フルート記事 「フルート☓骨ストレッチ®」
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健康とフルートのレベルアップ! 紫園 香&松村 卓 第3回

「フルート☓骨ストレッチ®」

LESSON

「骨ストレッチ®」──それは松村 卓氏が考案したストレッチで、スポーツ界の一流アスリートに称賛され、TBS「金スマ」、日本テレビ「シューイチ」などを始めとしてTV、メディアに広く取り上げられている、今注目のストレッチです。この骨ストレッチに出会った紫園 香氏がフルートをはじめとする楽器奏者にも広めたいと、この度、松村氏との対談が実現。動画での実演も含め、3回シリーズでお届けします。特別な器具や道具もいらない簡単ストレッチで、あなたの体が劇的に変わります!

第3回(最終回)テーマ 鎖骨は人生を変えるスイッチボタン

紫園
私の生徒さんの中には、シニアの方もたくさんいらっしゃいます。彼らはとても熱心で素晴らしいです。ただ年齢が上がるほど、一生懸命練習しても息が続かないとか、体が痛くなるなどの悩みを持っています。シニアの方にも骨ストレッチは有効ですか?
松村
はい!有効です。82歳の方も骨ストレッチ講習会にいらっしゃいます。その方は事故で左足を怪我して歩くのがつらくなり、引きこもりのような状態になっていました。でも骨ストレッチをやってからは、「横断歩道の白い線が自分の花舞台。スキップしたくなる」とおっしゃるんです。つまり82歳の方でも若返る。同級生の方にも「どうしてあなただけそんなに若いの?」と言われているらしいですよ。年齢は関係なく、体の使い方がよくなれば体は蘇るのです。
紫園
なるほど。先生は、WTの立ち方ができる「WTシューズ」も開発されましたね。
松村
靴底に特殊な溝が彫ってあり(意匠登録済)、履くだけで姿勢が改善され、歩くのもラクになります。
また、ひざ痛や腰痛の人が履くと痛みが和らぐので愛用者の方から“魔法のシューズ”と言われています。
紫園さんはステージではパンプスを履くのですか?
紫園
ええ、履きます。靴は演奏に大きな影響を与えますね。それをどう改善していくのかが、私にとって常に課題です。コンサート用のシューズは、ヒールが高すぎると体が動きにくくなりますが、逆に、まったくヒールのない靴は、(慣れないせいか)吹きづらいところも感じて、工夫のしどころです。
松村
人間の体は背骨と足裏のアーチを使って体重を分散することで、どこにも負担がこないようにしています。
しかし、大抵のパンプスの形状では足裏のアーチが崩れてしまうので、どうしても膝や腰、股関節や足関節に負担が掛かってしまいます。
その結果、外反母趾や腰痛、ひざ痛になってしまう方もいらっしゃいます。
紫園
先生の発明なさったWTシューズで、コンサートシューズがあるといいなと思っています(笑)。
松村
作ろうとするとメーカーから見つけないといけないので、すぐには難しいと思います。
ただ一つ考えられることは、演奏のときにパンプスを履くのが主流であれば、普段のケアとして私の開発したWTシューズを履くことをオススメします。
歩くだけで体の中心にある腸腰筋(インナーマッスル)やお尻、もも裏などが鍛えられるので知らない間に演奏に必要な筋力アップができます。
また、練習の時にWTシューズ履いていただくと指先の動きや呼吸、音の質が向上するのが体感できると思います。それで演奏のときだけ「からださん、ごめんね」といってパンプスを履くのもいいと思いますよ。
紫園さん、ためしに私のシューズを右足だけ履いてみてください。(シューズを履き替える)
ほら、右肩が下がり始めましたね! 腕を回してみると、右手と左手で全然違うことがわかると思います。良い音を出したいと云うお氣持ちをお持ちだと思いますが、それが叶うのが骨ストレッチです。
紫園
WTシューズを履いた右手のほうが、楽に回りますね。
松村
この靴を履くことは整体の先生を一人雇っているのと同じなんですよ(笑)。シューズだけで人生が変わります。
紫園
先生は色々なかたの人生を、すばらしく変えてくださったと思います。ちなみに私が骨ストレッチで特に興味を持ったのは、鎖骨です。
松村
鎖骨は「鎖(くさり)の骨」と書きますよね。そのいわれは昔、中国の囚人が手首に鎖を付けると手首を切って逃げる。足首に付けても同じで、看守が困り果てて鎖を鎖骨につけたという話からつけられています。
鎖骨は「巨骨」とも言われています。いわゆる「偉大なる骨」です。鎖骨と胸骨はつながっているので、鎖骨が動けば肩甲骨も自然と動き、さらに肩甲骨が動けば骨盤も動くのでまるで「でんでん太鼓」のように体の軸から動けるようになります。私は、人間の体のスイッチボタンが鎖骨にあると考えています。
鎖骨をラクに動かすには「手のひら返し」をオススメします。これをやると上腕二頭筋の緊張がほぐれるので鎖骨が働きやすくなります。演奏するときに上腕二頭筋の緊張がとれないまま吹いていると、段々、腕全体の筋肉が疲れてくると思います。
手のひらを返しただけで鎖骨がラクに動くので、姿勢が変わるのと横隔膜の動きも変わるので酸素の摂取量も増えて音量も良くなり演奏しても疲れません。
みなさん、偉大なる骨の「鎖骨」を使うのを忘れていませんか?
鎖骨の効果的な使い方を知らないので筋トレをしたり、腕の力を強くして持つという、重力に逆らう練習ばかりをしているのです。これでは体が悲鳴を上げてしんどいと思います。
もし、体から痛みが出ている場合は、体から使い方が間違っていることを教えてくれています。あなたの大切な体からのお手紙が届いたと思って今一度、見つめ直して欲しいです。
また、鎖骨にあるリンパ節のつまりが原因でお顔のむくみや肌荒れ、くすみを引き起こします。親指と小指で左の鎖骨を挟むようにして内側から外側に向かってマッサージをしましょう!ここの通りが良くなると美顔にも役立ちます。
鎖骨は人生を変えるスイッチボタンです。するだけで美顔になります。。
紫園
鎖骨はとても大事な骨なのですね。他にも頭の中心部にある蝶形骨にも興味があります。以前骨ストレッチのレッスンで、野球選手を例に挙げて、盗塁するときに蝶形骨から動く、というお話がとても印象に残っています。蝶形骨はフルートを吹くときにも、とても大事だと思います。
松村

