フルート記事 録音とコンサートから紐解くランパルの真髄
[1ページ目│記事トップ
ジャン=ピエール・ランパル生誕100年記念│秋山君彦

録音とコンサートから紐解くランパルの真髄

MUSIC

ランパルの多くのアルバムと、行ける限りのコンサートの聴いてきた秋山君彦氏。ランパルに演奏にはフルートの魅力のすべてがあり、畏敬の念すら感じさせる正に真髄・理想の響きを目の当たりにした思いだという。ランパルの演奏をつぶさに聴いてきた秋山氏にランパルの演奏の偉大さを執筆していただいた。

フルートの宝石箱といえるアルバム集

20世紀のフルート演奏史上に偉大な足跡を遺したジャン=ピエール・ランパル。その活動の全貌をつかむために欠かすことができないジャンルが、400タイトル近い膨大な録音です。その中の9割方はSP・LPレコードで、一人の演奏家の数量としては、想像を絶するとも言えるでしょう。さらに世界中に放送局のための録音が、まだまだたくさん残されているという、究極の計り知れなさです。
こうした中、ジャン=ピエール・ランパル協会の会長、Denis Verroust氏の尽力により、近年でかなりの数のCD化が行なわれました。ランパルは自伝の中で、名プロデューサー、フランスのERATOのMichel Garcin氏と、CBSのGeorges Kadar氏が録ったものは別格であると語っていますが、そのすべてが現在CDで手に入ります(これらの実現にあたって、会長も舌を巻くほどの、日本のランパルのスペシャリスト、スタジオ界のレジェンド、髙桑英世さんの多大なサポートがありました)。
ERATOとEMI関係は、全4巻、CBSは何とCD56枚組!という豪華なボックスセットです。蓋を開ければ、工藤重典さんが寄稿された序文が載った分厚いブックレットと、趣向を凝らした美しいオリジナル・ジャケットの数々。中はさながらフルート音楽の宝石箱といった風情を醸し出しています。ランパルがザ・フルート誌の過去のインタビューで、自己ベストアルバムに挙げていた、エマヌエル・バッハの協奏曲集とパスキエ・トリオとのモーツァルトのディヴェルティメント(1990年録音)、そして、最高の出来と語ったと伝えられる、工藤重典さんとの魔笛のデュオも含まれていて、聴きどころは満載です。個人的なお薦めもいくつかピックアップしてみました。

「Jean-Pierre Rampal - The Complete CBS Masterworks Recordings」
(56枚組) ソニー・クラシカル

CBS、RCA、ソニークラシカルへの録音をCD56枚に初めて集大成。ランパル協会全面協力で実現した20世紀フルート演奏史の遺産。ランパルがCBSへのレコーディングを開始したのは1969年のことで、1979年には専属契約を締結。ソニークラシカルは、2022年のランパル生誕100年を記念して、彼がCBSおよびソニークラシカル、そしてRCA(より正確には日本のRVC)に残したすべてのレコーディング(指揮者としての録音も含まれている)をCD56枚に網羅したボックス・セットとして発売した。
 

次のページに続く
・オススメアルバムピックアップ
・旋律の音程の取り方が弦楽器奏者と同じ
・畏敬の念すら感じさせる正に真髄・理想の響き
・信じられない軽さのフルート
・一瞬にして人を魅了するフレージング

秋山君彦 Kimihiko Akiyama
1984年東京音楽大学卒業。フルートを小林茂、小泉剛、齊藤賀雄、工藤重典の各氏、ビッコロを時任和夫氏に師事。水戸室内管弦楽団やサイトウ・キネン・オーケストラに参加。クドウ・シゲノリ・フルート・アンサンブルのメンバーとして、CD「笛吹きのヴァカンス」の録音に参加。現在はフリーのフルーティストとして演奏活動を行なっている。
[CLUB MEMBER ACCESS]

この記事の続きはCLUB会員限定です。
メンバーの方はログインしてください。
有料会員になるとすべてお読みいただけます。

1   |   2   |   3      次へ>      

フルート奏者カバーストーリー