フルート記事 対談 與口理恵&岡本知也
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努力の過程を味わった人でないと味わえない楽しさがある

対談 與口理恵&岡本知也

ARTIST

単音楽器であるフルートは、一人で吹くこともあるが、ほとんどの場合共演者と一緒にアンサンブルをすることが多い。
その相手はギター、管楽器、弦楽器、大きなものでいうと吹奏楽やオーケストラと多岐に渡る。
中でも共演する機会が多いのは、プロ・アマ問わずピアノと答える人は多いだろう。
共演者との相性、共演者のアンサンブル技術は、演奏の出来栄えに大きく影響する。
特に日本は共演者であるピアニストの技術が高く、春に行なわれた神戸国際フルートコンクールでは、国内外のコンテスタントたちは5名の公式伴奏者と共演できることを楽しみにしていたという。(コロナ禍のため、すべて録画審査に変更)
そこで今回は、神戸国際フルートコンクールの公式伴奏者であった5名のピアニストに登場していただき、ピアノとフルートの関係性を紐解いていく。
取材協力:公益財団法人 神戸市民文化振興財団、神戸国際フルートコンクール事務局

フルートをはじめ、様々な楽器の共演ピアニストとして出演している與口理恵氏と岡本知也氏。レベルの高いアンサンブルができると国内はもとより、海外のプレイヤーからも評価が高い。ここでは、お二人に「共演ピアニスト」について対談をしてもらった。ピアニスト目線で見たフルートの世界についてお届けしよう。

與口理恵(よぐち りえ)
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、同大学音楽学部器楽科を経て、同大学大学院音楽研究科修士課程修了。第63回日本音楽コンクールピアノ部門入選。アンサンブル・ピアニストとしても評価が高く、内外の著名な音楽家との共演も多数。圧倒的な信頼を得ている。びわ湖国際フルートコンクールにおいては4回に渡り最優秀協演賞を受賞。神戸国際フルートコンクールをはじめ、日本木管コンクール、日本フルートコンベンションコンクール等での公式伴奏者を歴任するなか、2007年第76回日本音楽コンクールにおいてはフルート部門での共演が高く評価され、コンクール委員会特別賞を受賞。現在、東京藝術大学音楽学部管打楽器科演奏研究員。昭和音楽大学、同大学短期大学部、同大学大学院非常勤講師。
岡本知也(おかもとともや)
国立音大附属高校を経て同大学を卒業後に渡仏、パリ地方音楽院上級課程を卒業。帰国後に国立音楽大学大学院修士課程を修了。アンサンブルピアニストとして内外の演奏家との共演を重ね、東京フィルハーモニー交響楽団には鍵盤楽器奏者として客演している。第10回神戸国際フルートコンクールでは公式伴奏者を務め、現在、東京藝術大学音楽学部管打楽科伴奏助手を務める。
©Shigeto IMURA
 

