第6回│落語とジャズ「芸事の世界」
残暑お見舞い申し上げます。9月と言えど、まだまだ暑い日は続いているかと思います。皆さまいかがお過ごしでしょうか。この夏は大変にありがたいことに、いろいろなところで演奏をさせていただきました。各地のジャズ・クラブ、ホール、野外ステージなど…… 。とりわけ変わり種としては、浅草演芸ホール、すなわち寄席でも演奏させていただきました。テレビ番組「笑点」でお馴染みの三遊亭小遊三さん、春風亭昇太さんなど、噺家さんがデキシーランド・ジャズを演奏する夏の催しがあり、ここ数年はそれをお手伝いさせていただいているためです。デキシーランド・ジャズとは、20世紀の初めにアメリカ南部の都市、ニューオリンズで演奏されていた音楽で、今日のいわゆる“ジャズ”の最も初期の頃の音楽です。サッチモこと、ルイ・アームストロングがこの時代からのレジェンドとしては有名かと思います。ちなみにジャズ歴史の中でフルートが登場するのは、そこから2〜30年後の話。うーむ、一寸残念ですな。ということで、その催しの間は普段見ることのない噺家さんの世界を、少しだけ垣間見させていただきながら、師匠方の演奏をサポートさせていただいているわけなのです。
もともと落語は好きだったものの、今年出番の前に皆さんの高座を見させていただいて改めて感じたのは、ジャズとなんだか似ている部分が多いなぁということでした。門外漢の僕が落語について論じることなどはとてもできませんが、そもそも普段我々がどのような音楽を演奏しているのか、改めてお話しする機会もなかなかそう多くありませんので、今回はそんな話を中心に、どういった点で落語と似ていると感じたかという、ウルトラ個人的所感も交えながら綴っていこうと思います。
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片山士駿 (かたやま しゅん)
1995年千葉県出身。国立音楽大学ジャズ専修を首席で卒業、矢田部賞受賞。Manhattan School of Music 修士課程を修了。2015年、第46回山野ビッグバンドジャズコンテストにて最優秀ソリスト賞を受賞。フルート奏者の受賞は大会史上初。2016年、米国フルート協会 NFA主催 Jazz Artist Competition Winner Player に選出される。2018年、マンハッタン音楽院へ入学しニューヨークへと渡る。2020年、新型コロナウイルスの影響により日本へ帰国。都内を中心に、自己のリーダーカルテットや、浅利史花(gt), 壷阪健登(pf)と結成した“キリヱ”での演奏活動の他、文化放送70周年記念「朗読劇 WA-GEI 」、「映画『ルパン三世 カリオストロの城』シネマ・コンサート! and 大野雄二・ベスト・ヒット・ライブ!」等、様々なライブやレコーディングへの参加、TV 出演など、活動は多岐にわたる。これまでに池田篤、大澤明子、斎藤和志、Donny McCaslinの諸氏に師事。
主な共演歴:小曽根真、菊池ひみこ、佐山雅弘、山下洋輔、にゅうおいらんず等(敬称略)