蝶形骨は横隔膜につながっていて、さらに仙骨(脊椎の下部に位置する大きな三角形の骨)につながっています。
また、蝶形骨は「神の骨」と言われています。武道やスポーツの世界でも中心から動くことが大切です。

それは体幹がしっかりしているということでしょうか?
松村
私の考える体幹は「骨格」のことを言います。第1回でお話しましたが、体のバランスを考えないでむやみに筋トレをしてしまうと、体の中心にある「骨格」が動かない体作りをしているということですね。
体幹という言葉はよく耳にしますが、実際のところ体幹ってなんだろうとずっと考えていました。
松村
数年前に観たテレビで腹筋を鍛えた70歳の方が杖をついて歩くという衝撃的なお話がありました。一生懸命に体を鍛えたにもかかわらず……。
なぜそういうことになったかというと、表層筋を固めたから深層筋(インナーマッスル)が鍛えられず、骨格を支える筋肉がやせ細り、骨を支えることができない状態になるのです。
また、足を上げるために必要な筋肉がお腹の深部にある腸腰筋なんですが、ここも弱くなるので歩くことが難しくなるのです。このように骨から考えるとわかりやすいと思います。
紫園
せっかく鍛えていても本末転倒ですね。最後になりますが、私たちは西洋音楽を演奏する上で、外国の体格のいい演奏者たちと、ある意味競っていかなくてはなりません。日本人としての体を活かし、それを強みとして「日本人ならでは」の演奏をしていくことに、骨ストレッチはとても有効だと実感しています。先生はその点について、どのようにお考えでしょうか?
 