高校時代からアンサンブルが大好きだった

お二人はコンクールの共演ピアニストとして顔を合わせる機会が多いですね。最初に出会ったのはいつでしょうか。
岡本
10年ぐらい前ですね。僕が留学から帰国して、国立音楽大学で卒業生の伴奏をしていたときに、門下での発表会に與口さんがいらっしゃいました。当時から共演ピアニストとして、ものすごく有名な方でしたから、「なんで與口さんがここにいるの? 本物の與口さんが弾いてる!」ってなりました(笑)。
與口
なつかしい(笑)。いろいろ岡本くんとお話をするようになったのは東京フィルハーモニー交響楽団の下払桐子さんを通じてだったかな。私は藝大、岡本くんは国立音大卒業だったから、それまでは接点がほとんどなかった。わりと最近の話ですよね。
昔は藝大の学生や卒業生との共演がほとんどでしたが、だんだんと他の大学のみなさんとご縁ができてきた時期です。
当時は、私が一緒に弾いている相手は藝大生だと思い込まれているふしがあって、コンクールを聴きに来た人に「今回も本選は全員藝大ですね」などと言われて(実際には違う学校の人もいたのに)、なんともいえない気持ちになったことがあります。私はそんなに藝大色が強いのか……と。
岡本
今でこそ、僕も藝大で伴奏助手をさせていただいていますけど、僕が弾いていたら国立、與口さんが弾いていたら藝大みたいに思われていた時期がありました。個人的に共演を頼まれているのでピアニストの出身大学はコンサートやコンクールには関係ないんですけどね。
どこの大学であろうと、よい成績を取ったのは本人が頑張ったからで、学歴は関係ありませんよね。
そういうこともあるんですね。お二人が共演ピアニストとしてお仕事をされるようになったきっかけは?
與口
それは、神田寛明くんのせい(笑)。半分冗談、半分本音です。藝大時代、ピュイグ・ロジェ先生のソルフェージュの授業で「僕と一緒にメシアンを弾いてくれませんか?」と誘われました。断る理由がないですし、なんでもトライしてみたいと思ったので二つ返事でお受けしました。
でも、神田くんがその時に声をかけてくれなかったとしても、同じような活動をしている気がします。藝高時代からアンサンブルが好きで、自分のソロ以外に同級生などの伴奏をしたり、室内楽も組んでいました。それが楽しくて。ピアノの先生には「数を増やしちゃダメよ」とうるさく言われていましたが、私も未だ発展途上で、やらなければいけないことがたくさんある中、物理的に時間が削られるのを先生はご心配なさったんでしょうね。お考えは充分理解できたのですが、それでも私はアンサンブルの時間は削らせないぞ、と(笑)。
岡本
僕も同じですね。国立音楽大学付属高校時代から、人とアンサンブルをするのがすごい好きだった。そもそも音楽の道に進もうと思ったのが、中学校の合唱コンクールで伴奏を弾いたことです。それまでいろいろ問題のあったクラスが一致団結したのに心打たれたのがきっかけです。
ところが、音楽高校は男子が圧倒的に少ない。僕の学年は140人いて、男子は7人。少ない男子で仲良くなって必然的に試験で一緒に弾いたりしていました。
岡本さんのピアノの先生はアンサンブルをすることに反対はしませんでしたか?
岡本
僕自身いろんなものをやりたいと思っていましたし、先生も「ソロだけ弾けるのは当たり前。ソロだけやって卒業しないように。必要としてもらえる場ではなるべく頑張って弾きなさい」と言ってくださった方でした。
與口
要するに逃げは許さない、ということね(笑)。
岡本
そう、その代わりやるならきちんと責任をもってやるということですよね。国立を卒業してパリに留学しましたが、部屋をシェアしていたフルートの後輩のレッスンについていったりして勉強していました。
帰国してすぐ、ひょんなきっかけで佐久間由美子先生のレッスンに行った時には、「帰国してきてよかった! また呼んでもらえるように頑張ろう」と。それから国立音大では菅原潤先生のクラスで使ってもらえるようになり、どんどん広がっていきました。

>>インタビューは続きます
・楽器という媒体と、作品という台本を使い、生の会話ができることがアンサンブル
・フルートあるある
・二度とやりたくない? 録画審査

Information
コンサート 「ピアニスト岡本知也presents 両国門天ホール、この曲をこの人と vol.3 ピアニスト與口理恵」
[日時] 12/19(月)
[会場]両国 門天ホール(東京)
[出演]與口理恵、岡本知也(ピアノ連弾)
[曲目]シューベルト:幻想曲へ短調 D940、クルターク編:バッハのコラール集より、ラヴェル:マ・メール・ロワ
[料金]全席自由¥3,000
[問合せ]両国門天ホール
メール:ticket@monten.jp
電話/FAX:03-6666-9491(火曜日休館)
[主催]一般社団法人もんてん

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