第3回│大切な1枚
皆さんは初めて手にしたフルートのCDや、レコードのことを覚えていらっしゃいますか? 僕より若い世代の皆さんは、ひょっとしたらもうCDやLPなどの媒体で音楽を聴いていらっしゃらないかもしれませんね。前回もちょっと触れましたが、学生だったときにはいろんな録音を聴きたい一心で、よくCDを買って聴いていたのでした。いわゆるサブスクの音楽配信サービスが一般的になって久しくなり、気に入った曲は1曲ずつ聴くことができますから、“アルバムを聴く”という感覚はこの先の世代でなくなっていくのではないかとさえ思ってしまいます。当時そういったストリーミングサービスを使わず、比較的最近までCD・LP派だったので、聴いたアルバムの数と棚を埋めるCDの量は増えましたが、その中で「これは!!」と自分に響くアルバムに巡り合う機会は、それでもなかなかありませんでした。そう思うと、やはり最初に聴いた“あのアルバム”の衝撃たるや、他に代え難いものがあると思えてなりません。
初心忘るべからず、という言葉があります。「物事を始めたときの謙虚さや、真摯な気持ちを忘れてはいけない」という意味ですが、これは能を大成させた世阿弥の言葉なんだそうですな。1日のルーティンで練習をしていて、気がつくとなんだかダラダラと吹いてしまっているときに、いつもこの言葉が頭をよぎるものです。僕はそんなとき必ず立ち返って聴くCDがあります。今日はそんな1枚のお話です。
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片山士駿 (かたやま しゅん)
1995年千葉県出身。国立音楽大学ジャズ専修 首席卒業、矢田部賞受賞。Manhattan School of Musicにて修士課程修了。2015年 第46回山野ビッグバンドジャズコンテスト、最優秀ソリスト賞受賞。フルート奏者の受賞は大会史上初。第20回太田市大学ジャズフェスティバル、ソリスト賞受賞。2016年、米国フルート協会 NFA主催 Jazz Artist Competition Winner Playerに日本人として初選出。2018年、マンハッタン音楽院へ入学しニューヨークへと渡る。2020年、新型コロナウイルスの影響により帰国。現在、自己のプロジェクトで演奏活動する他、様々なミュージシャンへのサポートやレコーディングへの参加、ビッグバンドやオーケストラへの作編曲も手掛ける等、活動は多岐に渡る。これまでに池田篤、大澤明子、斎藤和志、Donny McCaslinの諸氏に師事。作編曲をMiguel Zenón氏に師事。YAMAHA Zアーティスト。Jazz Arts Ensemble of Tokyo 副代表。
主な共演歴: 井上陽介、小曽根真、菊池ひみこ、佐山雅弘、山下洋輔、にゅうおいらんず、ルルルルズ等(敬称略)
片山士駿
Shun Katayama
国立音楽大学ジャズ専修首席卒業、矢田部賞受賞。マンハッタン音楽院修士課程修了。第46回山野ビッグバンドジャズコンテスト最優秀ソリスト賞を受賞。米国フルート協会NFA主催 Jazz Artist Competition Winner Player選出。The 43rd Detroit Jazz Festival出演。自己ユニットでの演奏の他、様々なレコーディングへの参加等、幅広く活動を展開している。