松村
スポーツ界でも同じですね。外国人に勝つにはパワーを付けないといけない、だから筋トレに走るわけです。
メジャーリーグに行った選手が筋トレをして、ごっつい体になりますが、しばらくすると肘の手術を受けている……。必ずしも、いいパフォーマンスにつながるとは限りませんよね。プロスポーツ選手は怪我をしたら選手生命が絶たれるわけです。これ以上、素晴らしい素質を持つ選手が要らぬ怪我をしないことを祈るばかりです。
日本では昔から「柔よく剛を制する」と言います。
“柔軟性のあるものが、そのしなやかさによって、かえって剛強なものを押さえつけることが出来る”
この真髄は筋肉ではなく“骨”にあります。外国人と同じ土俵(筋肉)で戦うのではなく、日本人に合う方法(骨)で戦うことをオススメします。
もし、宜しければ……、“我が意を得たり”という言葉があるので一度、調べてみてください。
最後に出てくる言葉は「我が髄(ずい)を得たり」です。
私は自分の経験から剛強だった体を骨ストレッチのお陰でしなやかな体に進化することができました。
本当なら小学生の体育の時間から「体の正しい使い方」を教えたらいいと思います。
誰もが平等に与えられている“骨”の使い方を知らないから、しなくていい遠回りをしているような氣がします。人間の体には素晴らしい可能性が満ちあふれています。始めるタイミングに早い遅いはなくて、氣付いた時が「最大のチャンス」だと思いますよ。
紫園
素晴らしいお話をありがとうございました。ますます、フルートを吹く方々、またすべての演奏者に骨ストレッチで、体を有効に使っていただきたいと、健康でいつまでも楽器を演奏し続けていただきたいと、心から願っています。松村先生、骨ストレッチの根本をお話しくださり、本当にありがとうございました。

 

 

Profile
ペトリ・アランコ Petri Alanko
紫園香【フルーティスト】
(しおん かおり)
東京藝術大学、同大学院を各首席卒業。渡欧しフルートの巨匠M.モイーズに師事、薫陶を受け、マスターコース修了。第7回「万里の長城杯」国際コンクール他、入賞多数。NHK洋楽オーディション入選。ジュネーヴ国際音楽祭等、海外から招聘多数。外務省招聘等で世界24ヶ国でリサイタル開催。近年では2018年ブラジル、2019年アメリカから招聘。皇居にて御前演奏。現在、日本クラシックコンクール審査員。MFLC、ユーオーディア・アカデミー各講師。ケニア「コイノニア教育センター」特別講師。日本バプテスト連盟東京神学校教会音楽科講師。キリスト品川教会音楽伝道師。NHK、スイス放送など世界各国のメディアでその活動は大きく報道されている。13枚のオリジナルCD他発売中。ハンガーゼロ(日本国際飢餓対策機)構親善大使。
紫園香HP http://sionkaori.com/

 

Profile
松村 卓
(まつむら・たかし)
1968年生まれ。スポーツケア整体研究所代表。中京大学体育学部体育学科卒業。陸上競技・短距離選手として全日本実業団6位などの実績を持つ。引退後、ケガが多かった現役時代のトレーニング法を根底から見直し、筋肉ではなく骨の活用法に重点を置いた「骨ストレッチ」を考案。仙台市を拠点に全国各地で講習会を行い、多くのアスリートや体に不安を抱える人たちの指導にあたる。著書に『ゆるめる力・骨ストレッチ』『やせる力・骨ストレッチ』(文藝春秋)『「筋肉」よりも「骨」を使え!』(共著・甲野善紀)など。
・スポーツケア整体研究所 https://www.sportcare.info
・WT-LINEⓇシューズ公式オンラインショップhttps://wtline.jp/
 
 
 

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