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ルイ・ロットから放たれる芳醇な音色─
白川真理、CD「エーテルブルー」リリース
初代、五代目と2本のルイ・ロットを愛用している白川真理氏が、満を持してアルバム「エーテルブルー」を4月28日にリリースする。ドビュッシーの『シランクス』からパッションを得た「エーテルブルー」という言葉に込められたもの、そして、ルイ・ロットの魅力を訊いた。
『水月』と『浮雲』の誕生
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昨年12月には、小社よりオリジナル楽曲の「水月|浮雲」というピース楽譜を出版されました。
白川
『水月』は高校(香川県立高松高等学校)の同窓会のご縁で生まれました。当時、北鎌倉の東慶寺の住職夫人が同窓生だったご縁で、本堂で演奏会をし、その後は隣の座敷で宴会、という贅沢な催しを16年続けていただきました。東慶寺さんには、美しい水月観音像があり、いつも祈りを捧げていました。
さらに当時、民族音楽を和光大学の関根秀樹先生に教えていただいていて学園祭にお邪魔した時、蝋燭の浮かんだ中庭の池に満月が映る幻想的な風景を見て、「水月観音様が眺めていらした水月とはこのような情景か」と感じ、メロディが浮かびました。
さらに当時、民族音楽を和光大学の関根秀樹先生に教えていただいていて学園祭にお邪魔した時、蝋燭の浮かんだ中庭の池に満月が映る幻想的な風景を見て、「水月観音様が眺めていらした水月とはこのような情景か」と感じ、メロディが浮かびました。
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『浮雲』も日本の文化からインスピレーションを得たのでしょうか。
白川
昔、上野で宇治平等院鳳凰堂の展覧会があって、雲に乗り穏やかな表情で様々な楽器を奏でている菩薩像(雲中供養菩薩像)を見ました。特に横笛を奏でている像に心惹かれ、どのような音を奏でているのだろうと、ずっと思っていました。
一昨年、関根先生の恩師である和光大学名誉教授・岩城正夫先生のご自宅にお邪魔した際、独学で85歳から始めたというギターをオープンコードで弾いていただき合奏したのですが、その折にあの雲中供養菩薩像のイメージの『浮雲』のメロディが浮かびました。
その後、ギタリストの宇高靖人さんと演奏することになり、お願いしたところ、素晴らしいギターソロを作ってくださいました。宇高さんの柔らかなギターの音色も初代ロットにぴったりで、この小品もより魅力が増したと思います。
お陰様で好評で、「寝る前に聴くと良く眠れるようになった」という感想を多くいただき嬉しかったです。甲野善紀先生に凛とした題字を書いていただけたことも、良い記念となりました。
一昨年、関根先生の恩師である和光大学名誉教授・岩城正夫先生のご自宅にお邪魔した際、独学で85歳から始めたというギターをオープンコードで弾いていただき合奏したのですが、その折にあの雲中供養菩薩像のイメージの『浮雲』のメロディが浮かびました。
その後、ギタリストの宇高靖人さんと演奏することになり、お願いしたところ、素晴らしいギターソロを作ってくださいました。宇高さんの柔らかなギターの音色も初代ロットにぴったりで、この小品もより魅力が増したと思います。
お陰様で好評で、「寝る前に聴くと良く眠れるようになった」という感想を多くいただき嬉しかったです。甲野善紀先生に凛とした題字を書いていただけたことも、良い記念となりました。
ルイ・ロットが教えてくれること
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白川さんはルイ・ロットを2本お持ちで今回の収録でも演奏されています。
白川
それぞれの個性に合わせ、チェルニー、川崎先生、バッハは銀の五代目、ドビュッシー、ゴーベール、カプースチンはマイユショー(洋白)の初代で演奏しました。
植村泰一先生の奏でるロットの響きへの憧れはあったものの、自分には縁のない笛と思っていました。
ところが甲野善紀先生の『身体から革命を起こす』(新潮社・田中聡氏と共著)に書かれた私の記事に感銘を受けたという楽器店の方が、「良いロットが入ったので、ぜひ吹いてほしい」と五代目の銀のロットを自宅まで持ってきて置いて行ってしまったのです。当初は困惑しましたが、結局購入することに。最初はまったく鳴ってくれませんでしたが、その後、少しずつロットと仲良くなるのにつれて、別格と言われている初代を吹いてみたくなりました。
