比させなくてはなりません。
ここでも5a 5bの「部分繰り返し練習」でコントロールを身に付けます。fとpの間にブレスがある場合は、コントロールの練習のときもブレスを入れます。
ウィドールの『組曲』では、スラーの中にsubito pが出てきます。6aで、まずpのほうを先に練習して6bでfからつなぎ、6cでリズムを付けて、ゆっくり練習します。
ちなみに作曲者のCharles Marie Widorは、日本で「ヴィドール」と表記されることが多いのですが、フランスの作曲家なので、ドイツ語読みで表すのは大変な誤りです。いったい誰が始めたのでしょうね?
正しい発音は「ウィドー」に聴こえるのですが、ここでは「ウィドール」にしておきました。
今回のエクササイズを根気よく練習して、fでもpでも良い音質で上手に発音できるコントロールを身に付けてください。
自分では「fで吹いているつもり」「pで吹いているつもり」ではいけません。聴いている人が明らかにf、pと感じるのでなければ、表現したことになりません。そのためには、まず口先に頼らないで良く響く音で吹けることが、コントロールの大前提です。また、それは次回以降に掲載する音程のコントロールやタンギングにも役立ちます。
近くでトランペットが鳴っていない静かな所で、自分の音を良く聴いて練習してください。