ずっと探していたところ、笛吹き仲間がヤフオクに出ていると教えてくれました。胴部管、足部管ともバラバラの酷い状態でしたが、頭部管は無傷。吹かせてもらえるというので会いに行きました。
ケースを開けた途端、写真で見た以上の惨状で胸が痛みました。「助けて!」という声が聞こえた気もしました。公園で怪我をした子猫にニャーと啼かれたようなものです。もう「助けてあげるからね!」と即購入(笑)。
幸いなことに頭部管は無傷で改造も受けていないオリジナルでした。
哀れな管体はアキヤマフルートの秋山好輝さんに修復をお願いし、引き受けていただきました。丁寧な修復作業を一年に渡ってしてくださり、初代ロットが蘇ったのです。
植村泰一先生の奏でるロットの響きへの憧れはあったものの、自分には縁のない笛と思っていました。
ところが甲野善紀先生の『身体から革命を起こす』(新潮社・田中聡氏と共著)に書かれた私の記事に感銘を受けたという楽器店の方が、「良いロットが入ったので、ぜひ吹いてほしい」と五代目の銀のロットを自宅まで持ってきて置いて行ってしまったのです。当初は困惑しましたが、結局購入することに。最初はまったく鳴ってくれませんでしたが、その後、少しずつロットと仲良くなるのにつれて、別格と言われている初代を吹いてみたくなりました。
ずっと探していたところ、笛吹き仲間がヤフオクに出ていると教えてくれました。胴部管、足部管ともバラバラの酷い状態でしたが、頭部管は無傷。吹かせてもらえるというので会いに行きました。
ケースを開けた途端、写真で見た以上の惨状で胸が痛みました。「助けて!」という声が聞こえた気もしました。公園で怪我をした子猫にニャーと啼かれたようなものです。もう「助けてあげるからね!」と即購入(笑)。
幸いなことに頭部管は無傷で改造も受けていないオリジナルでした。
哀れな管体はアキヤマフルートの秋山好輝さんに修復をお願いし、引き受けていただきました。丁寧な修復作業を一年に渡ってしてくださり、初代ロットが蘇ったのです。
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いろんな偶然が重なって白川さんのもとに二本のルイ・ロットがやってきたんですね。
白川
本当にご縁に恵まれたと思います。ロットの素晴らしいところは、その音色もさることながら吹き方を奏者に教えてくれるところです。鳴らないからこそ自分を変えていけますし、それが楽しいのです。またロットが教えてくれる吹き方であれば、どのような笛であっても、奏者それぞれの個々の魅力を引き出せる音色になるのではと感じています。大事なことは、どんな笛を持つかではなく、どのような人間がどのように吹くかですからね。
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ヴィンテージだからこそのメンテナンスの難しさなどはありませんか?
白川
通常は普通のフルートと同じ手入れですが、本番前には、リペアマン・綾部真樹さんに調整をお願いしています。秋山さん、綾部さん達の優れた職人技に支えられてこそのロットですね。
まだまだ力及ばずではありますが、出会えたことのせめてもの恩返しとしても、今後もロットが求める響きを追求し、教え続けてくれていることを、多くの方に還元できればと思っています。
まだまだ力及ばずではありますが、出会えたことのせめてもの恩返しとしても、今後もロットが求める響きを追求し、教え続けてくれていることを、多くの方に還元できればと思っています。
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ありがとうございました。
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初代ルイ・ロットは1873年製、五代目ルイ・ロットは1911年製 1. 五代目・胴部管の刻印 2. 初代・頭部管の刻印 3. 初代・繊細なフォルムの左小指のキィ 4. 初代・ティアドロップ型の右小指のキィ
(写真:CD「エーテルブルー」ブックレットより。ブックレットには計8枚のロットの写真が掲載されている)
(写真:CD「エーテルブルー」ブックレットより。ブックレットには計8枚のロットの写真が掲載されている)